誰か俺を愛してくれ・・ | 僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死んで・・生まれる日までの記録

「担任の木の内ムカツよね!木村ってさ~大久保の事が好きなんだぜ!これ内緒ね!」


まるで高校時代に戻ったように私はそんな会話を友美に続けた・・


友美はそれを私の何かの演出かと思ったのか楽しそうにその会話に乗ってくれた。


「こんな事なら、セーラー服で来るんだったわね!」


冗談交じりに友美がそう楽しそうに言った。


楽しい時間は直ぐに過ぎるものだ。


最後のデザートのアイスクリームが運ばれて来て私は少しだけ名残惜しそうにスプーンを容器に差し込んだ。


「そろそろ出ようか?」


デザートを食べ終えグラスに残ったワインを一気に飲み干しながら私がそう呟くと友美も少しだけ寂しそうな顔をした。


「お会計を・・・」


そう私がマスターに告げると彼は一枚のレシートを持って現れる。


「本日はご来店誠にありがとうございました。またのお越しを心より・・」


そう言われて私は取り出した一万円札の行方に戸惑った。


「あの・・お会計は??」


「えっ?何をおっしゃって居るのですか?もう、頂いているでは無いですか?19年前に・・」


そう店主に言われ遠い記憶を思い出す。


あ~そうだ!あの時、私はここに予約代としてお金を置いて行ったのだ・・


そして、来るべき日に友美に振られこの店に来る事が出来なかったのだ・・


あの時はすっかり動転してしまい、キャンセルの電話も入れる事が出来なかったのに・・


「覚えていてくれたんですか?」


そう私が言うと彼は少しだけ微笑みながら・・


「仕事ですから・・」と言った。


「あの時は、キャンセルの電話もしないで申し訳ありませんでした!振られてしまいまして相手に!」


私は彼にそう言うと一瞬、チラットと友美の顔を見た。


そうなのだ・・私はこの店に友美と一緒に来るつもりで居たのだ!


駅で待ち合わせをして・・喫茶店でお茶を飲んで・・映画を見て・・そして、最後にこの店で食事をして・・


しかし、その前に私は友美に振られてしまった。


だから、友美はその事を知らない。


そして、この場所は永遠の私の忘れ物になってしまったのだ。


「しかし、ワイン代をお支払いしないと・・」


そう私が言うと彼は私の顔を見つめながら


「19年間、私に楽しい妄想をくれたお礼です・・あなたがステキな女性と一緒にこの場所に現れる日を・・

毎日、色々と想像しながら楽しみに過ごさせて頂きました!

今夜、やっと、その願いが叶いました!私の想像通りにお相手の方は素晴らしい女性でした!

ワインは私からのお祝いです!そして、お礼です・・」


そう言うと店主は深々と頭を下げ、再び言った。


「またのご来店をお待ちしております・・それまで私が生きていれば良いのですが!」と


私も彼に頭を下げ店を出る。友美は訳が解らないまま、私を追うように店から出て来た。


「何?まったく意味がわからない!説明してよ!」


少し不機嫌そうに言う友美に私は・・・


「それなら、2次会に行くかい!今度は飛び切りのステキな店にお連れしますが!」と言った。


友美は笑いながら!


「行きましょ!延長料金は割り増しよ!」と笑いながら言った。


私は友美の手を優しく握ると夜の新宿の街を歩き出した。