悦子の葬式が終わりやっと一息ついたのは悦子が死んで5日後の事であった。
しかし、義明はのんびりもしていられない。
考えることが山のようにあった。
しかし、今まで適当に生きて来た彼にとって決断をすると言うことは苦痛であった。
何かを決めると言う事が怖かった。
しかし、のんびりもしていられない。あと2日後には晃をどうするか病院に連絡をしないといけない。
「う~~ん!なんか頭がすっきりしないな!」
義明はそう呟くと台所に向った。
禁酒を決意した夜に彼は家の中の全てのお酒を処分した。
したがって家の中にはお酒は一本も無いはずである。
しかし、人間とは実に愚かな生き物だ。1度、飲みたいと思うとどうしても飲みたくなる。
台所などに一度も立った事が無い義明であった。
彼は台所の全ての棚をあさり始める。
すると水場の下の棚の中に悦子が料理用に買っていた日本酒を発見した。
ポン!
彼はその日本酒のふたを開けて鼻を近づけ匂いがかいだ・・
大丈夫だ!良い酒だ!
心の中でそう呟く・・
そのまま一升瓶を抱え居間に向かい湯飲み茶碗を棚から取り出すとドスンと腰を下ろした。
一杯だけ!一杯だけ・・頭をすっきりさせる為飲もう!一杯だけ・・
そう何度も自分に良心に語りかける。
トクトクトク・・・
なんとも美味そうな音を立てながら日本酒が茶碗にそそがれた・・
「美味い!」
義明は思わずそう叫んだ!
しかし直ぐに茶碗はからになってしまった・・
もう一杯だけ・・もう一杯だけなら大丈夫だろ・・・
そう呟きながら再びお酒をついだ・・
人間とは何て弱い生き物なのか??
本当に・・・
それから数分後・・・
彼は本格的に飲み始めていた!
「どうせ!1人なのだから!良いか!」
そんな言葉を呟きながら・・・
1時間後、一升瓶の中身がからになる。
しかし、まったく彼は酔っていなかった・・・
「なんだ!もう無いのか・・
飲み足りないな・・小雪にでも行くか!」
そう呟くと彼は立ち上がろうとした・・
ドスン・・・・・・・・
その途端、彼は大きな尻餅をついてしまった・・
意識はシラフ以上にはっきりしているのに・・
体は完全に酔っ払っているようである。
彼は一升瓶の瓶を杖代わりに立ち上がる。
そして引き出しから例の封筒を取り出すと適当に数枚の一万円札を抜いた。
義明の家から数十分離れた場所に彼の馴染みの飲み屋がある。
いや・・馴染みとは言えない。
彼はそこしかもう飲む店が無いのだ。
この町の全ての飲み屋から出入りを禁止されたのだから・・
その飲み屋を「小雪」と言った。
もう、30歳は過ぎているのだろうか??
そんな年恰好の女性が経営をしている。
女将の名前は店の名前、そのままの「小雪」と言った。
小雪は何処にも入れない義明を哀れだと言って一回、コップ2杯だけと決めて彼にお酒を出してくれる。
しかし、それは小雪の優しさでは無かった。
小雪と義明の妻、悦子は友達であった。
悦子が彼女に頭を下げて頼んでいたのだ!
「うちの人、何処も飲ませてもらえないみたいなの・・
迷惑はかけないから・・少しだけ飲ませてあげてよ!」と
そして悦子は小雪と会う度に少しばかりの金を渡していた・・
「俺にはツケで飲める店があるんだ!」
何も知らない義明は何時もそんな戯言を呟いていた。
どんなに悦子が面倒を見てくれていたかも知らずに・・
「よう!小雪!一杯、飲ませろよ!」
彼は店のドアを開くと偉そうにそう呟いた。
義明は完全なその時、酔っ払いに変身していた・・・
「あんた・・お酒は止めたんじゃないのかい??」
そう彼を睨みながら小雪は呟く・・
「か・・金ならあるんだ!皆にもおごってやってくれ!
今夜は派手に飲み明かそうぜ!
この店で一番、高い酒を持って来い!」
義明は上機嫌にそう叫んだ・・・・・
なんとも愚かな男である・・