偽り | 僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死んで・・生まれる日までの記録

六階の5号室ですから・・


電話に出た今日子がそう呟く。


私はテレビを台車に乗せてマンションの入り口に向かう。


マンションの入り口もチャイムがあり行き先の部屋番号を押すと住人が鍵を開けてくれる・・


あんな飲み屋で働いているわりには良い所に住んでいるなと


私は少しだけ嫉妬した。


部屋の前まで行き再び玄関のチャイムを押す。


すると中から今日子が現れる。


胸元が大きく開いた服が何とも淫靡で目のやり場に困る。


「ご苦労様!」


そう私を見つめ彼女は呟くと玄関にスリッパを並べ私を迎え入れた。


「奥の部屋だから・・設置するの・・」


私はテレビを運びながら部屋の様子をうかがう・・


誰かと住んでいる形跡は無い・・


どうやら彼女は一人暮らしのようであった。


一時間も過ぎただろうか?


私がテレビの設置を全て終えると今日子は冷たい麦茶を持って来た。


「お座りになって!今日はご無理を言ってごめんなさいね!」


「いいえ・・これも仕事ですから・・」


そう私が言いながら麦茶を飲み干すといつの間にか今日子は私の隣に座っていた。


「あなたは・・何時も寂しそうな目をしてるのね・・」


そう呟きながら私を見つめ・・私の太ももにそっと右手を乗せる・・


「えっ?」


私は少し驚いたように今日子を見つめる・・


この女は私を誘っている・・・


今日子の右手が何度も何度も私の太もも行き来する・・・


「何があなたをそんな目にしてるの??」


そう呟き・・彼女は私の唇に自らの唇を重ねた・・


私はまるで金縛りにあったかのようにその場で身動き出来なくなる・・


「良いのよ・・・あなたなら・・」


そう呟き・・私の右手を掴みながら今日子は自分の胸元に運んだ・・


ピンポ~~~ン


その時、突然に家のチャイムが鳴った・・


一瞬、今日子の顔が硬直する・・


まるで何かを恐れているかのように・・・


そして静かに立ち上がりインターポンの受話器を取った。


「き・・今日子!ごめん!純ちゃん!泣き止まないのよ!

連れて来ちゃった!」


受話器からそんな声が漏れている・・


純ちゃん??誰だ??


「ああ・・ごめん!今・・鍵を開けるから・・」


そう今日子は呟きロックを解除する操作をした。


しばらくすると玄関の鍵が勝手に開く


どうも訪問者はこの家の合い鍵を持っているようである。


扉が開き私の前に30歳前後の一人の女性と5歳ぐらいの小さな男の子が現れる。


「今日子!ごめんね!予定が狂って・・

あっ!これね!ありがとう!私、機械音痴だから助かったわ!

あら?こちらの方は??」


「え・・えっと!電気屋さんよ!このテレビを運んでくれた・・」


「あ~~そうなの!ご苦労様!」


何がなんだか訳が解らなかった・・


この女は誰で??この男の子は誰の子供なのだ???


いったい・・どうなってる??


「どうする?お昼でも食べて行く??純ちゃんと??」


彼女は今日子にそう呟く・・


「えっ・・もう、帰るから・・これから出かけないといけないのよ!」


「あら・・残念ね!純ちゃん!また遊ぼうね!」


ニコリと笑いながら彼女はその男にそう言った・・


「うん!またね!ママ・・早く帰ろうよ!」


そう言いながら今日子の洋服の袖を引っ張る彼を見て・・


あ~この男の子は今日子の子供なんだと悟った。


逃げるように今日子が部屋から立ち去る・・


そして私は彼女を追いかけるようにその部屋を後にする・・


マンションの玄関を出るともう既に今日子の姿は消えていた・・


私は訳がわからず車に乗り込みエンジンをかけた。