次の日の夜、私は仕事が終わると1人で街に繰り出した。
誰かと飲みたい・・
そう心では思っていたが内容が内容である。会社の同僚に愚痴ることは出来ない。
私は昼間のうちに学士時代からの親友の木村に連絡をしていた。
「よう!どうした?お前から電話なんて珍しいな!何時も留守電大魔王のくせに・・」
木村は少し何時もの私の態度に嫌みったらしくそう呟く。
結婚してからの私は殆ど、昔の友人と会う事が無くなった。
会社で店の店長になり忙しくなったと言う事もあるが本心を言えば面倒になったのだ。
よくやっぱり昔からの友人と飲むと楽しい!なんて言う人間がいるが私はまったくそうは思わない。
同じ時間を共に過ごしているから楽しかったのだ。
お互いが家庭を持ち、それぞれ別の世界で生きる人間同士に安らぎは無い。
私はそう思っていた。
しかし、誰かに話したかった。私のこの苦しい現状を・・・
無関係な世界で生きる人間だからこそ素直に話せる事もあるのだ。
「久しぶりだな!仕事はどうだ??」
木村は大学を卒業すと2年ほどコンピュータ関係の会社に就職し今は実家を継いでいる。
立派な水道屋の社長だ。
彼とは高校時代からの付き合いだが私と違い裕福な家庭に育った彼・・
性格も私とは全然違い友人も多い・・
ネクラな私が彼と親友同士と言う事を周りの人間は何時も不思議そうに見つめていた。
「仕事はどうだ??」
こんな会話から話が始まることじたいに私は彼との間に昔とは違う何とも表現できない溝を感じた。
新宿に馴染みの飲み屋・・・
学生時代からよくここで朝までくだらない話をしていた。
その殆どは将来の話と女の話ばかりであったのだが・・
それが何とも楽しく話が何時までも尽きなかった事を懐かしく思い出す。
「実はな・・・木村・・・」
そう重たい口を突然開いた私を木村は心配そうに見つめた。
「そうした??珍しいなお前が自分の悩みを俺に話すなんて・・」
そうだ、私は何時も昔から聞き役だった。
木村やその他の友人達の・・・
決して自分の心は見せない。
自分の苦しみや悩みを・・
いや・・自分の弱さを他人に見せることが怖かったのかもしれない。
「実はな・・嫁が浮気をしてるらしんだ・・・」
一瞬、木村は驚いたような顔をした。そして直ぐに冷静な顔に戻り呟く・・
「確信はあるのか?お前・・曖昧な妄想で話してるんじゃないのか?」
「ああ・・妄想である事を願って居るよ!でも、何度もそいつからのメールを見ている。」
「お前・・奥さんの携帯・・見たの??」
「ああ・・最初は偶然だった!でも、今は必然だ・・」
「バカだな!そんなもの見たらろくな事が無いのに・・」
「ああ・・俺もそう思っている・・」
しばしの沈黙が流れた・・・
お互い話す言葉を捜していたのかもしれない。
「それで?話はそれだけか??」
しびれを切らし木村が私にそう呟く・・
「実は・・今度の日曜日にそいつに嫁が会うらしい・・・」
私は今までの事を全て話し木村に言った。
「申し訳ないが、俺は行けない!その場所に・・・
お前・・確認をして来てくれないか??
無理な願いを言ってるのも解っている。
それに、お前を面倒な事に巻き込むつもりない。
俺はその日は娘と遊園地に・・・」
「遠慮するなよ!」
私が最後まで話さないうちに木村は少し酔ったトロンとした目で言った。
「お前は昔から何時もそうだな!
俺たち、親友だろ!お前はどう思っているか解らんけど・・
俺は今でもそう思っているんだぜ!
解った・・詳しいこと・・聞かせろよ・・」
親友なんてくだらない・・
所詮は人間は1人なんだから・・
私のこの考えは・・
もしかしたら間違いだったのかもしれない。
私はそう呟く木村の目を見つめながらそう心の中で呟いた。