「お詫びはするから・・」
そう言われなんとも生めかし目つきで見つめられると心が揺らぐ。
お詫びの意味が理解できない程、子供でも無い。
ふと遠い過去のあやまちが思い出される。
こんな良い女を二度と抱ける事は無い!前もそう思ったがその時は意思が勝った。
しかし、一度、今日子を抱いた事により妻を裏切ってる私・・
一度も二度も一緒だろ!そんな言葉を悪魔が耳元で囁いた。
私は笑顔で美香の手を自分の手から引き離し呟く。
「悪いな!これでも妻子持ちでね!」と
美香は少しだけ驚いた表情を浮かべる。
今度、ばかりは私が落ちるとでも思って居たのだろうか?
「相変わらず不器用な男ね・・
でも未来に向けての良い選択だわ!」
美香は微笑みながらそんな意味不明な言葉を呟いた。
「木村の事は確かに恨んでいるよ!
でも、俺は多分、あいつを嫌いにはなれないと思う。
よく考えるとこの二年間、あいつと距離を置いていたのはあいつから逃げたかったのではない気がする。なんて言うんだろう?大人に成りたかったのかな?
上手く言えないけど・・
あいつが俺にやった事は確かに許せない事だよ!でも・・
俺はあいつに今までそれ以上の事をしてもらって来た気がするんだ!
これでチャラかな?今まで俺があいつにして貰った恩は・・
まぁ~あいつがまだ、俺と友達で居たいと素直に言ったらだけどね!」
そんな私の言葉に美香は少しだけ目を潤ませながら・・
「良いわね!少しだけ嫉妬するわ!二人に・・」と呟いた。
そんな話をしてると私達のテーブルに「カカオフィズ」が運ばれて来た。
ふと、カウンターを見つめると店長がVサインをしながら笑っていた。
どうやら、おごりのようだ・・
「これ、昔から大好きなんだ!甘くて美味いんだぜ!」
「あらそうなの!本当だ!甘くて美味しいね~」
美香は一口、その甘い酒を口に含むと笑顔でそう言った。
カカオフィズを飲み終わると私は席を立った。
「もう、帰るの?」
「ああ・・実はもう一人、決着をつけないといけない人が居てね!」と
私は笑顔で言った。
「あんたも忙しいわね!」美香は笑いながらそう呟き私を見送った・・
店を出た私はJRの蒲田駅に向かい歩き始める。
今日子に会いに行くために・・
時計を見ると12時を少しだけ回っていた。
JRの蒲田駅の西口に着いたのは12時15分であった。
今日子の働く店が入っているビルの前に私は立っていた。
「あれ!坂本さんじゃないですか?」
不意にそう声を掛けられ私は驚いたように振り返る。
茶髪の一人の若者が私に笑顔を向けている。
「聖夜・・・君」
私はそう呟いた。
「この辺にお住まいなんですか?いや~偶然ですね!」
彼は以前、歌舞伎町で会った時とはまるで別人のように優しい笑顔を私に向けた。
「えっ・・いや・・自宅は下井草なんだよ!
実は生まれがここでね!友人がこの辺に沢山居て・・
今夜は奴と飲み会でね!」
「そうなんですか・・いや~驚きましたよ!まさか、あなたと会えるなんて・・」
「それで、君は?何でここに居るの?」
「ええ・・実はこの前お話をした女がこのビルに入ってる店で働いていましてね!
会いに来たんです。実は、再婚の話を・・・
チビも居ますからね!やっぱり・・それに色々と考えたんですが・・
僕は今でもあいつの事を愛してるんです!僕が馬鹿だったんだと思います!
時間はかかると思うんですけど・・今夜が宣戦布告の記念日とでも言うんでしょうか?
僕、店を出すの止めたんです!地道に昼間の仕事を探そうと思っています。
歌舞伎町の店も今月で辞めようと思っています。
近いうちにあなたにご挨拶にお伺いするつもりだったんですよ!
その前にね・・あいつに・・今日子に会おうと思いまして・・」
私は聖夜の目をじっと見つめた。
嘘の無い・・澄んだ目をしていた・・そして希望に溢れる目を・・
そうか・・今日子と寄りを戻すつもりなんだ!
私は今日子にメールをした。
「今夜はありがとう!外で幸せの天使が君をお待ちかねだよ!
早く出て来なよ!」と
私はそう今日子にメールを送ると聖夜に言った。
「何時でも会いに来て下さい!私が出来る事はするから・・
チビちゃんを幸せにしてあげてください!そしてその女性も・・」と
そんな私の言葉に彼は真剣な表情で言った・・「もちろんです!」と