多分・・続く!№25(悪魔の囁き) | 僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死んで・・生まれる日までの記録

「冗談は止めて下さい!本気にしますよ!」

本間は少し怒ったような口調で私にそう言った。

「いや!本当だよ!来週の日曜日、時間はあるか?山梨にドライブにでも行かないか?

君さえ心の準備があるのなら泊りがけでも良いぞ!」

私が笑いながらそう言うと本間はより荒い口調で怒鳴る。

「だから~~あまり30女をからかわ無いでくださいよ!」と

「いや!すまん!すまん!実話ね!この前の打ち合わせでも話したように次回作はアイドルとあっさんの恋愛話にしょうと言っただろ。その参考にしてるアイドルの子のライブがあるんだ!君も参考の為に見ておいた方が良いと思ってね!」

「なるほど!そんな話なら泊まりで行きましょう!ホテルはうちで用意させて頂きます!

私も徹夜一週間目で発狂寸前なんです!勝負パンツをご用意してお供させて頂きます!」

屈託の無い笑い声が受話器の向こうから聞こえた。

なんとなく心が安らぐ笑い声・・

私は何度、この女の笑い声に救われただろう。

「そうか!なら日曜日に迎えに行くから三島の駅で待ち合わせよう!詳しくはまた後で連絡をするよ!」

私はそう本間に告げると電話を切った。

本間からその連絡が来たのは金曜日の夜の事であった。半泣き状態の本間は少しだけ酔っていた。

「しぇんしえ~~!しぇんしえ~~!ごめんなさい!」

一体何事だと私は少しだけビビリながら声を発した!

「どうした?本間!何があったんだ?」

「しぇんしえ~!すいません!」

っつたく!イラつく!何だこの酔っ払いは!

「私!行けなくなりました!日曜日!楽しみにして新しいパンツまで買ったのに!

あのクソ編集長め!!鬼だ!あいつは絶対に鬼だ!」

内容をよく聞くと急な出張で北海道に行くらしい!お前・・何も泣く事はないだろ!

「わかった!わかった!その代わりに今度、飯でも食いに行こう!おごるから!

東京に近いうちに行くから!だから泣くな!」

「ごめんなさ~~い!ごめんなさ~~い!」

声がドンドン小さくなり何時の間にか消えた・・どうやら深い眠りに落ちたらしい。

私は静かに電話を切った。

次の日の早朝に私の携帯電話が鳴った。見慣れない電話番号。私は一瞬、躊躇しながら携帯電話を取った。

「おはようございます!先生!佐藤です!」

友美さん??何で??

「あっ!どうも!おはようございます!何か??」

「あっ・・いえ!朝から友人に叩き起こされましてね!何でも山梨に行くそうで!」

本間がどうやら友美に連絡を入れたらしい

「ええ・・実は取材でね!本間と一緒に行くはずだったのですが、彼女、急に北海道に行く事になったらしい!」

「それでですね!本間に急遽、私が代役を頼まれまして!」

私は一瞬、顔をしかめた。

「でも・・泊まりですけど大丈夫なんですか?なんなら日帰りでも私は全然かまいませんけど!」

「いいえ!泊まりで結構です!ホテルも予約してあるそうなので・・」

「で・・でも、旦那さんは大丈夫なのですか?」

その言葉はあまりにも自然になんの躊躇いもなく私の口から発せられた。

友美に一瞬、沈黙が走る。

「えっ・・いや・・なぜに?どんな意味だとお取りすれば良いのでしょうか?」

「えっ・・いや・・別に深い意味は無いのですが!ほら、あなたは人妻だから!

本間とは事情が違いますから!」

苦し紛れの私のそんな言葉に友美は言った。

「それは気にしないでください!本間とは昔からの腐れ縁で!うちの主人もよく知ってる居るんです。あの子、泣きながら主人を説得してくれまして!何にも出来ない気難しい女流作家に行かないと殺されるとか言いながら・・」

あの女・・私はそう心の中で呟いた。失礼な!俺は何でも出来るぞ!と

「それに私、先生を信じていますから!本間は勝負パンツを新調したらしいですけどね!」

そう笑いながら友美は言った。

私は何とも複雑な思いに包まれながら電話を切った。

嬉しいような!嬉しくないような・・ただ、一つだけ感じていたのは、これが新たなる私の苦しみのきっと、序曲に違いない。悪魔の微笑が見える。そして不気味な微笑を浮かべ私に手招きをしていた。「おいで!地獄の入り口はもう直ぐだよ!」と

山梨に向う当日の早朝、私は家を出ると三島駅に向って走り始めた。

それは小さな気配りであった。隣同士なのだからそんな面倒な事をしないでもと言われそうだが、きっと友美もそれを望んでいると私は思っていた。朝靄の中、駅の改札の前に一人の美女が旅行鞄を持って立っていた。

濃い朝霧が幻想的な光景を演出していた。それだけ友美の美しさは人間離れしている物であったのだ。

なぜにこんなに美しい女があんな暴力男と結婚したのか?なぜに離婚をしないのか?私にはどうしても理解出来なかった。一度、クラクションを鳴らすと彼女は私に気がつき笑顔で大きく手を振った。忘れるな!あの日とは人の妻だ!そう私はもう一度心に語りかけた。