安藤君にサインをしていると加藤が一人の少女を連れて現れる。
「まいちゃんです!先生!この子、今日が初ライブなんです!」
加藤に紹介されたまいは私と安藤の顔を見て少しだけ驚きの顔を見せる。
「先ほどは花束と高そうなネックレスを頂いてありがとうございました!」
まいはそう言いながら頭を下げる。
「あれ?まいちゃん!先生を知っているの?」
「えっ?先生?い・・いや!先ほど、花束を頂きまして!」
そんなまいの言葉に加藤は少しだけ驚きの表情を浮かべる。
「そう!もしかして先生?まいの事を見にいらっしゃったのですか?」
加藤のそんな言葉に私は特に何を答え訳でもなく知らん顔をしていた。
別に悪い事をしてる訳では無いが、なんとなく気恥ずかしい。
こんなオッサンがこんな若い子のファンだなんて思われただけで恥ずかしい。
「もしかして?おはぎさんですか?」
そうまいに言われて少しだけ嬉しく感じた。
「ええ、そうです!おはぎです。」
少しだけ照れたように私が答える。
おはぎ。そんなハンドネームで私はブログを書き初めてもう5年になる。
私の作家生活の基盤とでも言うべきそれは世界であった。
「そうですか!あなたがおはぎさん!小説は何時も読ませて頂いてるんですが、おはぎさんが、あの有名なベッキー先生とは知りませんでした!」
まいは少しだけ興奮気味にそう言った。
ふと、その前に彼女は本当に私の事を知っているのか?なんて疑問に思ったりもした。
「小説家の先生なら芸能人の方とかにお友達とかいっぱいいらっしゃるんですか?」
そんな言葉からまいの興味が私と言うよりも私の人間関係に強い興味がある事が感じられる。
「えっ・・いや!小説家と言っても駆け出しですから」
私はそう言葉を濁す。なぜならまいの視線が私を通り越して私の隣に立っている青年に向けられている事を感じていたからだ。
安藤君も何か言いたそうにまいを見つめている。
なんとも居心地が悪い空間であった。
「あの~小説家の先生なんですか!」
そんな居心地の悪い空間をぶち壊すかのように数人のメンバーが私を取り囲む。
きっと、あの加藤と言うプロディユーサーに言われて来たに違いない。
なんとも盛大な交流会になり、私は一躍、有名人のように扱われ思わず錯覚しそうになった。
もしかして・・僕はもてているの?そんなくだらない妄想に。