地獄の扉は開かれた・・ | 僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死んで・・生まれる日までの記録

「誠さんごめんなさいね!この子は本当に世間知らずな娘なの・・

あなたに迷惑をかけるかもしれないけど・・この子の事をよろしくお願いいたします・・」


誠の手を握り老婆は涙を流しながらそう呟いた・・・


「ふぅ~また・・あの夢か・・・」


誠は額にイッパイ汗をかきながらダルそうに起き上がる。


横には4歳になる娘の葵と妻の今日子が川の字になって眠っていた。


彼の名前は坂本誠と言う。大手の食品メーカーの営業をしている。


彼は小さい時から両親とソリが合わずに18歳で高校を卒業すると今の会社に就職したのをきっかけに家を出た。


それから17年・・それなりに苦労もして来た。そして、営業畑が長いせいか人あたりが良く誰とでも直ぐに仲良くなれるタイプの男である。


それと反対に妻の今日子は人付き合いが悪い・・


いや・・悪くは無いのだと思う・・


誠から言わせると人付き合いが下手な女であった。


誠は冷蔵庫から冷たい水をコップに注ぎ一気に飲み干し呟いた・・


「これで・・あの夢を見るのは何回目だよ!

っつたく・・まさか本当に世間知らずだとは思わなかった・・・」


まさか本当に世間知らずだとは思わなかった・・・


それは妻の今日子の事である。


最近、誠は口癖のようにこの言葉を呟き・・・


そしてビデオのリピートのように同じ夢を見ている・・


人付き合いの上手い誠に比べて今日子は本当に下手であった。


ただ、何が最悪かと言うとその事に今日子自身が気が付いて居ないと言う事だ・・


若い時から何時も逃げていたらしい・・


人間関係がおかしくなると直ぐに職場を辞めてしまう。


自分と気が合う特定の友達としか付き合わない・・


何時も逃げてきたせいなのか?今日子は初対面の人間とどう付き合うべきなのかその術を知らなかった。


そんな彼女が誠と結婚したのが今から5年前の事である。


当時、誠は35歳で今日子は30歳であった。


2人はお見合い結婚なのだが、その時も今日子は就職はしておらずアルバイトをしていた。


実家は裕福で暮らす事には困っていない。


だから、金銭感覚も長く1人で暮らして来た誠とは大分違う。


金は無くならない物・・・幾ら使っても・・・


その言葉を聞いた瞬間に誠は今日子から通帳を取り上げたくらいである。


ただ、今まで逃げて来た今日子であったが、娘の事に関してはそうはいかなかった。


子供が生まれ、初めての公園デビューも失敗した。


ママ友が出来ない訳では無かった・・・


いや・・友人を作るのはかえって誠よりも上手いのかもしれない・・


しかし、何時の間にかその友人は消えていく・・

実に不思議なくらいに消えていく・・


娘が3歳になりワンパクキッズと言う市のサークルに参加し始める。


そこでも最初は多くのママ友を作るのだが何時の間にかお弁当を1人で食べている有様だ・・


それでも、娘が幼稚園に入園するまでは良かった・・


なんだかんだと逃げられたからだ・・


しかし、今年の4月に娘の葵は幼稚園に入園をする。


それが今の誠にとって一番の悩みの種であった。


あいつは・・上手くやって行けるのだろうか?ママさん達と・・・


そして、その不安は次々と的中して行くのであった。


このお話はそんなカッパとあだ名を付けられた今日子の奮闘記である。