外に出ると何時の間にか雨が降り始めていた。
西川の娼婦のような甘い香水の香がまだ、私の全身を包んでいた。
そしてまだ、私の足にはあの女の温もりが残っており私の股間を微妙に刺激していた。
欲情などここ最近、していなかったのに押さえ切れないほどの性への欲望が私を包み込み・・
私はそれを全て洗い流すかのように近くの飲み屋に入ると浴びるように酒を飲んだ。
どの位、飲んでいたのか、帰宅した時間さえも覚えていない。
自宅に戻り、私は倒れるようにベットに潜り込み深い眠りに落ちようとしていた・・
ピピピピピ・・・ッ!ピピピピ・・・ッ!
そんな眠りを妨げるかのように携帯電話の呼び出し音がけたたましく鳴り響く・・
友美・・・
「はい!坂本・・何だ!こんな夜中に・・」
不機嫌そうに私はその電話に出た。
「誠!許してあげてよ!あの人、まだ、あなたの会社に居るみたいなの!あなたを待ってるみたいなのよ!」
なんとなく・・そんな友美の佐々木を思う心に嫉妬した・・
あんなダメな男なのにお前は何でそこまで・・
それは夫婦だから・・そんな答えを私は別に望んでいない。でも・・でも・・なんとなく・・
何とも言えない嫉妬が私の心を包み込む。
酔っていたから・・それはきっと、言い訳でしか無いと思う・・後になって考えればそれは言い訳である。
「一回!やらせろよ!そしたら許してやるよ!お前の大切な旦那さまを・・」
私は友美を怒鳴りつけるようにそう叫んだ・・
「やらせれば・・許してくれるの?本当に・・本当に許してくれるの!」
悲痛な叫びのように友美がそう言った・・
私は友美のそんな言葉を聞いて一瞬、理性を取り戻す。
「お前さ!何でそこまでするの?旦那にそんなに出世して欲しいのか?なぜだ!愛してるから!なんて
ガキみたいな事、言うなよな!」
そんな私の言葉に友美は辛そうに言った。
「それが私の仕事だからよ!あの人を支えるのが私の仕事・・
あの人の食事を作るのが仕事!あの人の世話をするのが仕事・・
そして、あの人に抱かれる事が仕事だからよ。」と
「お前・・何言ってるんだ!俺をからかっているのか?仕事な訳がないだろ!」
「仕事よ!だって私は妻と言う立場に就職したのだから・・だから、仕事なのよ・・」
何とも理解が出来ない友美の言葉に私は完全に酔いがさめ!居たたまれない気持ちになる。
別に友美を抱きたいと思って居た訳ではない。
そんなくだらない男ではないと自分の事を思っている。
「なら!明日の夜、7時に新宿駅の改札で待ってろ!抱いてやる!」
何でそんな事を言ったのか?自分でも解らない。
もしかしたら・・それは自分が手に入れる事が出来なかった青春の大きな忘れ物に対する復讐?
いや・・ただのくだらない嫉妬だったのかもしれない・・
私はそう友美に言うと電話を切り佐々木に電話をした。
「まだ、居るのか?雨が降ってるんだろ!もう、帰れ!解ったから・・」
佐々木は驚いたように言った・・
「本当ですか!有難うございます・・」と
「お前の奥さんに感謝するんだな!その代わりに俺に抱かれるそうだぞ!」
何度も心の中でそう呟いて見る・・・
しかし、それを言ってしまう事は私が人間でなくなる事だと思う。
「風邪引くなよ!早く帰りな!家族の所へ・・」
私はそう言うと静かに電話を切った・・
私は愚か者である・・そうだ・・最低の人間だ。
そうだ・・そうだ・・そうだ・・
人生は辛すぎて私の手には負えない・・