決意 | 僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死んで・・生まれる日までの記録

義明はそう叫ぶとドシンと大きな音を立ててカウンターの席に腰掛けた。


「小雪!皆に好きな物を飲ませてやれ!」


そう言いながら彼はズボンのポケットから札束を無造作にテーブルに置いた。


静まりかえる店内・・


誰も義明の言葉に反応しない!


「何だ!お前ら!俺がせっかくご馳走してやる言ってるのに!」


不機嫌そうに義明はそう叫ぶ!


「何だ!お前ら・・俺が親切に・・」


そう言いかけた時に一人の常連客が言った・・


「そんな金で酒なんか飲めないよ!」と・・・


「何!俺の金では酒が飲めないって言うのか!」


「ああ・・だってその金は、悦子ちゃんの残した金だろ!

お前・・何をやっているんだ!何を・・」


店に居た全ての客が同じ思いでいた・・・


「何だ!何だ!お前ら!辛気臭いな!

俺の金をどう俺が使おうと関係ないだろ!

おい!小雪!酒を出せって言っただろ!」


女将の小雪は義明を睨みつけながら言った・・


「その金の重みをもっと感じなよ!

あんた、逃げてばかりじゃどうにもならないよ!

お酒は何もしてくれない・・

全てを忘れさせてくる訳がないのだから・・

あんたが今、やらないと行けない事・・

悦子が残してくれたお金の意味をもう一度、考えなよ!」


「何もわかって居ないくせに!俺の気持ちなんか・・

何で悦子が死ななければいけなかったか・・

お前らには何にも解って居ない!」


悲痛な顔で義明がそう呟いた・・・


「皆・・解っている!

何で悦子さんが死んだのか!

皆・・解っている!

そして、あんたが手にしているお金が何処から出たのかも・・

皆・・解っている!

だから、皆があんたを応援しようとしているんだ!

だから、あんたは逃げていけない!

悦子や生まれてきた坊やの為にも・・

そしてあんたを応援してくれている皆のためにも・・」


小雪のそんな言葉に義明は涙が止まらなかった・・


町の厄介者だった義明・・


自分でも皆から嫌われている事は十分過ぎるほど解った居た。


自分の妻を泣かせ酒に全て逃げ来た自分の弱い心も全て解っていた・・・


「皆が・・俺を応援してくれているって???」


義明はそう呟きながら周りを見渡した・・・


そこに居る全ての人間は貧しい人間であった。


自分の家庭を守るだけで精一杯の人間達であった。


そんな彼らが笑いながら言った・・・


「そうだ!あんたは1人でない・・」と


義明は自分の愚かさを悲観しながら大声で泣いた・・


その泣き声は何時の間にか・・


自分が多くの人間に支えられていると言う安堵の泣き声に変わっていた・・・


「ありがとう!俺、悩んでいたんだ!マジで・・

息子を引き取るよ!そして、山田屋の連中を見返してやるような男になる・・」


「そうだよ!義明さん!悦子も天国で応援してる!絶対に・・」


小雪のそんな言葉に止まったはずの涙が再び流れ出す・・・


義明は再び札束を小雪に手渡し言った・・


「小雪さん!これで皆にお酒を出してあげてくれないか!

悦子が言ってるんだ!私の旦那を頼みますって・・・

これは悦子からの皆への感謝の気持ちだ!」


そんな義明の言葉に悦子は微笑みながら・・


「わかったよ!」と言った・・


その晩、小雪の店で大宴会を行われた・・・


それは義明にとって最後のお酒であった。


「次に俺がこの酒を飲む時は・・

山田屋の連中と同じ位置に登りつめた時だ!」


義明はそう叫ぶと最後の酒を飲み干した!


次の日、彼は山田屋に電話を入れる・・


決まっていた就職を断るためだ。


山田屋の担当者はあっさり承諾をした・・・


今、俺はゴミだ!その辺に転がっている見向きもされないゴミなのだ!


でも見ていろ!何時かそんなゴミがダイヤモンドに変身してやるからな!


義明は電話を切りながらそう決意をするのであった。


その日から長い長い・・彼の復讐と言う名の戦いが始まったのである。