愚か者の詩 | 僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死んで・・生まれる日までの記録

西川は私に気が付くと急いでタバコを消し私の元に近寄ってきた。


「どうも!坂本様!初めまして近畿商事の西川晃と申します」


そう言われ手渡された名刺の肩書きは主任であった。


佐々木とは違いやり手の営業マンと言う感じである。


私は一瞬にて営業モードに自分自身を切り換える。


この手の男は舐めてかかると痛い目に合う。


そんな典型的な男であった。


「喫茶店にでも移動しませんか?」


そう言い出したのは西川の方である。それも佐々木とは違う。


「先日は木村さんにも大変、お世話になりまして!」


いきなり木村の名前を出す所もなんとなく気が抜けない。


「それで、今日はどんなご用件で・・」


「実はですね!ぜひ!山田貿易様にですね!ご紹介したい商品がございまして!本日はとりあえずご挨拶と言う事で・・」


そう言いながら西川はカタログ一式が入った封筒を私に手渡した。


私は中身を見る事も無く興味なさそうにテーブルの上に置いた。


「そうですか!ご挨拶に・・なら、もうご用件はおすみですね!それでは・・」


そんな私の言葉に西川は意外そうな顔をして焦ったような表情を浮かべる。


きっと・・・


「妻から話が通ってるはずだろ!見積もり見て担当者を紹介してくれるんじゃないのかよ!」と


心の中で何度も叫んでいるに違いない・・


木村はそうしてくれたのかい?でも、あんたの奥さんはその代償に何を支払ったのか・・


あんた、本当に知らないのか??本当に・・・


私はテーブルの上の封筒を手に持ち静かに席を立ち上がった。


「それでは・・これで失礼!奥様によろしく・・」


そう言いながら軽く彼に会釈をした。


私の事を罵声する叫び声が背中に伝わって来るような気がした。


会社に戻ると就業時間を告げる音楽が流れていた。


まぁ~あまり意味の無い音楽だが、時間を知るには丁度良い音楽である。


時間は午後の5時・・・


私は残った仕事を素早く済ませると6時には会社を出て新宿に向った。


新宿に向う電車の窓から外を見つめながら私は思っていた。


友美はいったいどんな気持ちで新宿に今、向っているのだろう・・


私はなぜに新宿に向っているのか?


断るだけだったら・・電話でも良いはずなのに・・


新宿駅は人で溢れていた。


新宿に来る者・・そして新宿から去る者の人込みで大変な混雑である。


友美を見つけられるか少しだけ不安であったが、そんな不安は直ぐに消えた・・


行きかう人込みの何かであいつだけなぜか私には浮き上がって見えたからだ・・


それだけあいつが行きかうどんな女性よりも美しかったからかもしれない。


いや・・・もしかしたら違うかもしれない。


なぜなら、私は甘い蜜の香にまるで吸い寄せられるミツバチのように友美に吸い寄せられて行ったからだ。


メスが放つ淫靡なホルモンが私を誘い吸い寄せたのかもしれない。


「よう!早いんだな・・」


時計を見ると7時にはまだ10分程あった。


友美は私を一度、切なそうに見つめると・・・


「旦那から連絡あったわ!色々とありがとう・・」


そう呟いた。