私は帰宅すると風呂に入り自分の布団に潜り込んだ。
夢の中で眠ると言う行為がなんとも馬鹿げていると可笑しかった。
きっと、目が覚めたら現実の世界に戻っているに違いない。
また、始発電車に飛び乗り2時間以上電車に揺られながら会社に向かう・・
そんな生活が待っているに違いない。
私はなんとなく寂しく感じた。
若い頃の友美は今のあのふてぶてしさはまったく見当たらない。
本当に理系の賢そうな美人である。
私は何であの時に木村に嫉妬したのか???
愛なんてもう感じては居ない。
私は何時も友美の顔を見ながら想っていた。
私はなぜにこの女と一緒に暮らさなければいけないのだろうか??と
私はこの女に安定した生活を与えている。
毎月、毎月、決まった金を持ち帰る事によって・・
ならば、この女は私に何を与えてくれるのだろう??
ふと・・そんな事を考える時に・・
私の頭の中には苦しみしか浮かばなかった。
「友美ちゃんは良い男を見つけたわよね!」
よく、友美の友人がそう友美に言っていた。
私は何も反論しない。
私は威張らない・・
私は友美の我が侭を殆ど聞いて上げる・・
私は・・私は・・・女から見れば理想的な良い旦那なのだ・・
ただ・・残念な事に私は決して良い旦那ではない・・・
なぜなら、その妻への行為は愛から発せられる行為では無いからだ・・
私は見せ掛けだけの「良い旦那」を演じている人形でしかないのだ。
そして妻の友美はそんな私に縛り付けられた何十本もの見えない糸を操る人形師・・・
だから、私から彼女に与える物はあっても・・
私を操っている彼女が私に何かを与えてくれると言う事は無いのかもしれない。
夫婦とは・・何なのだろう???
私は・・私は何でこの女と結婚したのか??
なぜに・・
その時、何処からなんとも不気味な声が聞こえたような気がした・・
「まだ・・思い出す時期ではない・・」
「えっ・・なんだ??今の声は??思い出す時期とは??
友美と私が結婚するきっかけだろ??
そんな事・・えっ・・そんな簡単な事が思い出せなかった・・・」
それが人生をリセットしたと言う事なのかもしれない・・・
微妙に現実にあった過去とこれからの決まった未来が壊されているような気がした・・
そんな事を考えているうちに私は深い眠りに落ちて行くのであった。
きっと、次に目を覚ましたら・・
あの友美のお気に入りの趣味の悪いシャンデリャが目に飛び込んで来るに違いない!
そんな事を想いながら・・
次の朝、私は起きているのだが怖くて目を開ける事が出来なかった。
ただ、何時までもこうして居ても仕方が無いので私は勇気を出して眼を開いた。
そこには昨日の朝に見た・・
何とかと言うアイドルの笑顔があった。
もしかして・・これは夢では無いのかもしれない・・
ならば、私が今まで生きていた世界が夢の世界なのか??
友美と結婚したり、木村が一流の作家になったり・・
今日子と別れたり・・・私が作家になる夢を諦めたあの世界が夢なのか???
私は1度、深いため息をつき・・起き上がる。
机の上には例のペンダントがなんとも不気味に置かれていた。
人生は辛すぎて私の手には負えない・・