自宅に戻り私はベットに倒れこむ。
何も覚えていなかった。
小百合の話を聞いてからの小百合の話も大久保の話も・・
自分がありから何を話しどのように自宅に戻って来たかも・・
全て何も覚えていなかった。
心が・・全て記憶を削除したいと嘆いていた
この数ヶ月の愚かな私の全ての記憶を・・
天井を見つめながら考えていた。
よく考えると私は今までの全ての出来事に対して何も確認をしていなかった。
写真にしてもメールにしても・・
木村の話にしても・・全ての事に・・
「俺はなんて馬鹿野郎なんだ!何で!何で!!」
私はまるで狂ったようにそう叫びながら何度も何度もベットを叩いた。
しかし、悔やんでばかりはいられない直ぐに行動を起こさなければ手遅れになる!
い・・いや・・もう既に手遅れなのかもしれない。
妻はもうこの家には居ないのだから・・
だからと言って何もしない訳にはいかなかった。
全てを解明する。それが今、私が出来る唯一の償いだと思ったからだ。
私は起き上がると秘書課の由美に電話をした。
「夜分遅くにごめん!井草店の坂本だけど・・」
電話口に寝ぼけた声で由美が出た。
「あら・・坂本さん!どうしたのこんな夜遅くに・・」
由美は少しだけ不機嫌にそうにそう言う。
「あの・・大分、前の話になるんだけどうちの奥さんと買い物に出かけなかった?」
「えっ・・そうね~友美さんとは・・もう大分前よ!2月頃に一度、行ったかな?」
「行った日って覚えてないかな~」
「ちょっと待ってね!今、手帳を持って来るから・・」
しばらくして手帳を開く音が電話口から聞こえ・・
「ああ・・15日ね!そうそう!2月の15日よ!」
やはり・・そうなのか・・
「それって間違いない!何時ごろに何処で待ち合わせをしたの!」
少しだけ私の口調が強くなる。
そんな私に由美は言った。
「ちょっと!坂本さん!何なの?こんな夜中に電話して来て理由も言わずに!
なんか感じ悪いわよ!失礼だけど・・」
「えっ・・あっ!ごめん!今は理由は言えないんだけど後で必ず話すから・・」
そう私が言うと何か察したように由美が話し始める。
「えっと・新宿のアルタの前に9時30分って書いてあるけど!」
「その日って友美は来たんだよね!」
「来たわよ!確か私が9時20分頃に行ったらもう来ていたと思う!
友美さんは時間に厳しい人だから最低でも30分前には何時も来てるから・・」
30分前には来ている。
それなら友美が9時にアルタの前に居ても別に変な話しではない。
「そう・・悪かったね!また連絡をする・・」
そう言うと私は電話を切った。
あの日・・友美は女友達と会っていた。
男ではない。
私はもう一度、手帳から例の写真を取り出した。
小百合に言われるまで友美の表情まで気が付かなかった。
そう言えば・・迷惑そうな顔をしてる。
私は聖夜に直接会う事を決意した。
どちらにしてももう俺達は駄目なのだ!何も怖がる現実は無かった。
彼から何を言われても平気だと思えたからだ。
ふと大久保の話を思い出す。
「夫婦ってさ!所詮は他人だとか言うじゃない!
やはり親子とか血に繋がった関係の方が繋がりが強いって!
でも俺はそれは間違いだと思うんだよね!
だって他人なんだよ!夫婦は・・
そんな他人同士が結婚して何十年も一緒に暮らしてさ!
そんで色んな苦労を二人で乗り越えているんだぜ!
親子なら仕方が無いと思うよ!
でも、他人なのにさ~別れもしないで二人で苦労して行くんだ!
親子の血なんかよりももっと強い絆で夫婦って結ばれていると思わないか?
他人だからより血の繋がりなんか比べ物にならない絆で結ばれていると思わないか?」
そんな大久保の言葉を思い出す。
「絆か・・・俺は一番、大切な事を忘れていたのかも知れないな!
夫婦の絆と言う一番大切な事を・・」
時計を見るともう2時を回っていた。
私はグラスにウイスキーを注ぎ一気に飲み干した。
友美はどうして居るのだろうか?
娘の葵は??
そんな事を考えているといつの間にか私は深い眠りに包まれていた。