「もう一軒行かないか??」
支払いを済ませた私を待ち構えて居た様に木村がそう呟く。
「シンフォニーに行こうぜ!今日子も居るし・・」
意味ありげな微笑を浮かべ木村がそう私に言った。
「抱いたんだろ?あの女・・お前・・」
木村は私の肩に手を回しながらそう笑いながら言った。
「お前・・何でも知ってるんだな・・何でだ?」
そう私が呟くと少しだけ焦ったような顔をする。
「えっ・・いや・・別になんとなく・・お前ならやりそうだと・・」
「俺が?俺は昔からお前みたいに女に手は早くなぞ!」
私はそう笑いながら言った。
「今夜はこれで帰るよ!」
そんな私の言葉に木村は少しだけ寂びそうな顔をする。
「良いじゃんか!今度は何時、会えるかわからないんだから・・」
「何時会えるか解らない??俺達は別に何時でも会えるじゃないか?
だって・・親友だろ!昔も今も何も変わっちゃいないよ!
それはしばらくお前を避けていたのは確かだ!ごめんな!
なんか、俺・・お前から卒業したかったんだ!
なんか俺、勘違いしてた!お前が俺の事を下部みたいに思って居るんじゃないかって!
昔から俺、お前に気を使っていた。
誘われたらどんなに忙しくても笑いながらお前に会いに行った。
お前に逆らう事が怖かったのかもしれない。
これでも結構、お前に負い目があってさ!なんか貧乏だったから・・俺・・」
そんな私に木村は少しだけ怒ったような目で私を睨みつける・・
「お前・・そんなふうに俺を見ていたのか?
少し、今夜はお前・・酔ってるみたいだな!」と
「別に俺は酔ってないよ!それに今夜は大切な俺たちの記念日だから・・」
「何だよ!さっきから始まりだの記念日だの!くだらない事ばかり言いやがって!
俺達は昔から親友だろ!何時も一緒に馬鹿やって来たじゃないか!
好きな女の話をしながら笑って失恋したら朝まで一緒にカラオケで歌ったろ!
昔も今も変わらない!俺達は・・俺達は・・」
私は木村の目を睨みながら真剣な表情で言った・・
「でも・・俺は違ったんだ!いろいろ、考えたよ!昔の事を・・
でもな!気が着いたんだ!俺、いろいろと負い目をお前に感じていたけど
何時も楽しかった!お前と一緒に居て!何時も楽しかったんだ!
だから全部、過去はリセットする事にしたんだ!だから今夜は始まりの記念日さ!
俺たちの友情の始まりの記念日さ!解るよな!これ以上・・俺に言わせるなよ!」
木村はそんな私の言葉にハッ!としたような顔をして少しだけバツが悪そうに微笑んだ・・
「解っていたのか?何時から・・」
「何の事だ?」
「とぼけるなよ・・・俺がお前を騙していた事だよ!」
「何だ?お前・・俺を騙していたのか?全然・・気が着かなかったよ!」
私はそう呟きながら木村の肩に手を回した・・
「歌いに行くか!おれの失恋レストランは今でも18番だぜ!
まぁ~この年になると歌う機会は減ったけどな!
あ!そうだ!美香も呼ぼうぜ!昔、よく3人で歌いに行ったじゃんか!
俺は何時もお邪魔虫でさ!お前ら俺に隠れてキスなんかしやがって!
俺、皆、知ってたんだぞ!この野郎!」
「えっ・・お・・お前・・・で・・でも・・俺・・」
私は肩にまわした手の力を強くして木村の首を強く締め付けた。
「あんまり刺激をくれるなよ!俺、あの時、童貞だったんだからな!
この野郎はよ~~いじわり~んだよ!お前は昔から・・・
そして・・お前は昔らか優しい・・んだよ!」
「ま・・誠・・俺・・・」
木村の目から何時の間にか大粒の涙が溢れ出す・・・
「ま・・誠・・お・・俺・・・」
私は木村の首から腕を放すと笑顔で言った・・
「始まりなんだよ!今日が・・始まり!なぁ!それで良いじゃないか・・
難しい理屈なんか大嫌いだったろ!世間の常識なんか糞食らえ!だったじゃん!
俺たち!お前は昔から・・お前さ!俺の大事な親友だろ!
そして・・永遠に・・・」
「だ・・だって!俺・・お前を・・」
「よし!一発、お前を殴らせろ!それでチャラだ!」
私は木村の頬をおもいっきり拳で殴りつけた!
木村はそのままアスファルトに倒れこむ・・・
「痛って~~お前!結構、よいパンチ持ってるんな!」
「ああ・・隠していたんだ!通信教育でボクシングを習っている事・・」
そんな私の冗談に顔を真っ赤に腫らしながら木村は笑っていた・・
「美香も呼ぶか!今夜は朝まで歌おうぜ!」
しばらくして現れた美香が愛しい旦那の変わり果てた顔を見ながら笑いながら言った。
「あら、あんた良い男になったわね!」と・・
とても嬉しそうに・・そしてとても幸せそうに・・