チャイムを鳴らすと玄関から一人の少女が笑顔で私たちを迎えててくれた。
木村の娘のユカである。
「いらっしゃいませ!」
そう礼儀正しくお辞儀をするユカを葵は不思議そうに見つめていた。
「ほら、葵!ご挨拶は??」
そう友美に言われ葵が驚いたように頭を下げた。
「よう!いらっしゃい!」
しばらくすると中から木村が現れる。
こいつも見た事も無いような高そうな服を着ている。
私は小声で彼に言う
「お前・・七・五・三かよ!」と
木村は照れたように・・
「あいつが見っとも無いから着ろってうるさいんだよ!
本当はこんなの堅苦しくってやなんだけどよ!」
そう言うわりには何気にそんな高そうな服を着こなしてる。
なんとなく・・やはりこいつは私と違うんだと感じる。
昔・・
貧富の差なんか関係が無いと思っていた。
自分が今、貧しいのは親のせいで自分のせいではない。
俺が社会に出たら絶対に金持ちになれるのだ!
だから、自分が貧乏人であることを恥じた事は一度も無い。
しかし、現実はそうではない。
木村は今も昔も金持ちで・・
私は今も昔もこいつより貧乏人なのだ。
「囲炉裏!地下だから・・」
木村にそう言われ友美が葵を連れて地下に向かう階段に向かう。
なんとなく友美の様子が変だと思ったが初めての家で緊張してるのかと気にもしなかった。
地下に降りて扉を開くと8畳ほどの部屋の真ん中に大きな囲炉裏がある。
昔、この囲炉裏を作った時に私が一度、彼に聞いたことがある
「何で急にこんなの作ったんだよ!」と
木村は笑いながら冗談まじりに言った。
「実はこの下に隠し金庫になってるんだ!秘密だぜ!」と笑いながら・・
それが本当か嘘か今でもわからない。
でも、なんとなく木村ならやりかねないと思う。
しばらくすると料理を持った美香が現れる
友美は慌てたように「手伝います!」と言った。
「いいえ・・焼く物とお酒を持って来るだけだから・・」
美香がそう友美を冷めた目で見つめながら言った。
「気が利かないのね!坂本君の奥さん・・」
きっと、そんな陰口が聞こえそうである。
「あ・・あのこれお土産です!お口に合えばよいのですが?」
そう言いながら友美がケーキの箱を美香に差し出す。
木村がその箱を美香から奪い取るように取り上げ中を覗き込む
「あ・・あなた!はしたないわよ!」
美香は怒ったようにそう木村を諭した。
横目で美香が中身を確認した事がわかった。
ケーキの袋の店の名前を見た時から期待をしていたのか?
美香は箱の中にアップルパイがある事を確認すると嬉しそうに微笑む・・
そして意味ありげに私を見つめた。
宴会が始まった。
「大きな海老さん!初めて見た!」
娘の葵が驚いたようにトレーに乗った伊勢海老を見つめる。
「葵チャンは初めて見たの??これ・・」
木村の娘がそう不思議そうに聞いた。
「えっ!そんな事は無いわよね!葵・・
もぉ~すぐ嘘をつくんだから・・」
そう合いの手を入れたのは友美であった。
きっと葵には良い迷惑だったに違いない。
楽しい?時間が過ぎた。
少し飲みすぎたのか、私は囲炉裏部屋を出て台所に水を飲みに向かう。
私の後を追うように美香が現れる。
「今日は悪かったね!大勢で・・・」
そう私が言うと美香は少し恥ずかしそうに呟く・・
「覚えて居てくれたんだね!あのアップルパイの事・・」と
私は何と答えて良いかわからずにただ・・
「偶然だろ!それに買って来たのは嫁だから・・」と言った。
「そう・・相変わらずね!ねぇ~一つ聞いてよい?」
「何??」
「何で急にまた、旦那と仲良くし始めたの??」
「えっ??そう言われてもな~昔から友達だから俺たち・・」
「そう!奥さん綺麗ね!相変わらず・・」
「そうか?もうおばさんだよ!」
「そうかしら?大人の色気って言うの?坂本君も心配じゃない?
あんな美人の奥さんが居たんじゃ?」
「何が言いたんだ・・お前・・」
「えっ・・別に・・」
私は美香をその場に残しまた地下に戻った。