牧野郷駅 | 僕が死ぬ日・・生まれる日

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僕が死んで・・生まれる日までの記録

修善寺の駅からこの牧野郷の駅まで殆ど、距離が無い。


そうだな~時間的には5分位だろうか???


正直、何時も私は思っている・・


この駅は何のために作られたのだろう??と


車なんか全然、走っていなかった時代の名残なのか???


修善寺に行くにも次の駅の大仁に行くにも何とも中途半端な場所である。


駅の周りには数件の農家の家しか存在していない・・


彼らのためだけにもしも、この駅が作られたのならなんとも贅沢な話である。


もちろん、この牧野郷と言う駅は無人駅である。


私は修善寺に越して来て16年になるが初めて無人駅と言う物が本当にあるのだと知った。


この牧野郷の駅のおかげで・・


電車は牧野郷の駅に到着する。ガガガガ・・・ッと大きな音を立ててドアが開く。


もちろん、乗ってくる人間など居る訳もない・・


いや・・失礼・・1人居た。


何時も私が座っている席の斜め横のドアから現れる巨漢の男・・・


夏などは顔に溜まった汗を忙しくハンケチでふき取りながら電車に乗り込んでくる。


そして彼は何時も決まって私の席の斜め向かいのシルバーシートの少し大きめの席にドシンと座る。


さぁ~彼が座ったら電車は出発だ!そう私が思っていると彼の後を追うように一人の女性が乗車して来た。


車内に何とも言えない常連だけが感じている何身勝手な不機嫌な空気が流れる。


巨漢の彼はそんな事などお構い無しに何時ものように手に提げたコンビのビニール袋をあさり出す。


白いワイシャツにサスペンダーのいでたちは、私がこの電車に乗り始めた15年前から変わらない。


初めて彼を見た時に私はアメリカの漫画のキャラクターを思い出し苦笑いをした・・・


それから15年・・


毎日、彼は電車に乗ると朝からよくもそんな物が食べられるものだと感心する位の食欲を私に見せつけてきた。


今朝はハンバーガーのようである。口の周りにケチャップとマスタードいっぱいつけながら・・


大きな口をあけて美味しそうに彼はハンバーガーを食べ始める・・


彼の真向かいに座っている白髪の作業着を着た男性が嫌そうな顔をして顔をしかめた。


それでも彼はお構い無しに袋から今度はおにぎりを取り出し・・


右手に持ったペットボトルのジュースを美味しそうに飲んだ。


あっ!そうだ・・忘れていた。そうそう・・彼の後に乗って来た女性の話だ・・


長い髪に少し痩せた顔立ち・・服は紺色のスーツを着ている。


何とも牧野郷の町には不似合いなそんなキャリアウーマン的な女性であった。


初めて見る顔に全ての常連達が違和感をむき出しにしている。


実にくだらない事だが・・田舎の風習とでもいうのだろうか??


土地の者、以外の人間をなかなか受け入れられない風潮がまだ、残っているようだ・・


そんな私も彼らの中で違和感を感じなくなるまで3年くらいかかったのだから・・・


彼女はそんな空気など感じて居ないようで・・・


私の前の席に座ると鞄から一冊の文庫本を取り出すと読み始めた。


有川 浩 「阪急電車」


私の好きな作家の1人である。


有川 浩と言う作家を皆さんは知っているだろうか??


私は最初、彼を男性だと思っていた。


彼女が書く甘、甘の恋愛小説を読んで・・


こんな話をよくも男が書けるものだと尊敬をした。


実に女性的な目線で甘、甘、の恋愛話を進めて行く作風は、賛否両論、別れが私の壷には見事にはまっていた。


阪急電車とは結構、良い本を選んでいる・・


それは私の勝手な主観であるが・・あの本が彼女の中で一番、面白いと私は思っている。


それが私と今日子との初めての出会いであった。


列車はもう直ぐ、3番目の駅の「大仁駅」に到着しょうとしていた・・