カマキリとの出会い | 僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死んで・・生まれる日までの記録

事の始まりは娘の葵が幼稚園に入園する半年前の事である。


ある日、今日子が一枚のパンフレット持って嬉しそうに誠に話しかける。


「市でね!野菜に親しむ会ってをやっているのよ!

皆で協力して野菜を作っているの・・

毎週、農作業をして収穫した新鮮な季節の野菜をもらえるんだって!」


誠は嬉しそうに差し出されたそのパンフレットを興味なさげに見つめた。


妻の今日子は強烈なベジタリアンであった。


そして旦那の誠は強烈な肉食者であった。


そんな2人が結婚をして誠夫婦の食卓には肉と言う物が一切出てこない。


通常は草食動物より肉食動物の方が強いのだが・・


坂本家では逆で優しい誠は多少は不満があったがそんな食事も嫌な顔しないで食べていた。


「それで、家族全員参加が規則なのよ!あなたも参加してもらえないかしら??」


誠はそんな妻の申し出を聞いて一瞬、顔をしかめたが静かに無言で首を縦に振った。


しかし、参加したのは最初の日だけでそれ以降は仕事や何かと忙しい適当な理由をつけて参加しなった。


それでも会としてはOKらしく、妻は娘を連れて毎週のように早朝から畑に向った・・


そして、午後には誠がげんなりするほどの野菜を持って帰宅する。


ある日、今日子はその会で1人の女性と知り合う事になる。


顔は逆三角形で何時も淡いブルーの色が入っためがねをかけている。


子供は幼稚園児と小学生の子供が2人・・・


そんな彼女を今日子は「カマキリ」とあだ名で呼んでいた。


カマキリは顔が広い・・・


幼稚園ママから小学生のママまで多くの友達が居た。


地域の子供会でも役員をやっていたしある意味、実力者である。


1つ、難点を言えば、カマキリはある健康食品にはまっていた・・・


いや・・売っていた。


その会社の商品を売ると数パーセントのリベートが会社から入る・・


新規の会員を紹介すると数万円のリベートが入る・・


そんな会員制の健康食品の会社だ。


そんなカマキリが今日子に近づかない訳は無かった。


今日子は正直、言って「騙されるオーラ」を全開に漂わせている女であった。


と・・言うよりも誠を付き合いって居る時も数回、キャッチセールスで苦い想い出を持っている。


まだ、付き合って間もない頃、遠距離恋愛をしていた今日子は誠が住む町に泊りがけで遊びに来ていた。


その日は丁度、誠が仕事で駅に今日子を迎えに行く事が出来なかった。


案の定、誠が自宅に帰宅しても今日子の姿が無い・・


急いで携帯に電話をすると今、駅前の喫茶店に優しいお兄さんと3時間も話をしていると言う・・


「ねぇ~誕生石が格安で買えるらしいのよ!通常なら40万円もするのに・・

今回は20万円でよいんだって・・

もう、契約書にサインしちゃった!」


あんともあっけらかんと今日子はそう誠に話した・・


「お・・お前!まだ、そいつと一緒なのか?契約書は渡してしまったのか!」


「いいえ・・今、渡す所よ!

支払い・・どうしょう?ねぇ~おごってよ!」


何の悪びれる事無く簡単に誠にそう呟く・・


誠は急いで駅前の喫茶店に行くと・・そこにはいかにも人が良さそうな金髪の兄ちゃんが座っていた。


誠が表れると急に強面の顔に変わり今日子から契約書を奪い取ろうとしている・・


散々もめたあげくに・・・なんとか契約を取り消した・・


そんな・・女である。


騙されているとか、自分がどれだけ損をするとか、まったく先が考えられない女であった。


結婚しても数回、そんな揉め事が続いた・・


さすがの誠も怒りながら今日子に怒鳴った・・


「絶対に契約するな!話を聞くな!誘われたらその場で返事をしないで旦那に聞くと言え!

基本的に、物は店で買え!訪問販売で物は買うな!絶対に・・・」と


その時の誠の表情があまりにも真剣だったのでさすがの今日子もその事だけは今でも守っている。


その日、大根を畑から抜いている今日子の横にカマキリは近づき小声で言った・・


「坂本さん・・健康食品に興味は無い??

ほら、市販のシャンプーや食品には添加物がイッパイなのよ!

小さな子供に凄く悪い影響を及ぼすのよ・・・」と


ベジタリヤン=健康主義!と言う公式が見事に当てはまる女である。


今日子が興味を持たない訳が無かった・・


「今度、お友達を集めて添加物の勉強会を開くんだけど・・

あなたも良かったら参加しない??」


今日子は二つ返事でカマキリの申し出に承諾した・・


それが・・今日子の不幸の始まりだとも知らずに・・・


数日後・・今日子はカマキリの群れに単独で突入する事になる・・


人生は辛すぎて私の手には負えない。