伊豆仁田・大場駅 | 僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死んで・・生まれる日までの記録

伊豆仁田のホームが見えるとそこに黄色い帽子がうじゃうじゃ見えた・・


いや~な予感・・


通常なら小学生の遠足は次の電車のはずなのだが・・・


幸いにも隣の車両に彼らは乗り込んだ。


途端に隣の車両が騒がしくなり数人の乗客が迷惑そうに私達の車両に逃げ込んできた。


皆、渋い顔をしている・・


でも、仕方が無い・・


なぜなら、それは全ての大人が通って来た道だからだ・・


何十年か前・・


こんな私も車内の大人に渋い顔をさせた1人なのだから・・


しばらくすると私の前の席の彼女の前に1人の少女が立っていた。


3年生??いや・・2年生かもしれない。


少女は心配そうに何やら彼女と話しをしていた。


そして、可愛らしい天使の微笑を1度、彼女に見せた少女は自分のポケットから何やら彼女に手渡す。


少女が立ち去ると彼女は、右手に握られた丸いガラス玉を自分の顔の前に持って行く・・


あ~ビー球か!小学生らしい・・


そのビー玉を彼女はまるで、少女のように覗き込んでいた。


私はまた、彼女を見つめている変なオヤジだと思われていけないので寝たふりをした。


そして薄目を開けて彼女を見つめる。


無邪気な笑顔・・・


こんな無邪気な笑顔をする女性を泣かせた訳とは???


原木で乗り込んで来たあの夫婦との関係は???


私は無性にその理由が知りたくなった。


なぜに?彼女は泣いたのだろう??なぜに・・


私は基本的に他人に無関心である。


なぜなら、他人の理由を知っても所詮はどうこうなるわけではない。


私には関係が無いからだ。


それに、年を取るごとに厄介な事からなぜか逃げたがるようになった。


だから、「相談があるんですけど・・」なんて部下に言われると内心、面倒だと呟いていた。


伊豆仁田を過ぎると直ぐに大場駅に到着する。


もう、この辺に来ると田んぼや山などは全く見えなくなる。


ある意味、都会とでも言うのだろうか??


住宅も多くなり乗ってくる人数も大分、増えてくる。


彼女の横のドアが開き一組の老夫婦が電車に乗り込んで来た。


年は65歳くらいだろうか?背中には大きなリックサックを背負っている。


彼らは彼女の前に大きな荷物をドスンと置いた。


そして何やらしきりに呟いている・・


すると、彼女が立ち上がり席をその老夫婦に譲った。


しかし、彼女の顔は笑顔ではなく・・


よわったな・・見たいな何とも渋い顔をしていた。


彼女はそのまま自分の鞄を持って私の隣の席に座った・・


なんとも言えない甘い香り・・


先ほどの韮山で乗って来たミサとは違い上品な香りが隣からした。


私は少しだけ緊張した顔をして隣の彼女に軽く挨拶をした。


彼女も私に何ともバツが悪そうに軽くお辞儀をした。


2人の間にあった微妙な距離が無くなった瞬間・・・


今までに無かったお互い同士のぎこちなさが生まれた。


私はどうして良いか解らずにただ、目を閉じて寝たふりをした。


本当は彼女にハンケチを返すのはこのタイミングだったと後で後悔をした。


私はどうも抜けている・・・


電車は大場を出発して南二日町の駅に向っていた。