今日子を新宿で見かけた次の日・・
店の事務所で事務処理をしてると不意に話しかけられる。
「店長!最近、お帰りが随分と早いんですね!」と
仕事の手を休め振り返るとそこに副店長の加藤がニヤケタ顔で立っていた。
「ああ・・最近、色々とプライベートが忙しくってね!
君にも迷惑をかけてるね!」
そんな私の言葉に
「羨ましい事です!私より3つも年下なのに・・
あんな綺麗な奥さんは居るわ!店長だわ!
それにプライベートも忙しいとは・・」
そう嫌味交じりに彼は言う。
加藤は私より3歳年上で東京大学を出ている。
本当は官僚になりたかったそうである。しかし試験の当日に風邪をひき試験を受けられなかった。
それから就職をする気持ちが薄れブラブラしていた。
今から3年前に親のコネでうちに就職した。
ある意味、異例の出世である。
1年前に本社の人事部長に呼ばれ「加藤を頼む!」と言われた時に・・
彼の噂を知っていた私は人事部長の大久保に向かい苦笑いをした。
彼は確かに頭は良かった。
しかし人とのコミニケーションが出来ない。
自分本位と言うのか?
昔ならいざ知らず今の世の中では学歴などまったく関係が無い。
東大出とチヤホヤされるのも1年くらいが関の山で後は無能なオヤジとうとましがられていた。
体よく私は押しつられたのだ。
「坂本!こいつを一人前にしたら本物だ!次はエリヤマネージャーだな!」
人事部長の大久保はそうタバコを美味そうに吹かしながら笑った。
加藤は噂通りの男であった。
副店長とは基本的に嫌われ役である。そして私と部下達とのパイプ役と言っても良い。
部下から一番、頼られなければいけない存在である。
しかし、加藤は仕事はミスばかり人望も無い。
そのくせ能書きだけは一チョ前!そんな最悪な社員の模範のような男である。
彼が私の部下になり数回、飲みに誘ったが一度も彼は私の誘いを受ける事は無かった。
ある意味、彼からすれば、私も無能な付き合う価値に値しない男なのだろう。
ニヤつきながら加藤が呟く・・
「店長!あんまり奥さんをかまわないと浮気されてしまいますよ!」と
一瞬、余計なお世話だと加藤を睨みつけてしまった。
加藤がその場から立ち去ると携帯電話が鳴った。
今日子・・そうデスプレイの表示。
「はい!坂本です!」
「あっ!どうも!あのね!今度の休日休みっていつ?」
「えっ?ああ・・・第二の日曜日かな?」
「そう・・動物園に連れて行ってくれない?あの子を・・」
「えっ??ああ・・別に構わないけど・・」
ふと昨夜の今日子の姿が私の脳裏をかすめる。
聖夜と会っていた女・・
妻の友美の浮気相手と・・
少なからずこの女が何かを企んでいる事はきっと確かだと思っていた。
そうでなければ私のような男にこんな美人が近寄って来る訳が無いのだから。
「あら・・なんか、乗り気じゃ無いわね!無理にとは言わないけど・・」
何時もながら強気の女である。
自分から電話をして来たくせに・・
「純君のために喜んで行かせて頂きます!」
そう私は笑いながら言った。
「よろしい・・なら詳しくはまた電話するから・・」
まるで恋人同士の会話である。
なんとも・・・頂けない・・
その日、自宅に戻り玄関を開けると妻の怒鳴り声が聞こえる。
「何であなたは我侭ばかり言うの!
いい加減にしないさい!あなたなんか生まなければ良かった!
この馬鹿娘!」
「ごめんなさい!ママ!ごめんなさい!もう我侭言わないから・・
お願い・・叩かないで!」
私は急いでリビングのドアを開く。
目の前に何度も何度ももの凄い形相で娘の頬を叩いてる友美に姿が・・
そして怯え泣きじゃくる娘の葵の姿あった!
「お前!何やってんだ!止めろ!」
私は妻を怒鳴りつけ妻の頬を一度・・平手で殴った!
「お前らしくない!どうしたんだ?」
「私らしいって何?私らしいって何なのよ!!」
そう叫びながら・・妻は私を悲しそうに見つめた・・