あと、何回? |  お転婆山姥今日もゆく

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 人間未満の山姥です。
 早く人間になりたい。

10月のこと。

誕生日当日、娘から祝のLINEと、問い合わせが来た。

 

  

 

私の返事が訛っている( ̄▽ ̄;)。

 

この後も何回かやりとりがあった。なんでも金曜日に休みを取るのだそうだ。

金曜日なら私は検査と通院日である。出かけるついでに足を延ばせると思った。

 

娘はきっと誕生日を祝ってくれるのだと思う。

「何か食べたいのある?」

 

作ってくれるようだ。ということは、あのマンションの部屋で景色を見ながらということになる。

途端に私は元気になる。

娘が作るものなら何でも嬉しいが、娘と息子は小さい頃から私の誕生日と母の日には、カレーを作ってくれたものだった。

幼い兄妹でああだこうだ言いながら作ってくれるカレーは、市販のルーと野菜と肉で、子供のすることだから何か特別な事はしていないのだが、いつもとても美味しくて、どこに行っても食べられないとっておきのものであった。

 

そんなことを思い出し

「カレーかな」

と答えると

「わかった」

昼前に来てというから朝一の診察と検査にかかる時間を考えると丁度良い。

 

当日。

無事にマンション近くまで来て、連絡すると

「ドラッグストアで待ってて」

 

そこで落ちあい、買い物をした後、

「停めたついでにちょっとそこまで」

とすぐ向かいの小さな茶店に連れていかれる。

 

美味しそうなケーキが並んでいる。

 

「持ち帰るから好きなの選んで」

と言われる。

「Tさんの分も選んでよ」

と言われたが、そこまで気を使わなくてもいいよと言った。

 

「そうなの、じゃウチらは・・これとこれ」

 

車に戻り、マンションの来客用に停めて部屋に行く。

ワクワクと嬉しがっている。

玄関を入ると、飾り棚に可愛いのが置いてあった。

 

     

 

ムコ殿が出張の時に買ってきてくれたそうだ。

 

「いつも何かしらお土産買ってきてくれるよ」

と猫好きの娘は、これが特に嬉しいと言う。イイネイイネ。

 

リビングは相変わらずこざっぱりで、おおお、三方向の景色が!!!

 

娘はキッチンに立ち、お昼の支度をしてくれる。

ややあって出されたのは、昨夜から仕込んだ「バターチキンカレー」。

 

    

 

    


コールスローもスープも全部手作り。私は前日焼いておいたパンを持参したので、それも添えてくれた。

バターチキンカレーはずっと気になっていたが、作ったことは無いので、キィキィと嬉しがっていただく。なんたって、気のきいたカフェのランチのようではないか。

 

カレーはほんのりスパイシーだが辛くはなく、コクがあって非常に美味しい。

娘はパンを千切ってカレーにつけて食べ、

「パン、美味しい。これメープルシロップ使ってる?」

「うん、香りづけに」

「美味しいよ、パン」

「カレーが美味しいからだよ」

と母子で称賛し合う、バカ親子である。とても人様の前では・・・。

 

お喋りしながらゆっくりとしたランチ。娘は結婚以来太る一方だがムコ殿は太らない。

「お腹弱いからね」

その違いは大きいと思う。

 

少ししてから、いつもの場所へ買い物に行き、他はぶらつかずまたマンションに戻った。

丁度15時である。

 

買ったものをガサガサとシェアし、ヤレヤレと椅子に座る。

とにかくこのロケーションが癒しなのだ。

住んでいる方は慣れてしまうらしいが。

 

コーヒーのいい香りがして来て、テーブルに置かれた。

       

       

 

♪はっぴばーすでぃとぅーゆー

アハハと、歌いながらである。

 

なんと幸せな事。

この時の私は、まだ老犬の介護と死に伴う疲れが残っていたが、この日はそれも忘れた。

ふと、自分が元気で、あと何回こうして祝ってもらえるのか、頭をよぎったが、いやいやそういう事は考えなくていいとも思った。

 

来月の娘の誕生日はどうしようかな、と、それが楽しみである。

続く12月の息子夫婦の結婚記念日と翌日の息子の誕生日も、何かしたい。

母親として子供たちがどれだけ大きくなっても、祝いたいのだ。

 

夫がかつて話していたのだが、彼の母が、がんの末期でもう自力で起きていることも叶わなくなった時、息子の誕生日にはせめて家にいてやりたいと、無理に一時帰宅したそうだ。

それでもどうしても具合が悪く、ごめんねごめんねと泣きながら、病院に戻ったそうだ。

母と息子が、どれだけ切なかっただろうと、想像しても結局私はまだその域ではないのだと、自身の幸福を大切にしたいと改めて思った。