臨時電車「特急 踊り子号」(今日子編)№2 | 僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死んで・・生まれる日までの記録

なんとも怒りが収まらない・・・


人のスカートの中を覗きやがって!この変態オヤジ!


そう叫びながらあいつの顔にビンタでも一発入れてやったらどんなに気持ちが良いだろう・・


相変わらず、私の斜め前の巨漢の男は食べ続けている。


ハンバーガーは終ったようで今度はおにぎりを袋から取り出している・・


見ているだけで胃がムカムカして来る。


そして大きく出っ張ったお腹に食い込んでいるサスペンダーもなんとなくムカツいた。


電車は大仁の駅に到着をしようとしていた。


駅に着き、ドアが開くと大勢の人間が車内に入って来た。


一番最初に中に入って来たサラリーマン風の男が一瞬、私を睨みつける・・


どうやら、この席は彼の指定席のようである・・


そう言われても正直、困る。


どうせなら、早朝だけ椅子に名前でも付けていてもらいたい物である・・


それが無理なら、せめて、自由席を作ってもらいたいと・・


彼の私を睨みつける目を見ながらそう感じた。


彼は不機嫌そうに私の斜め前の例の巨漢の男の隣に座った。


それと同時に・・


「ゲップ!ゲップ!!」と何とも下品なゲップを彼がしたものだから・・


私を睨みつた以上に彼はその巨漢の男をもの凄い形相で睨み付けた・・・


電車は田京を過ぎて伊豆長岡に到着しようとしていた。


駅に着き、ドアが開くと一組の若いカップルが乗り込んで来た。


奥さん方がお腹かが大きくどうも臨月まじかのようであった。


ドアを挟んだ私の隣のシルバーシートに彼らは座ると心配そうに彼は彼女に囁きながら・・


自分の上着を彼女の肩にかけてやっていた。


男の優しいさ・・か・・


ふと、忘れようとしていた「一身上の都合」が脳裏をかすめた・・・


忘れようと頑張っていた・・一身上の都合が・・


すると突然に前に座る変態オヤジが大粒の涙を流し始める・・


周りの乗客達は唖然とした顔で彼を見つめた・・・


私は無意識に手に持った文庫本を横に置くと立ち上がった・・


そして彼に自分のハンケチを手渡しながら呟いた・・


「あんた・・情けないわよ!」と


なぜに私は彼にそんな言葉を言ったのか自分でも信じられなかった・・


その光景は本当は優しい女性が泣いている男を気遣うと言う何と言えない美談な筈だったのに・・


私は大きな声で言ってしまった・・


「あんた・・情けないわよ!」と


彼は涙を流しなら何も言わずに私からハンケチを受け取った・・・


そして目から溢れる大粒の涙を拭った・・


私は何事も無かったように自分の席に戻りまた、文庫本を読み始める・・


自分はなぜに彼にあんな言葉を言ってしまったのか???なぜに・・


あ~そうだ・・きっと・・彼に向けて私が発した言葉は、自分自身に言った言葉だったに違いない・・


「あんた・・情けないわよ!」


そう・・上司との不倫の末、捨てられて会社を追われるように去らなければいけなかった・・・


私に向かっての言葉だったのかもしれない・・