私達はまるで何かに吸い込まれるようにネオンの中に消えた。
ホテルの入り口に入ると大きな電光掲示板があり数個の部屋にランプが付いてる。
何年ぶりだろう?こんなホテルに来るのは?本当に久しぶりである。
「部屋・・何処でも良いよね?」
そんな今日子の言葉にふと我に返る。
私は悩んでいた。部屋のボタンを押す寸前まで・・悩んでいた。
自分がどう行動するべきか?
その時、一瞬、薄暗いフロアーに立つ今日子の顔を電光掲示板の光が照らす。
私はその瞬間・・ギョッとし唾を飲み込む・・
そこには人形が立っていた。
何の感情も持たない・・人形が・・
この女は望んでいない・・私に抱かれる事を。
だから人形なのだ!無理に自分の感情を押し殺してる。
本当に抱かれたい男のために・・
この女が本当に抱かれたいと思ってる男は誰なのか?
木村なのか?それとも他の誰かなのか?
人形ではなく本当の自分で抱かれたいと思っている相手は??
「聞いて良いか?」
そう私が言うと今日子の手が止まった。
「な・・何?」
「お前・・本当に俺の事が好きなのか?」
「えっ・・言ったじゃない!好きよ!愛してるわ!」
私の気持ちは決まった・・
「そうか!なら入るのは止めよう!」
その瞬間!今日子は安心した表情になり・・
そして直ぐに焦ったような表情になる。
「えっ!どうして??どうしてよ!」
「君が僕を本気で愛してくれていると言ってくれたから!」
そうすまして私は呟く。
少しだけ困惑した表情を見せる今日子に私は言った。
「君を大事にしたいんだ・・」と
なんとも何処かの三流テレビドラマのようなくさい台詞・・
大事にしたいから抱かない・・
うぶなネンネじゃあるまいし・・
自分で言って少しだけ噴出しそうになる。
「私を・・大事に思うから・・抱かないの?」
「ああ・・そうだ!君を大事に思うからだ・・」
ドキドキしていた。次の今日子の言葉が怖かった。
「君・・私とどうなりたいの?」
今日子は少しだけ微笑みながらそう呟いた。
すると突然に入り口の自動ドアが開く。
そこに中年のオヤジと水商売風の女が一人立っていた。
「行きましょ!誠・・」
今日子は私を引きずるように強引にホテルを出た。
何も言わずにただ歩いた・・
何処まで行くんだ?
そんな言葉が言えないくらい・・強引に・・・
気が付くと今日子のアパートの前に私は立っていた。
時計を見ながら今日子が呟く。
「あと、3時間くらいあるから・・少し仮眠して行きなさいよ!」と
私は部屋に通されテレビのある部屋の床にごろんと転がる。
そんな私に今日子は優しく布団をかけてくれた。
そして一言・・呟く
「不器用ね・・君・・」と
私は寝た振りをしていた・・
そんな今日子の言葉など聞こえていない様に・・
ジリリリ・・・ン
目覚ましの音で私は目を覚ます!時計を見ると6時を少し回っていた。
台所では美味そうな味噌汁の香りとご飯が炊き上がる香りがする。
突然、私の目の前に小さな男の子の顔が現れる・・
「あっ!お・・おはよう!」
「お・・おじさん!どうしたの?夜・・来たんだ!
なんだ!起こしてくれればよかったのに!」
そう残念そうに純君が呟く
「ほら!ご飯の支度が出来たわよ!寝てる大きな僕ちゃんも起きなさい!」
今日子が笑いながらそう私に言った。
ふと・・思う。
どうやら私が選んだ道は・・正解であったようであると・・
私は朝食を済ませると・・そのまま職場に向かった。