どうのように自宅に戻ったか正直、記憶が無い。
何処の駅で降りてどの道を歩いて帰ったのかまったく記憶が無い。
気がつくと私は自宅の玄関の前にへ垂れ込んで座っていた。
マンションの住人に覗き込まれその人の気配でやっと目を覚ます。
「あっ!すいません!接待で飲みすぎまして・・」
「一流企業の方も大変ですよね・・」
何処かの会社のOLなのだろうか?年の頃は私よりも2,3歳、年下のように見えた。
彼女はそう私に告げると私の隣の部屋のドアに鍵を差し込んだ。
私は初めて隣人が女性である事を知った。
最後の力を振り絞り私はポケットから鍵を取り出すと部屋に入った。
お気に入りのスーツは雨に濡れずぶ濡れになっていた。
スーツを脱ぎ投げ捨てるように置くと私はそのままベットに倒れこんだ。
携帯電話のイルミネーションが着信とメールの着信を知らせている。
誰だ?そう言えば朝から携帯をチェックしていない。
もしかしたら大事なメールが来てるかもしれない。
仕方が無い・・そう思い重い体を起こし携帯電話を見た。
すると100件以上の着信を知らせる表示と200件のメールが表示されていた。
その殆どの相手が西川であるのを確認すると携帯を放り投げ私は深い眠りに落ちて行った。
次の日、私は完全なる二日酔いで出社した。
「なんだ!最近、多いな!大丈夫かお前!今日は大事な商談なんだからな!しっかしてくれよ!」
課長からそう激を飛ばされ私は身をしき締める。
何時もは偉そうに訪ねて来る営業に対応しているが、私の仕事はそれだけではない。
売り込みも大事な仕事なのだ。
今度は私が彼らと同じこめつきバッタのように頭を下げなければいけない。
アメリカのある企業と商談を始めて丁度、3年になる。やっと、担当者と会う事が出来る知らせをもらった。
この話がまとまれば、数百億の商談である。そして、私の昇進が確実になる。
「準備は良いか!そろそろ行くぞ!営業一課の底力を見せてやろうぜ!」
私の会社には営業1課から10課まで存在してる。
数が大きくなるほど扱う金額が低くなる。
私が居る1課は言わば花形である。したがってその取り扱う金額も大きいし、困難も多いわけだ。
相変わらず、朝から私の携帯電話は鳴りっぱなしである。
そしてその殆どが西川からの電話とメールであった。
仕方が無いので私は西川を着信拒否に設定した。
そしてもう一度、鏡を見つめ身なりを整えると一度、パン!と頬を手で叩き気合を入れた。
タクシーで1時間ほどかかり相手先の会社に向う。
相手先の会社に到着したのは11時を少し過ぎた頃であった。
受付で名刺を差し出し担当者に連絡をしてもらう。
どうやら、今回の担当者と営業部長が会ってくれるようだ。
外資系の会社であるが社員は殆ど日本人らしい。
社内に入り忙しそうに行き来きするすれ違う社員たちは殆どが日本人であった。
第一会議室。
そう表示された部屋のドアをノックし少しだけ緊張した表情で部屋に入る。
部屋に入ると中央に高そうな応接セットが置かれておりそのソファーに中年のアメリカ人の男性と日本人の女性が座っていた。
私は一度、深々と頭を下げソファーに向った。
そして、ソファーに居心地が悪そうに座っている女性の顔になんとなく違和感を感じた。
何処かで会った事がある気がする。しかし、それが何処だったか思い出せない・・・
この女は誰だ??
「初めまして!山田貿易の・・」
課長がそう言いながら名刺を差し出した後に続くように私も名刺を差し出した。
アメリカ人の部長は名刺など差し出す気配は無い。
ジョーだと自分の名前を告げた。
そしてその隣に座っている女性は丁寧な口調で「木村今日子です!」と告げ名刺を差し出した。
「今回の件の担当を彼女にしてもらうから、詳しい事は彼女と商談をしてくれため!
女だと思って舐めてかかってはいけないよ!彼女は我が社、初の日本人の女性の役員なのだから・・」
そうジョーに言われ少しだけ恐縮しながら彼女の顔を見つめた。
しかし、どうしても彼女と何処で会ったか思い出せない・・
それが今日子との初めての出会いであった。
簡単な話を済ませ4人でランチに行く事になった。
私は緊張していた。会社での商談よりも外での話の方が何倍も難しいからだ。
それこそ!ホークの持ち方一つ、雑談での会話の一言で商談が流れる事は珍しくないのだから・・
会社を出てタクシーで予約してる店に向う。
ジョーと課長が同じ車に乗り、私は担当者の木村さんと乗った。
車が走り初めて少しすると彼女が笑顔で言った・・
「二日酔いなのに大変ですね・・」と
この女はなぜに私が二日酔いである事を知っているのか?
「雨に濡れてお風邪など引かれませんでしたか?」
この女はなぜに私が雨に濡れて帰宅した事を知っている??
何て答えればよいのだ?この女の機嫌を損ねるわけにはいかない・・・
しかし、誰なんだ?何処で会ったのだ・・
「ええ・・なんとか・・」
そんな曖昧な返事をしながら相手が誰か必死に考えていた。
すると、彼女が鞄から手帳を取り出す仕草をする・・
「ああああ・・・・・・・・・・っ!君は!!」
そんな私の驚きの雄叫びに彼女は一瞬、ピクと体を揺らし反応した。
「す・・すいません!急に・・・昨夜はどうも・・見っとも無い姿を・・」
そう照れながら話す私に今日子は笑いながら「やっと気がついてくれたんですね!」と言った。