「離婚するかもしれません・・」
そう私が呟いた途端・・
ドアの外で聞き耳を立てていた小百合が慌てて中に入ってきた。
「り・・離婚って!何があったのよ!」
そんな妻をめんどくさそうに大久保が睨みながら言った
「お前には関係が無い!早く料理を持って来いよ!」と
小百合は少し不機嫌そうに言う
「関係ないわけ無いでしょ!誠ちゃんも友美ちゃんも身内みたいなものよ!」と
この夫婦には子供が居ない。
小百合は大久保と結婚をする前は本社の総務に勤めていた。
実に仕事が出来る女で我が社、初の女性の課長に・・なんて話もあった。
仕事か結婚かと周りが騒いでいるのを他所に小百合はあっさりと仕事を捨てた。
しかし、結婚してしばらくするとパートとして総務に復帰をした。
今でも彼女は総務で働いている。
友美も秘書の時は小百合に大分、世話になったようである。
「何が原因なの?」
小百合が私を見つめながら呟く
「浮気です・・」
私が目をそらしながら呟くと小百合は驚いたように言った
「あ・・あの友美ちゃんが!浮気??」と
そして再び私を見つめる
その視線が私に語りかけていた・・
それだけじゃないでしょ!あなたにも・・でしょ!と
女の情報網は馬鹿に出来ない。
会社の人間の全てのプライベートの情報を小百合が握っていると言っても言い過ぎではな無い。それ程、女同士の情報網は危険なのだ。
きっと、小百合は何かしらの私の事も知っているに違いない。
私は話をそらすように言った。
「写真もあるんです!男と会ってる証拠の写真も!
それにホテルに入って行った所を目撃してる証人も居る・・」
「それは何時の事??」
「ええ・・確か2月の15日の日曜だと思います・・」
「2月・・の15日・・・」
小百合はそう呟き自分の鞄から手帳を取り出し何かを確認した。
「良いから!料理を持って来いよ!腹がぺこぺこだ!まったく!」
そんな旦那の言葉に小百合は不機嫌そうに席を立った。
「お前も大変だな!」
大久保は私にビールを注ぎながらそう呟く。
しばらくすると大量の肉料理を持って小百合が現れる。
テーブルに並べられた大量の肉を見つめながら私の胃が拒否反応を示すのを感じた。
「今月は肉らしい・・先月は魚でさ!俺なんか先月は魚料理ばかりだった!
来月はジャガイモらしい・・」
憂鬱そうに大久保が私に言った。
料理を全部、運び終わると小百合も自分のグラスを持って現れる。
「2月の15日って言ったわよね!あなた・・」
小百合は我慢できないように私に言った。
そんな妻を男の話に口を出すな!とばかりに大久保が睨みつける。
「ええ・・そうです!確か・・15日です!」
そう念を押すように小百合は私に確認をすると再び手帳を見ながら言った。
「おかしいのよ?その日は友美ちゃんは秘書課の由美ちゃんと買い物に行っているはずなんだけど・・」
私は一瞬、その話を聞いて驚きの表情を浮かべる。
「えっ??で・・でも・・現実に・・」
「そうなのよ!それで由美ちゃんに確認をしたのよ!
そうしたらその日は確かに友美ちゃんと一緒に居たって言うのよね!」
「で・・でも証拠の写真もあるんですよ!それに信用が出来る証人も居るんです!」
私は興奮しながらそう小百合に話し手帳から例の聖夜と友美が写っている写真を見せた。
その写真をマジマジと小百合は見つめる。
「そうね!でも・・これって何かの勧誘をされている風にも見えるわよ!
だって友美ちゃんの顔・・迷惑そうだもの・・」
そう言われ冷静に妻の顔を見ると確かに笑顔では無い。
なんとなく迷惑そうな顔をしてる・・
「でも由美さんが妻をかばってくれている可能性も・・」
「えっ!それは無いわよ!絶対に・・」
自信に満ちた表情で小百合はそう呟く・
それが全ての女子社員を裏でまとめている女のプライドとでも言うのか?
友美が男と会って居なかった・・・
そんな・・なら、木村の報告は?私が数回見たメールは??
いったい何だったのだ??どうなってる?どうなってるんだ!
私はその時、自分が仕出かしてしまった重大な失敗に気が付いた。
「顔が真っ青だぞ!お前・・大丈夫か?」
薄れる意識の中でそんな大久保の声が聞こえた。