男のプライド・・ | 僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死んで・・生まれる日までの記録

次の日、私は仕事が終わると新宿に向かった。

店を出る時に副店長の加藤が私に何やら一生懸命話しかけて来たが・・

私は彼をシカトして店を後にした。

どうせくだらない話だと思っていたからだ。

新宿に着き私は聖夜の店を目指した。

きらびやかなネオンに包まれた看板の横に店の入り口があり私が店に入ると

威勢の良い若者達の声がする。

「いらっしゃいませ!」

少しだけ困惑した表情で一人のホストが私に近寄ってきた。

「お一人様ですか?初めてのお客様で・・」

そう私が客である事を確認するかのように彼は私に話しかける。

「えっ・・いや・・聖夜さんにお会いしたいのですが・・」

そう私が言うと彼は予想していた通りの展開らしく笑いながら言った。

「なに?あんたも嫁さんをあいつに食われちゃった被害者さん?

聖夜も困ったもんだよね~ちょっと待っててね!今、呼んであげるから!

あっ!あと、他のお客様の迷惑になるから!外でやってね!外で喧嘩は・・」

そのホストは慣れているかのように私にそう告げると店の中に消えて行った。

しばらくすると一人の若者がめんどくさそうな顔をして現れた。

「あんた誰?俺の責任じゃないから!基本的に全部、俺がお願いした訳ではないから!

あんたの嫁さんが勝手にやった事だから!」

聖夜は私が訪れた理由も聞かずに一方的にそう私に捲くし立てる

働く事が嫌いで・・ギャンブル好きの女好き・・

いかに楽に生きようか何時も考えていて何時も何かに怯えている・・

そんな器の小さい男・・

でも・・でも・・

今日子の言葉を思い出す。

今日子は「でも」の後の言葉を私には言わなかった。

しかし、私には解っていた。その後に何を言おうとしていたのか・・

でも・・純の父親で、私が愛した男・・

人間とは言う生き物は何とも愚かで厄介な生き物だと思う

何時も「愛」何ていう目に見えない物に支配されている。

そしてその「愛」が幸せを連れてくるとは限らない。

殆どの人間がその「愛」なんてくだらない物のために苦しんでいる。

そんな事、解っているのに・・

「愛」が幸せを連れて来ない事なんか解っているのに・・

人は誰かを愛する事をやめる事は出来ない。

だから人間なのかもしれない。

私は初めて聖夜と話して直感した。

この男は友美の浮気相手では無いと。

聖夜は次々に女の名前を上げて私が誰なのか必死に確認をしている。

「きよこ?みよ??順子?」

次々に上げられた女の名前の中に友美の名前は無かった。

「実は人を探していてね!私の妻なんだ・・

君と一緒に写っている写真を偶然に手に入れて君が妻の行方を知らないかと・・」

私はそう言いながら手帳から例の写真を取り出した。

そんな私の言葉に安心をしたのか聖夜の顔に余裕が生まれる。

彼は私が差し出した写真をマジマジと見つめた。

「2月の15日らしんだ・・」

そう私が呟くと

「女も知らないな~多分、適当に客を探してる時だと思うよ!

それに2月の15日って確か日曜日だろ!

俺、日曜日の昼間はバイトだから・・」

バイト??この男はホストの他にバイトもしているのか?

「バイト?君はホストの他にバイトもしてるのかい?」

「えっ・・ああ・・そうだよ!

実は俺にはちっこいガキと怖い女が居てね!今は別居してるけど何時か迎えに行くんだ!

その時に子供の父親がホストじゃカッコ悪いだろ!

だから、小さなスナックでも開店させて手土産に迎えに行こうと思ってるんだ!

だから金を貯めてる!

そりゃ~色々とやばい事もやってるよ!女から金も騙し取ってる!

でも、それってどっちが悪いって訳じゃないだろ!相手だって同意してんだぜ!

金を使う事で夢を買ってるんだ!

そして俺は金をもらう事で相手の望む男を演じてるんだ!」

なんとなく目元が純君に似ている。やはり親子なんだな~

そして今日子が言う程、この男は適当な男では無いような気がした。

「忙しいのに悪かったね!ありがとう・・」

そう呟き私は自分の名刺を彼に差し出した。

「嫁さんと子供を迎えに行ってもしも昼間の世界で生きたいと思ったら電話しなよ!

金は安いけど・・もう何にも怯えずに暮らせる人生は保障するよ!

早く迎えに行けるとよいな!きっと、二人は待っていると思う・・」

そんな私の言葉に聖夜はキョトンとした顔をした。

「ああ・・何時かな!」そう呟き彼は店の中に消えて行くのであった。