事情 | 僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死んで・・生まれる日までの記録

車に乗り少し走ると二人の後姿を発見した。


見るからに露出の激しい服を着てる今日子をすれ違う通行人が好奇の視線で見つめている。


私は車を二人の横に着け窓を開く。


「送って行こうか??」


そんな私の言葉に今日子はばつが悪そうに視線をそらした・・


「本当に!乗る!乗る!!」


そう叫んだのもう歩くのに疲れた表情を浮かべていた小さな男の子・・


「純!我侭言わないの!」


そう引きった表情で今日子は彼を一喝する。


「だって・・もう疲れたんだもの・・・」


ププ~~~ッ!


私の後ろに数台の車が詰まっていた。


今日子はチラッとイラつく運転手の顔色を伺う。


「どうする??」


私は助け舟を出すようにそう今日子に言った。


「わ・・わかったわよ!」


そう投げやりな言葉を呟き二人は車に乗り込んだ。


「何処まで送れば良いんだ??」


「えっ・・蒲田まで・・」


恥ずかしそうにそう呟く今日子の顔は少しだけ引きっていた。


「おじちゃんはママのお友達なの??お名前は??」


そう私の隣に座っていた男の子が急に私に問いかける。


「そうだよ!おじちゃんの名前は誠って言うんだ!

君の名前は??」


「純!佐藤・・純・・」


「純君か!僕はママのお友達だから・・君も僕とお友達になってくれるかい?」


そんな私の言葉に純は嬉しそうにうなずいた。


「何か飲みたくないかい?純君・・」


「うん!サイダー!」


そう純が叫ぶと今日子が鬼のような形相で怒鳴りつける!


「純!我侭言わないのよ!」と


「ごめんさい・・でも・・」


「良いんだよ!それで・・君は??」


そう言いながら今日子を見ると彼女も小さな声で・・


「コーヒー・・」と呟いた。


新青梅街道から環八に出て蒲田を目指す。


私は結婚をするまで糀谷と言う街に住んでいた。


通いなれた道である。迷うことなく蒲田に着いたのはマンションを出て1時間後の事であった。


「あっ!そこ・・曲がって・・」


そう言われ道を左折すると小さなコープタイプのアパートが見せる。


「誠おじちゃん!僕のおうち・・あそこだよ!」


先ほど見た豪華なマンションとは比べ物にならないほど・・質素な家であった。


アパートの前に車を止める。


「ねぇ~寄っていきなよ!僕の宝物を見せてあげるから・・」


「じ・・純!我侭を言わないのよ!」


「ごめんね!純君・・おじさんはこれからお仕事なんだ!」


「そうなんだ!なら、今度、絶対に遊びに来てね!約束だよ!」


「ああ・・わかったよ!お土産は何が良いかな??」


そんな私の言葉に一瞬、純は今日子の顔をチラッと見て小さな声で呟く・・


「ケーキが良いな・・」と


二人が車から降りて行く・・


降り際に今日子が私に小声で言った・・


「近いうちに・・お店に来てよ!」と


私は無言でうなずいた。


家に帰るとまだ、妻も娘も帰っていなかった。


すると突然に携帯電話が鳴る。


友美・・


そう画面に表示された。


「なんだ??どうしたのか??」


「えっ・・いや・・あなた、今・・何処??」


「えっ・・家だけど・・」


「そう・・今、駅前に居るのよ!たまには3人で食事でもしない??」


「ああ・・そうだな!今から行くよ!」


私は私服に着替えると家を出て駅に向かい歩き出す。


南口の改札の前で妻と娘が立っていた。


「お待たせ・・行こうか??」


そう呟き歩き出す・・・


すると背後で妻でポツリと呟いた・・


「またあの香りがするのね・・甘い・・香り・・」と


私は一瞬、全身が硬直した・・


しかし、聞こえない振りをして歩き出す・・・


妻はそんな私を少しだけ悲しそうな眼差しで見つめていたに違いない。


私には振り返る勇気がなかったので定かではないが・・