僕が死ぬ日・・生まれる日 -14ページ目

僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死んで・・生まれる日までの記録

外に出ると何時の間にか雨が降り始めていた。


西川の娼婦のような甘い香水の香がまだ、私の全身を包んでいた。


そしてまだ、私の足にはあの女の温もりが残っており私の股間を微妙に刺激していた。


欲情などここ最近、していなかったのに押さえ切れないほどの性への欲望が私を包み込み・・


私はそれを全て洗い流すかのように近くの飲み屋に入ると浴びるように酒を飲んだ。


どの位、飲んでいたのか、帰宅した時間さえも覚えていない。


自宅に戻り、私は倒れるようにベットに潜り込み深い眠りに落ちようとしていた・・


ピピピピピ・・・ッ!ピピピピ・・・ッ!


そんな眠りを妨げるかのように携帯電話の呼び出し音がけたたましく鳴り響く・・


友美・・・


「はい!坂本・・何だ!こんな夜中に・・」


不機嫌そうに私はその電話に出た。


「誠!許してあげてよ!あの人、まだ、あなたの会社に居るみたいなの!あなたを待ってるみたいなのよ!」


なんとなく・・そんな友美の佐々木を思う心に嫉妬した・・


あんなダメな男なのにお前は何でそこまで・・


それは夫婦だから・・そんな答えを私は別に望んでいない。でも・・でも・・なんとなく・・


何とも言えない嫉妬が私の心を包み込む。


酔っていたから・・それはきっと、言い訳でしか無いと思う・・後になって考えればそれは言い訳である。


「一回!やらせろよ!そしたら許してやるよ!お前の大切な旦那さまを・・」


私は友美を怒鳴りつけるようにそう叫んだ・・


「やらせれば・・許してくれるの?本当に・・本当に許してくれるの!」


悲痛な叫びのように友美がそう言った・・


私は友美のそんな言葉を聞いて一瞬、理性を取り戻す。


「お前さ!何でそこまでするの?旦那にそんなに出世して欲しいのか?なぜだ!愛してるから!なんて

ガキみたいな事、言うなよな!」


そんな私の言葉に友美は辛そうに言った。


「それが私の仕事だからよ!あの人を支えるのが私の仕事・・

あの人の食事を作るのが仕事!あの人の世話をするのが仕事・・

そして、あの人に抱かれる事が仕事だからよ。」と


「お前・・何言ってるんだ!俺をからかっているのか?仕事な訳がないだろ!」


「仕事よ!だって私は妻と言う立場に就職したのだから・・だから、仕事なのよ・・」


何とも理解が出来ない友美の言葉に私は完全に酔いがさめ!居たたまれない気持ちになる。


別に友美を抱きたいと思って居た訳ではない。


そんなくだらない男ではないと自分の事を思っている。


「なら!明日の夜、7時に新宿駅の改札で待ってろ!抱いてやる!」


何でそんな事を言ったのか?自分でも解らない。


もしかしたら・・それは自分が手に入れる事が出来なかった青春の大きな忘れ物に対する復讐?


いや・・ただのくだらない嫉妬だったのかもしれない・・


私はそう友美に言うと電話を切り佐々木に電話をした。


「まだ、居るのか?雨が降ってるんだろ!もう、帰れ!解ったから・・」


佐々木は驚いたように言った・・


「本当ですか!有難うございます・・」と


「お前の奥さんに感謝するんだな!その代わりに俺に抱かれるそうだぞ!」


何度も心の中でそう呟いて見る・・・


しかし、それを言ってしまう事は私が人間でなくなる事だと思う。


「風邪引くなよ!早く帰りな!家族の所へ・・」


私はそう言うと静かに電話を切った・・


私は愚か者である・・そうだ・・最低の人間だ。


そうだ・・そうだ・・そうだ・・


人生は辛すぎて私の手には負えない・・



通勤の駅を二つ程過ぎた駅に私の隠れ家的な飲み屋がある。


通勤の駅の周りにも飲み屋は腐るほどあるが、会社の人間と出くわす確立が多い。


「あら、結構洒落た飲み屋ね!木村君なんか全国チェーンの居酒屋よ!何時も・・」


そんな意味ありえな言葉に


「あれから何度か木村と会ったのか?」


そう聞かざるおえなかった。


西川は笑いながら


「ええ・・仕事の打ち合わせでね」と言った。


「ジンライム!君は・・・」


そう私がバーテンに呟き西川に聞くと彼女は「あなたのお勧めを!」と呟く。


「マルガリータをこちらに・・」


そう私が言うと西川は少しだけ微笑んだ。


「一杯だけだからな!」


そう私が言うと・・


「あら、友美とは随分と飲んだそうじゃない!冷たいわね!」と西川は意味ありげに呟く。


「友美の旦那の会社もあなたの会社と契約が取れたんでしょ!でも、担当、外されたんだってね!

友美もとんだくたびれもうけよね!」


「君は何でも知ってるだな!」


「ええ・・一応、情報を武器に戦っているもので・・」


西川は何とも淫靡な微笑を浮かべそう呟く。


「寝たの?あの子と・・」


「おいおい・・木村と一緒にしないでくれよ!俺はそんな馬鹿じゃない!」


「あら、お言葉ね!失礼しちゃう!」


「別に君の事をどうの言ってる訳じゃないよ!」


私が少しうろたえてる顔をすると西川は少しだけ不満そうな顔をした。


「友美も不幸よね!佐々木君!学生の頃はあんなにステキだったのに・・

今じゃ!デブハゲよ!それに仕事も出来ないし・・あの子も男を見る目が無いのよ!

あなたにしておけば良かったのにね!」


そう西川に言われ私は少しだけ驚いた表情をした。


「あなた・・友美のことが好きだったでしょ!それなのに私に告白して・・それで抱いて・・

本当に悪い男ね!」


「なんだ・・知っていたのか?それなのに君は僕と付き合ったのかい?なぜだ?」


「えっ?なぜって・・好きだったからよ!あなたの事が・・」


そう言いながら西川はグラスのカクテルを一気に飲み干す!


「同じのをおかわり頂けるかしら?」


そう言うとバックから細いメンソールのタバコを取り出すと火を付けた。


「処でそろそろ本題に入ってくれないか?もう、一杯、飲み干してしまいそうなんでね!」


「あら、本気なの?随分と嫌われたものね!あのね!一度、うちの旦那と会ってくれないかしら?

出来れば何か買ってあげて欲しいんだけど・・もちろん、お礼はするわよ・・」


そう言いながら西川はタバコの煙を私の顔に向けて一度、吐き出した。


「お礼の意味・・解るわよね・・」


そう言いながらシャツのボタンを二個・・外した。


「解った!会うだけ会うよ!その代わりもう、付きまとうのは止めてくれよ!」


「何?その言い方・・お礼・・しないぞ!冷たくすると・・」


少しだけおどけた言葉を言いながら西川はそっと、私の足に手を置く・・


そして・・じらすかのように、ゆっくり手を少しずつ上に滑らせるように上げて行った・・


私は一気のグラスの酒を飲み干すと立ち上がる・・


「約束だよ!帰るからな・・・」


そんな私に西川は笑いながら言った・・


「嫌いじゃないわよ!あなたのそんな所・・」と


私は通勤鞄を持つと会計に向う・・


会計を済ませると振り向き西川に言った。


「お前が欲しいと思って居るものはいったい何だ?旦那の地位か?それとも金か?」と・・


西川は少しだけうつむきながら言った・・


「幸せよ・・・」と


私はその言葉に何も答えずに静かに店を出た。

電話を切って1時間もすると私のデスクの電話が鳴った。


「坂本主任!四星様の営業部長様と佐々木様がお見えですが?」


そう言われ私は「外出中」だと言うよう指示をした。


それから数回、困ったように受付の女性から内線が入る。


「お戻りになるまで待つと言っておりますが?どうされますか?」


「ほっておけ!そのうち帰るだろ!」


それからどの位の時間が過ぎたろう。外の景色は何時の間にか昼から夜に変わっていた。


帰宅の用意をすませ部下の島崎と一緒に一階のロビーに下りる。


するとロビーのソファーに佐々木がうずくまるように座っていた。


「主任!まだ、居ますよ!部長は諦めたようですね!佐々木さん一人です・・」


「ほっておけ!そのうち、諦めて帰るだろ!」


何処かの三流ドラマじゃあるまいし!そんな姿を見て事が穏便に済むとでも思っているのか?


私と島崎は正面玄関を避け裏口から表に出た。


「それでは!主任!失礼します!今夜はデートで反対方向なんで・・」


島崎はそう私に言うと携帯電話を取り出し楽しそうに歩き出す。


一人、残された私は駅に向かい歩き始めた。


どの位、歩いただろう、急に私の仕事用の携帯電話が鳴った。


見慣れない電話番号である。


「はい!坂本でございます。」


そう私が答えると意外な電話の相手は意外な奴であった。


「まだ仕事なの?解る・・誰だか?」


西川・・何でお前が俺の番号を知ってる。


「さぁ~どちらさんですか?いたずら電話なら切りますよ!これ、仕事用の電話なので・・」


「相変わらず冷たいのね!この前は何で帰ってしまったの?あれからがお楽しみだったのに・・」


西川は自分の事を名乗らずに話し始める。


「木村と君のお邪魔をしてはいけないと思ってね!」


そう私が答えると彼女は笑いながら言った


「やっぱ!解っているんじゃない!私が誰か・・」と


「ああ・・西川だろ!声でわかる・・こう見えても記憶力は良い方なんでね!」


この女は何を企んでいる?番号はきっと木村が教えたに違いない。


「冷たいのね!かつての恋人に・・それも初体験の甘い思い出があるのに・・」


「切るぞ!お前の望は叶ったんだろ!聞いたぜ!旦那の会社、木村の所と大口の契約を結んだそうじゃないか!それは、あの夜の接待の成果かな?」


「あら、何でも知っているのね!」


「ああ・・これでも一応は情報が武器なんでね!良いだろ!1億だっけか?それだけ売り上げがあれば・・」


「冗談じゃ無いわよ!私の最初の望はあなたと旦那を会わせる事だったんだから・・」


「オイオイ・・勘弁してくれよ!けなげな夫婦愛ってやつか?」


「馬鹿いわないで!そんな簡単な女じゃ無いわ・・そんなね!今から会えない?」


「悪いね!今、仕事中なんだ!これでも色々と忙しいものでね!」


心の中で何かが叫ぶ・・この女に関わってはいけないと・・


「あら、通勤鞄を持ってコンビに夜食の買出しかしら?上司に買出しさせるなんて無能な部下ね!」


そう言われ私は驚いたように振り返った・・


そこにはにやつきながら携帯電話を耳にあてる西川が立っていた。


「おいおい・・怖い女だな・・でも、結構嫌いじゃないぜ!そんな奴・・」


私はそう呟くと静かに携帯を切ると西川の元に歩いて行った・・


「飲みに行かない?」


そう言われ・・


「一杯だけなら・・」


そんな無難な返事を呟く・・


西川は笑いながらそんな私の言葉に答えた。


「楽しい夜の始まりよ!」と・・