私はリセットされた人生をもう一度、生きる決意をした。
遠い未来は解らない・・
しかし、近い未来は自分には昔の記憶としてその場、その場で思い出すことが出来た。
中でも自分の人生を左右する出来事が起こる時は必ず遠い記憶が思い出される。
右に進むべきが?左に進むべきかと悩む時・・・
必ず正解と違う方向を選んでしまったリセット前の私の記憶が蘇るのだ。
月日は流れ私は大学、2年になっていた。
そう・・私の人生を左右する一番最初の出来事・・
私が友美とそれまで以上に親しくなるある出来事が起こる日がせまろうとしていた。
「北海道・・俺、初めてなんだよ!」
飛び立つ準備にかかろうとしていた飛行機の座席に座りシートベルトをはめながら木村が私にそう言った。
私達は部活のサマーキャンプで北海道に向おうとしていた。
そう・・本当なら、このキャンプで友美は木村に告白をする。
そして木村は友美に言うのだ。
「好きな女が居るんだ・・
だから、お前とは付き合えない・・」と
山の中のキャンプ場のひと目がつかない場所で木村に振られた友美は泣いていた。
そんな友美を励ましたのが当時の私であった。
木村が好きな女が誰なのか私には解っていた。
それは今日子である。
木村と今日子は大学時代を卒業するまで付き合っていた。
そうだ・・このキャンプで友美を振った木村はその足で今日子に告白をしたのだ。
その時の今日子が誰が好きだったかなんて事は正直、今の私にも解らない事であった。
しかし、あの時、友美が木村と付き合うことに成功していたのなら・・
私の未来は大きな変化をした事は間違いないのである。
私はその時に大きな人生の別れ道に立っていた。
同好会のサマーキャンプと言ってもそんなに堅苦しいキャンプではない。
上下関係は確かに厳しかったが、所詮は文科系のクラブである。
体育会系の運動部とは違い実にまったりとしていた。
私は木村は同じテントであった。
キャンプは2泊3日で行われた。
本来ならば2日目の夜に友美は木村に告白をする。
初日の夜、少しほろ酔い気分で私と木村は寝袋に潜り込む・・
しばしの沈黙の後・・木村が呟いた。
「誠・・お前・・今日子の事をどう思っているんだ??」
そんな木村の言葉を合図に私の記憶が蘇る・・
あ~そうだ・・私はこの時に木村に言ったのだ・・
「俺は別に今日子なんか好きじゃね~よ!」と
そしたら木村が言ったのだ・・
「なら・・俺、今日子に告白して良いかな?」と・・
「おう!応援するよ!頑張れよ!」
そう私は笑顔で答えるのだ・・
結果的には私のその一言が木村に今日子に愛を告白する勇気を与えたと後で木村に聞かされる事になる。
ならば・・・
「誠・・お前・・今日子の事をどう思っているんだ??」
私はそんな木村の言葉に起き上がり真剣な顔で言った・・
「俺は今日子を愛してる。誰にも負けないくらいあいつを愛してる・・」と
そんな私の言葉に木村は少し落ち込みながら答えた。
「そうだよな!なんか、今日子を見てると俺よりも誠と話してる時の方が楽しそうだもんな!
俺・・明日、あいつに告白をしょうと想って居たんだ・・
でも・・多分、無理だよな!誠とは一生、親友でいたいと想ってるし・・
女の事でお前ともめたくないんだ!
解った!俺、あいつから手を引くよ!その代り、お前・・絶対にあいつをものにしろよな!」
木村は真剣な表情で私に言った・・・
やった・・・俺は・・勝った。この男に・・・
私は涙を流しながら木村に言った・・
「ありがとう・・俺たち、一生、親友でいような!」と
悪魔って居るんだ・・本当に・・・居るんだ・・・
次の日の夜、友美が夕食の後に木村を呼び出した。
私は後ろからそっと2人を尾行した。
「木村君・・私、あなたの事が好きなの!付き合ってくれないかな・・」
そんな友美の言葉に木村は少し考えて頷いた・・・
「俺も・・前から友美の事が好きだったんだ!」と
2人は・・・そこで初めての口付けを交わした・・・・
やった・・・未来が・・変わった・・・未来が・・
私はそんな2人を見つめながらなんとも表現できない興奮を覚えた・・
やった!やった・・・
よし!なら、今度は私の番だ!あの時の木村のように今日子に告白をしに・・
そう思い振り返るとそこに1人の女性の影が・・・
じ・・純子???何でお前が・・・ここに・・・
「あら・・坂本君!こんな所で何をしてるの??」
「えっ??い・・いや・・別に・・」
「そう、なら、あんた飲んで無い様だから・・
先輩にお酒の追加を買って来るように頼まれてね!
一緒に行ってもらえないかしら・・・」
私は時計を一瞬見つめた。
確か・・木村が今日子に告白をしたのは11時を少し過ぎた頃で・・・
あいつが1人で後片付けをしていた時に木村があいつに告白をしたんだ・・
10時・・30分・・
「ごめん・・用事が・・・」
そう私が言い終わらないうちに純子は強引に私手を引っ張り数人の仲間が待つ車へと連れて行った・・
「お・・おい!待ってくれ!俺には・・俺には・・」
一瞬・・純子の顔が・・私にはあの時の老婆に見えた・・
そして・・不思議な声が聞こえた・・・
「まだ・・まだ・・だよ!もう少し、楽しませておくれよ!」と・・・
人生は辛すぎて私の手には負えない。