誰もお前なんか愛さない・・ | 僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死んで・・生まれる日までの記録

二人で手を繋ぎながら私達は夜の新宿の街を歩いていた。


それは私は19年前に夢見ていた光景であり、それは私の成し遂げられなかった無念の証でもある。


レストランから花園神社に向かい丁度、花園神社の真裏にある一軒のバーに私は友美を誘った。


「また、あんな感じのレトロな店で無いでしょうね!」


そんな友美の言葉に「さぁ~どうだろう?」とおどけて見せる。


店は雑居ビルの3階にありエレベーターで上がって行く・・


そして、このエレベーターのドアが開いた瞬間に対外の女は歓喜の悲鳴に似た叫びを上げる。


私と友美はエレベーターに乗り3階を目指した。


数分後・・・3階に到着したエレベーターの扉が静かに開かれると・・・


「な・・・何よ!ここは・・」と友美は例外なく歓喜の叫びを上げた。


「う・・海の中・・・じゃ無いわよね!凄い!ここ・・・」


店内はまるで海底のようなつくりになっており壁は全て水槽になっている・・


その中に色とりどりの魚が泳ぎ回り・・その姿を多くの光が演出している・・


店内には何とも心地よいジャズが流れ・・大人の隠れ家と言う場所に相応しい店であった。


「どう?気に入った?」


「あなた・・こんな所に女の人を連れて来て口説いているのね!なんだか・・」


「オイオイ!勘違いしないでくれ!この店に女性を連れて来たのは君が初めてだよ!

ここは私の隠れ家なんだ!なぁ~マスタ~」


私は助けを求めるように私達が座ったカウンターの向こう側でグラスを磨いているマスターに言った。


「さようで!坂本様は何時もお一人ですよ!いつもね・・」


そして、このマスターは嘘が下手だと言う事を忘れていた。直ぐに顔に出る。


「どうだか!何だか・・・」


友美は呆れたようにそう呟いた。


「ご注文は??」


「そうだな!とりあえずジンライムを・・君は?」


そう友美に訪ねると少し困ったような表情をした。どうやらこの手の店にあまり慣れていない様だ。


「なら、僕が適当に注文して良いかな?」


そう、助け舟を出すと友美は少し安心したような顔をして微笑みを浮かべた。


しばらくすると注文したカクテルが運ばれて来た。


「うわ~~綺麗ね!何て綺麗なブルーなの!ねぇ~このカクテルは何て名前なの?」


そうマスターは友美に聞かれ困ったような表情で私を見つめた。


「坂本様!そう言えば名前を決めていませんでしたね!」


そうマスターに言われて名前を決めて居なかった事に気がついた。


実はこのカクテルはメニューには載っていない。


いわば、坂本スペシャルとでも言うのだろうか?


友美には内緒だが、大体のここに連れて来た女はこのカクテルで落ちるのである。


「実はこのカクテルはお客様の為に坂本様が即興でお考えになったオリジナルでございまして・・」


マスターは嘘は下手だが、女の心理は知り尽くしてる・・なぜなら、元は2丁目の住人だからだ。


そう!私がマスターと初めて会った頃はまだ2丁目のバーで女性の格好をして働いていた。


「えっ!これ・・私の為に坂本君が・・」


そう・・だいたい、そう言いながら普通の女は落ちる・・


「そうだな!永遠の片想いとでもなずけようか!」


そんな私の言葉に酔いながら友美はひと口そのカクテルを口に含んだ!


「ち・・ちょっと!これ美味しいけど少し度数が高いんじゃないの?」


「いいえ・・そんな事はございませんよ・・」


そうマスターはいたずら小僧のような微笑を浮かべ私をチラットと見て笑いながら言った。


彼は女性の心理も理解しているが男性の心理もよく理解してるサイコーのバーテンである。


私はタバコを1本取り出すと火をつける。


それを何かの合図かのように私達の目の前で笑顔を振りまいていたマスターは姿を消した。


ひと口・・ジンライムを口に含むと私は友美に言った。


「俺の何処が悪かったんだ?」と


友美は少しだけ驚いたような表情を浮かべた・・・


なんとなく安らぐジャズの音色が、そんな私達を包み込んでくれていた・・