電話を切って1時間もすると私のデスクの電話が鳴った。
「坂本主任!四星様の営業部長様と佐々木様がお見えですが?」
そう言われ私は「外出中」だと言うよう指示をした。
それから数回、困ったように受付の女性から内線が入る。
「お戻りになるまで待つと言っておりますが?どうされますか?」
「ほっておけ!そのうち帰るだろ!」
それからどの位の時間が過ぎたろう。外の景色は何時の間にか昼から夜に変わっていた。
帰宅の用意をすませ部下の島崎と一緒に一階のロビーに下りる。
するとロビーのソファーに佐々木がうずくまるように座っていた。
「主任!まだ、居ますよ!部長は諦めたようですね!佐々木さん一人です・・」
「ほっておけ!そのうち、諦めて帰るだろ!」
何処かの三流ドラマじゃあるまいし!そんな姿を見て事が穏便に済むとでも思っているのか?
私と島崎は正面玄関を避け裏口から表に出た。
「それでは!主任!失礼します!今夜はデートで反対方向なんで・・」
島崎はそう私に言うと携帯電話を取り出し楽しそうに歩き出す。
一人、残された私は駅に向かい歩き始めた。
どの位、歩いただろう、急に私の仕事用の携帯電話が鳴った。
見慣れない電話番号である。
「はい!坂本でございます。」
そう私が答えると意外な電話の相手は意外な奴であった。
「まだ仕事なの?解る・・誰だか?」
西川・・何でお前が俺の番号を知ってる。
「さぁ~どちらさんですか?いたずら電話なら切りますよ!これ、仕事用の電話なので・・」
「相変わらず冷たいのね!この前は何で帰ってしまったの?あれからがお楽しみだったのに・・」
西川は自分の事を名乗らずに話し始める。
「木村と君のお邪魔をしてはいけないと思ってね!」
そう私が答えると彼女は笑いながら言った
「やっぱ!解っているんじゃない!私が誰か・・」と
「ああ・・西川だろ!声でわかる・・こう見えても記憶力は良い方なんでね!」
この女は何を企んでいる?番号はきっと木村が教えたに違いない。
「冷たいのね!かつての恋人に・・それも初体験の甘い思い出があるのに・・」
「切るぞ!お前の望は叶ったんだろ!聞いたぜ!旦那の会社、木村の所と大口の契約を結んだそうじゃないか!それは、あの夜の接待の成果かな?」
「あら、何でも知っているのね!」
「ああ・・これでも一応は情報が武器なんでね!良いだろ!1億だっけか?それだけ売り上げがあれば・・」
「冗談じゃ無いわよ!私の最初の望はあなたと旦那を会わせる事だったんだから・・」
「オイオイ・・勘弁してくれよ!けなげな夫婦愛ってやつか?」
「馬鹿いわないで!そんな簡単な女じゃ無いわ・・そんなね!今から会えない?」
「悪いね!今、仕事中なんだ!これでも色々と忙しいものでね!」
心の中で何かが叫ぶ・・この女に関わってはいけないと・・
「あら、通勤鞄を持ってコンビに夜食の買出しかしら?上司に買出しさせるなんて無能な部下ね!」
そう言われ私は驚いたように振り返った・・
そこにはにやつきながら携帯電話を耳にあてる西川が立っていた。
「おいおい・・怖い女だな・・でも、結構嫌いじゃないぜ!そんな奴・・」
私はそう呟くと静かに携帯を切ると西川の元に歩いて行った・・
「飲みに行かない?」
そう言われ・・
「一杯だけなら・・」
そんな無難な返事を呟く・・
西川は笑いながらそんな私の言葉に答えた。
「楽しい夜の始まりよ!」と・・