すれ違い | 僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死んで・・生まれる日までの記録

「あなた・・本当に木村さんと飲んでいたのよね?」


そんな妻の言葉に一瞬、ピクッと体が引きつった・・


今日子と会って自宅に戻るとまだ家の電気は消えていなかった。


いつもならとっくに寝ているのに・・


私はなんとなく不安な気持ちを抱きつつ玄関を開いた。


部屋に戻り私が上着を脱ぐと妻は浮かない顔をして私に言った。


「そうだよ!木村と会っていたんだよ!それが何か??」


「えっ・・いいえ・・なんか上着から甘い香水の香りがしたから・・

それに・・」


「ああ・・近くにOLのグループが居たんだ!

多分、彼女達の香水の香りがついたんだろ?」


私はそう妻に言うと逃げるように風呂場に向かう。


妻は何か私に言いたそうに私を見つめる。


私はその視線に気がつかない振りをして風呂場に向かう。


寝室に向かうと妻はもう既にベットに入っていた。


布団の中をそっと覗き込むともう眠っているようである。


最近、こいつは何かを私に話したがっている・・


それが何か私にはわからないが、多分、良い話では無いことは想像がついた。


翌朝、朝食を食べていると妻が私に話しかける。


「あなた!今度のお休みなんだけど・・」


一瞬、ドキッとして食べている途中のパンを吐き出しそうになる。


「こ・・今度の休み?何かあるのか??」


「ええ・・葵が遊園地に行きたいと言ってるんだけど・・

たまには家族3人で行こうかと?

大丈夫よね?」


「あっ・・悪い!今度の休みは木村とか昔の仲間で久しぶりに会うことになってるんだ!」


そう私が言うと・・


「また・・木村さんなのね・・」と


妻は少しだけ寂しそうに呟いた。


お・・お前のせいだろ!お前が・・お前が・・浮気なんかしてなければ・・俺だって!


俺だって!木村なんかと会うことなんか無かったんだ!


それに今日子とか言う女とも関わりに会う事だってなかった!


全部、お前の浮気が原因だろ!


それなのに・・なんで俺をそんな目で見るんだ!


ふざけんなよ!お前!全部お前が悪いのに!


何で俺をそんな目で見るんだ・・なんで・・


私は不機嫌そうに食べかけのパンをテーブルに置くとそのまま立ち上がった。


「あら、もう終わりなの??」


「食事の時にグダグダとくだらない話をするなと何度言ったら解るんだ!

俺はやなんだよ!朝から面倒なことを色々と言われるのが!

朝ぐらい爽やかに出かせさせろ!」


部屋中に私に怒鳴り声が響き渡る・・


妻はそんな私を申し訳なさそうに見つめた。


「奥さん・・最近どうだ??」


その日の午後に木村から電話がかかって来た。


「ああ・・どうなんだろ?最近は携帯電話を完全に隠してるから・・

盗み見も出来ないよ!

でも、連絡は取り合ってるんだろ!きっと・・

それになんか最近、やたらと何か俺に話したがっているんだ!

それが何なのかわからないけど・・

もう駄目なのかもしれない・・

別れ話を切り出したくってウズウズしてるんのかも?」


「そうか・・・あと、俺の事・・なんか言ってないか??」


「お前のこと??いや・・何でだ??」


「えっ・・いや・・ほら、最近、お前を連れまわしているから・・」


「何を言ってるんだ!別にお前が・・・」


「い・いや!奥さんが何も言ってないのならそれで良いんだ!それで・・」


なんとなく木村の態度がおかしいと思った・・・しかし、それは漠然としたもの・・


その不自然さが何かその時の私には理解することが出来なかった。


「ところでお前!今日子とこの前、会ったんだってな!

お前も奥手の癖に・・けっこうやる時はやるな!」


「えっ・・・い・・いや・・それは・・」


「きゃはは・・うそだよ!テレビを買ってくれたんだろ!あいつ・・

この前、そんな話をしてたんでお前に相談をしろと言ったのは俺なんだ!

それにお前に浮気なんかする度胸が無いことぐらい知ってるよ!

俺が一番・・」


木村はそう言うと一方的に電話を切った。


それから数日後、私の休みの日が来た。


朝から妻と娘は楽しそうに遊園地に行く準備をしていた。


お弁当を作り、水筒に飲み物を入れて・・


「パパも一緒にくれば良いのにな~」


娘の葵がそう寂しそうに言った。


「パパにはパパの用事があるのよ!我侭は言わないの!約束したでしょ!

夕食は外食しましょうね!葵・・」


そう娘に言いながら妻が一瞬、私をチラッと見つめる。


きっと・・あなたも一緒に・・と言いたかったに違いない。


しかし、私は目をそらした・・


そんな私を妻は悲しそうに見つめた・・