暗闇の中に1人立つ・・ | 僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死んで・・生まれる日までの記録

幸せそうな私の妻の顔を見つめながら木村は思っていた。


あいつも・・もしも違う男ができたらあんな顔をするのかな・・・と


あいつとはもちろん木村の妻の美香の事である。


結婚して10年・・・


木村が私達のグループの中で一番、最初に結婚をした。


しかし、中々、子供に恵まれず木村の妻は長年の不妊治療の末にやっと妊娠・・・


一人娘のユカが生まれたのは今から5年前の事である。


木村は以前、酔っ払いながら愚痴った事があった。


「誠、結婚なんかするもじゃないぞ!結婚は男の墓場だ!」と


何時からだろう??セックスが愛を確かめる行為から子供を作る手段になってしまったのは??


何時からだろう??あんなに溢れるほど話したい事があったのに・・・


話を探さないと会話が無くなってしまったのは??何時からなんだろう??


木村は嬉しそうに笑っている私の妻を見つめふと我に返っていた・・・


あいつも・・笑うのかな??もしも好きな男が出来たら・・・


そんな戯言を呟きながら・・


2人は喫茶店に入りその後、歌舞伎町を抜け新大久保方面に向かい歩き始める。


「あらら・・やばいんじゃないの?この展開は・・」


木村は困ったように苦笑いを浮かべる。


予想通りと言うべきなのか、妻とその男は昼間のラブホテル街へと消えて行ったそうである。


次の日の夜に例の飲み屋で数枚の写真を私に見せながら切なそうな顔で木村が話した。


私は木村の話を何も言わずに聞いていた・・・


相手の男をマジマジと見つめ知った顔かと記憶をたどったが私の記憶にこの男の顔は無かった。


「それで・・お前、出てくる所まで居たのか?ラブホテルの前で??」


そう私が木村に聞くと木村は小さく頷いた。


「すまなかったな・・面倒な事を・・今夜はおごるから・・飲んでくれ・・」


どの位の時間を・・どのくらいの量の酒をその晩に2人で飲んだのか記憶に無い。


ただ、最後に木村が泣きながら一言・・


「辛いな・・お前・・・」と言った言葉だけ鮮明に覚えている。


酔った私は真っ赤な顔で木村を怒鳴りながらわめいていた!


「何が辛いものか!俺は全然・・平気だぞ!」と


そんな私の姿に木村の目から止まったはずの涙が再び流れ出す・・・


友達ってさ・・・


きっと、本当の友達って・・


自分が幸せなときにそばに居てくれんじゃなく・・・


自分が本当に泣きたい時に・・・


一緒に何も言わないで泣いてくれる奴が・・・


本当の親友と言う奴なのかもしれない・・


ごめんな・・木村・・俺・・俺さ・・本当はお前に親友なんて呼んでもらう資格・・無い


でも・・俺・・・お前の事・・親友って呼ばせてもらって良いかな??


これから・・死ぬまで・・・


覚えて居ないけど・・


私はその晩、木村に何度も何度も・・そう叫びながらあいつの頭を叩いてたらしい・・・


人生は辛すぎて私の手には負えない