謎の少女 | 僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死んで・・生まれる日までの記録

私は薄れた記憶の糸を手繰り寄せるかのように大学に向った。


電車の中で鞄の中身を確認する。


国文Ⅰと書かれたぶ厚い教科書と数冊のノートが入っていた。


そのノートの中身を確認すると何やら主人公の設定やストーリーなどが書かれていた・・


あ~そうだ思い出した。当時の私は小説家になるのが夢だったのだ。


だから、大学も文系の学部に進んだ。


ノートをペラペラめくりながら読み出す・・


なんともくだらない話であった。


俺・・才能ないなこりゃ・・・


確かに私は大学、4年の時に人生の初の挫折を体験する。


周りの仲間達は自分の夢を追いかけるために就職はしないでそのまま卒業して行った・・


私は・・・就職する事を選んだのだ。


今、自分の書いたその低レベルの物語を読みながらその時の私の選択は正しかったと実感した。


しかし、そのために私は当時の多くの仲間を失う事になる。


そして、卒業して10年後に天才小説家と評判になる大親友の木村とも別れる事になる。


私は当時、雑誌等で話題になった懐かしい親友の写真を見ながら・・


懐かしいと言うよりも大いなる嫉妬の念に包まれた事をよく覚えている。


なぜならば、大学時代の木村の作品はまったく良いとは言える作品ではなく・・


私の低レベルの作品以下の小説だったからだ・・


あの時、もしも諦めなかったら・・俺だって・・・


そんな身勝手な妄想が私を包み込んだのをよく覚えている。


そんな事を考えて居ると私は何時の間にか大学に到着していた。


懐かしい校舎・・・


私はこの場所で沢山の想い出を作り・・


そして多くの人間達と出会って来たのだ。


教室に入り一番、後ろの自分の指定席に腰掛ける。


毎日、私は学生時代、この席に座っていた。


そして、しばらくすると私の隣の席に座る男が居る。


「おはよう・・昨夜はのっちゃってさ~~4時だよ!4時!でもすげ~話!書いたぜ!」


木村・・・


そこには若い頃の木村の笑顔をあった。


「お・・おはよう!」


私は少しだけ動揺しながらそう呟く・・


そして、授業が始まる5分前になると必ず息を切らせながらあいつが現れる。


「誠!純ちゃん!おはよう・・」


今日子・・・


佐藤今日子・・・


私の人生の唯一の悔いを残させた女である。


「おはよう!今日子!今日、部活出る?それともバイト??」


「う・・うん・・まだ、作品、仕上がって無いんだよね!

だから、今日はパス!バイトに行くわ!」


「そうか・・俺は今朝、やっと、新作が完成したよ!」


「そう!凄いね!今度、読むの楽しみにしてるよ!

あれ??誠はどのくらい進んでいるの小説・・」


「えっ??俺・・・俺は・・ボチボチかな」


「あんたは・・何時もボチボチね!」


そう笑いながら呟く今日子の顔がなんとも懐かしかった。


実は未来の話をすると私達の仲間で一番最初に世に出たのはこの今日子であった。


凄く素敵な恋愛小説であった。


今でも私の部屋の本棚には彼女の小説の初版本が大切に保管されている。


でもそれは今から10年以上も後の話である。


授業が終わり私と木村は部室に向った。


薄暗い小汚い部屋・・


ここが私達、文芸同好会の部室である。


「まったく・・1年なんてまるで召使だよな!」


そんな木村の愚痴で今の私が大学1年である事に気がついた。


「ああ・・まったくだ!」


部室に入ると数人の先輩が何やら難しい文芸論を話し合っている・・


~~の作家の新作はダメだね!とか随分、身勝手な話が・・


「おはよう!誠!」


不意に私に声をかけて来た女・・・


友美・・・


そう今の私の妻の友美である。


旧姓、本田友美・・・


今から15年後に私はこの女と結婚をする事になる。


とても信じられない話であった。


友美は理系の学部であった。


将来は大学院に進んで何とか言う微生物の研究をしたいと何時も言っていた・・


論文が上手くなりたいからこの文芸同好会に確か入部したのだと思う・・


そして友美が声をかけて来た直ぐ後に再び私の名前を呼ぶ女性の声がした・・


「坂本君、作品・・どう??」


こいつは・・誰だ??


その女性は私の記憶の中に存在しない女であった。


私は小声で木村に呟いた・・


「あいつ・・誰だ?」と


木村は笑いながら言った・・


「純子だろ・・加藤純子・・うちの部のマドンナを忘れるとは・・

純子を狙ってもがいてる君らしからぬ言葉だね!

俺をバカにしてるの??」


加藤・・純子・・・


いや・・知らない!絶対にこの女は居なかったはずだ!絶対に・・・


それが純子との初めての出会いであった。