「ゲームオーバーだな!お坊ちゃん・・」
私は立ち去る二人を目で追いながらそう呟きテーブルの上のコーヒーを一気に飲み干した。
次の日、人事部長の大久保から突然に加藤が退職願を出した事を知らされた。
「なんだ・・お前・・驚かないんだな~」
大久保は少しだけ不思議そうにその話を冷静に聞いていた私にそう呟いた。
「いいえ・・驚いていますよ!でも彼にとってはそれが幸せだったのかもしれません!」
「そうかもな!あいつに客商売は向かないかもな!」
大久保はそう言いながら電話を切った。
あの事件は何だったのだろう・・
もしかして神様に自分が試されたのかもしれない・・
加藤が辞職して2ヶ月の月日が流れていた。
本当にあの地獄のような数ヶ月は何だったのか?
木村は都の指定業者の権利を放棄したらしい・・
その代わりに妻の美香が美容院を開店させた。
後で聞いた話だが美香は何度も木村に仕事をさせてくれと願い出ていたそうだ!
嫁と言う立場だけでは満足しない女なのかもしれない。
自立した・・女・・それが本当の美香の望みであったのかもしれない。
今まで専業主婦であった友美がなんと仕事を始めた。
それも美香の店で事務兼受付の仕事をするそうだ!
あんなに仲が悪そうだった二人なのにその知らせを聞いて私は驚きの表情を隠せなかった。
葵は何気に木村の娘のユカちゃんと仲良しになったそうで・・
人事部長の大久保は今月の妻の料理教室の課題がフランス料理だそうで生ぬるいソースと格闘してるらしい・・
聖夜は私の口利きで私の会社に就職をして今、私の店で研修の腕章を腕に付けながら品出し終われる日々を送ってる・・
今日子は店を辞めてスーパーでパートを始めた。聖夜の話では寄りが戻って聖夜と近いうちに再婚するとかしないとか・・純君の嬉しそうな笑顔が目に浮かぶ・・
私はあまり変わらない生活を送っている。朝早く仕事に場に向かい夜遅くまで店で働いている。ふと考えるあの時、あんなに飲みに出かた事は本当に奇跡に近いと・・
今日子にはあれ以来。一度も会っていない。あいつからも連絡もしてこない。
正直、忘れたいような・・忘れたくないような複雑な思い出である。
月に一度、私は木村に電話をかけて飲みに行くようになった。あいつも今までの女遊びを今回の事で反省をしたのか今は、私以外の人間と殆ど飲みに行く事は無くなったそうだ!
全てが上手く行っているように思えた・・まるであんな出来事が無かったのように・・
本当に全てが・・でも私はなんとなくそれが気に入らなかった・・
人生とは絶対にこんな物では無いはずなのだから・・