次の日、早朝から佐々木と彼の上司だと言う男が私を訪ねて来た。
「なんとも・・こちらの配慮が足りませんで・・」
佐々木の上司を自分が思いつく限りの言い訳をしながら自分が悪くない事を主張した。
結局は頼りが無い佐々木の責任で、うちの会社に迷惑をかけていけないと担当者を換えたそうだ。
「実績の半分で良いからつけてあげてもらえませんか?」
そう私が切り出すと佐々木の上司は少しだけ驚いた顔をした。
「何か?ご不満でもおありですか?それに私の顔に何か付いていますか?」
そう私が嫌味交じりに言うと佐々木の上司は少し焦りながら・・
「い・・いえ!滅相もございません!しかし、少し意外で・・
うちの佐々木と坂本主任様が同級生と言う事は佐々木から聞いて知っておりましたが・・」
「それが何か不都合な事でもあるのですか?」
「えっ・・いや!主任様は仕事に私情を持ち込みにならない方だとお聞きして居たものですから・・・
少々・・意外だと」
「あんた・・私に意見ですか!自分のお立場をご理解されていらっしゃらないようで・・」
私はそう言いながら佐々木の上司を睨みつけた。
そうだ!彼が言っている事は合っている。
私は仕事に私情を入れた事等、今まで一度も無い。
そんな物は仕事の妨げになるどころか時には大きな困難を呼び寄せるからだ。
「とりあえず、あとの詳しい事は担当者と話してください!別に佐々木が担当しょうがしまいがどちらでも良いんです!ただ、実績だけお願いしますよ!」
私は一度、深々と頭を下げる。
私は何をしてるのか?何で頭を下げている・・・
それはきっと、友美と言う女のためであると思う。
佐々木の上司が逃げるように会議室を後にして行く。
きっと、会社の外に出たら、佐々木は凄い剣幕で怒鳴られるに違いない!
「あいつは何様だ!こんな屈辱をうけたのは初めてだ!」と
でも、おっさん!これが社会だよ!そう、これが社会なんだ・・
上司が見えなくなると佐々木が再び私の所に戻って来た。
そして、私の耳元で周りを気にするように小さな声で言った。
「坂本!気を悪くしないで聞いてくれ!確かめたいんだが、今回の件は妻がなんか関係をしてるのか?」
私は一瞬、体が硬直した。
「何でだ?そんな事を・・」
「えっ・・いや、例の同窓会の夜、あいつには珍しく酔っ払って帰って来たんだ。それで次の日の朝にね!
あいつが君の名刺を差し出しながら、君を今日、訪ねろと言った。昨夜もあいつが心配をして私に連絡をくれた直後に君から連絡が入った・・」
オドオドしながら佐々木はそう私に言った。私は不機嫌そうに彼に言った。
「何が言いたんだ!お前は・・」と
「い・・いや、あいつは、こんなダメな俺を精一杯、何の文句も言わないで支えてくれる良い女なんだ・・
私は特に学生時代に君と仲が良かったと言う訳ではない・・それに・・」
「それに?何だよ!言ってみろ!」
「す・すまん!それに・・君が学生時代に妻に片想いをしていた事は知っていたから・・」
私の顔は見る見る真っ赤に変化した・・
「お前・・俺が、お前と契約してやるからとお前の奥さんに言い寄ったとでも言いたいのか?
お前・・お前な!」
「ご・・ごめん!悪かった!いや、マジでやばかったんだ!ノルマに全然、届かなくって・・
毎日、寝ないで頑張っても、全然、届かなくって・・リストラされそうだったんだ!今度の査定で・・
ノルマに行かなかったら、リストラされそうだったんだ・・助かったよ!
ごめんな!気を悪くしないでくれ!ごめん・・
良かったら、一度、夕食でも食べに来てくれないか?狭い小汚い家だけど・・
友美は結構、料理が得意なんだ!ご馳走するから・・連絡してくれ!ありがとう!本当に・・ありがとう!」
佐々木はそう何度も私に頭を下げながら会議室を出て行った。
私があいつを怒鳴りそうになった時にあいつの目が何となく言っていた。
人間はな!後ろめたい事がある時は怒るんだよ!と・・・
あいつの目がそう、私に言っているように感じた・・
ただ、別に私は友美をこの件をえさに抱いた訳でも何をした訳でも無い。
あいつに別に後ろめたさなど感じる事は無いのだ・・
今夜だって・・
今夜だって・・・
今夜だって!冗談だよ!と言ってあいつを家に帰すつもりで最初からいたのだから・・
私が自分にデスクに戻ると直ぐに内線がなる。
「坂本主任!西川様と言う方がお会いになりたいと・・」
「西川?そんな奴とアポをとった覚えはないぞ!」
「はっ・・しかし・・お約束しているとおっしゃっておりますが」
西川・・西川・・あ!西川の旦那か!」
「思い出した!直ぐに下に降りるから・・」
私はそう受付の女性に告げると上着を着て下に向った。
西川の旦那とは面識が無い。私は受付に向かい訪問者を尋ねた。
「あちらの方が西川様です・・」
受付嬢にそう言われ見たその先に一人の男がタバコを吸いながら座っていた。
あいつが西川・・あいつがね~~
それが西川晃と言う男との初めての出会いであった。