黒い海 | 僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死んで・・生まれる日までの記録

この前の夜の事は、私はまったく気にしていませんよ!


そんなにご自分を責めないでください!


それは、正直、あの時は少しびっくりはしたけど、そんなに悪い気持ちはしなかった。


きっと、あの晩は気持ちが学生時代にタイムスリップしていたからかもね!


あなたの事が大好きだったあの頃に・・


だから、気にしないでください。


それよりも主人が何とかあなたのおかげで年間のノルマを達成出来たそうです!


あなたに凄く感謝をしていました。


多分、また、あなたに彼から連絡が行くと思いますが、どうしても我が家に招待したいそうです。


四人暮らしの中古の一戸建てですが、よろしかったら来ていただけませんか?


私の手料理だから大したお持て成しは出来なければ、私達、夫婦の感謝の気持ちです。


                                    by 友美


私は新幹線の中で震える手で友美からのメールを開いた。


怖かった。友美に嫌われる事が、私はとても怖かった。


そしてメールの中に書かれている厳しい現実を自分の目で見ることが怖かった。


私の震えは何時の間にか安堵に変わった。


嫌われては居ない・・しかし、それは好かれても居ないと言う現実を同時に私にもたらした。


なんとなく不安が消えると小さな嫉妬が生まれた。幸せそうな家庭・・・


あんた、ダメな亭主でも愛されているのだ。二人でお礼だと・・笑わせる。


新幹線は新横浜の駅を何時の間にか出発していて車内のアナウンスが品川到着の時間を告げた。


東京駅に着いた私はそのまま会社に向った。


課の人間たちに珍しくも無いうなぎパイを数個、土産だと言って手渡すと私は直ぐに経費の精算と報告書の作成に取り掛かった。


報告書が出来上がったのは午後の6時を少しだけ過ぎた頃であった。


すると丁度、早朝からの長時間の会議に出ていた課長が疲労気味の顔で現れた。


「よう!坂本!どんな感じだ?」


そう言われ私は何とも微妙な顔で経緯を彼に説明した。


「とりあえずは、満足はしてくれたんだろ?それなら結構良い報告書を上に上げてくれるんじゃないか?」


「それなら良いのですが・・・」


「夕飯でも食っていくか?」


「いいえ・・今回は正直、疲れました!さすがに一人はきついです。まぁ~でも、一人だったらここまで出来たのだと思いますが・・」


「そうか!早く帰って今夜は休め!明日からまた、忙しくなる!お前には今回の件と平行して別の契約ににも参加してもらうからな!詳しくは明日、説明する。」


今朝からの早朝会議の議題だったのか?なんとなくその新しい契約が何なのか少しだけ不安になった。


私はその晩に自宅に戻ると死んだように眠った・・


次の日の朝、何気に隣の今日子の部屋を気にしてみたが、昨夜、帰宅した様子は無かった。


もしも、あの男がチェーリならば、きっと、仕事では無かったのだろう・・


昨夜は下田あたりのホテルで二人で愛し合ったに違いない。


社に出ると朝から課長に呼ばれ、昨日、言われた新規の契約について説明を受ける。


最近は国内が不景気のせいか、ターゲットは全て海外である。


英語が苦手な私にとってあまり喜ばしくない傾向であった。


「主任!受付にお客様がいらっしゃって居るそうですが?」


「誰だ?今日は誰ともアポは取っていないはずだが・・」


「四星商事の佐々木様とおっしゃっておりますが・・」


「解った!今から下に下りる。」


友美のメールの通りに佐々木が訪ねてきた。自宅に夕食の誘いだろう。なんとなく心が重かった。


「坂本様!どうも・・・」


佐々木は笑顔でそう言って私が予知していた通りの言葉を言った。


「今週の週末にどうですか?狭い家ですが一応は客間もありますからお泊りになってください」


私は悩んでいた。どうする?これ以上、友美に関わってはいけない!


これ以上、関わってしまったら私はきっと後戻りが出来なるに違いない。


しかし、あまりにも佐々木が粘るので私は根負けした感じで彼に言った。


「行きましょう!でも、山田貿易の坂本ではなく、君の旧友と言う事で!仕事の話は無しだぜ!」


「有難うございます!妻も喜びます!それでは土曜日にお待ちしております・・」


結局、私は佐々木の家に行く事になってしまった。