お医者さんごっこ |  お転婆山姥今日もゆく

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 人間未満の山姥です。
 早く人間になりたい。

 

 

息子と娘はガチのポケモン世代である。
ゲームボーイでピコピコから始まり、「ミュウツーの逆襲」なんて映画までわざわざ見に行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なので、まさかとは思ったのだが、一応子供たちに聞いた。

「アンタたち、ポケモンGO・・・」

ふたりとも最後まで聞かず、シレーっと
「フン」
「まさか」

現実社会の荒波に揉まれていれば、バーチャル世界のお宝を探したいと思うかもしれないが、
夢はあるが叶えるのは自分だ。
このところの現実、特にも築100年の現実に、打ちのめされている。

娘が古びたぬいぐるみを見て
「アレ、どうしたの」
と聞いた。

 

 

 

 

 

 

 

ワタシが縷々説明しながら
「犬だと思ってたんだけどみんな熊じゃないかっていうのよ」
「熊だよ」
「犬だと思って、首に縄つけて散歩してたんだよ」
「今ならそんな犬もいるかもしれないけど、昔なんて犬は大した種類もなかったでしょうよ」
「熊なのか・・・チロって名前も付けてたんだけど」
で、ワタシは思い出して言う。

「アンタはピカチュウだったもんね、今もあのピカチュウ・・・」
「あるよ」

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娘が5歳のとき、ある病気で半年の間に2度も手術を受けた。

療養中の慰めにと猫のぬいぐるみをお見舞いにいただくと、たいそう喜んで肌身離さずにいた。

当時はポケモンが大流行した頃で、退院して間もない誕生日にはピカチュウのぬいぐるみを欲しがった。

病み上がりの娘がある日昼寝をしていた時、わたしは面白いものを見つけて笑った。

ピカチュウが小さな布団に寝かされている。布団は娘に頼まれて作ってやったのだが、ピカチュウの額には折ったティッシュが載っていた。

幼い字で張り紙があった。

「かんじゃのなまえ」 ピカチュウ

「しゅじい」 まり(自分の名前)

「ねつ、にゅういん、てんてきちゅうです」



自分の経験を思い出してやったのだろう。

元気な時は友達と毎日走り回っている子だったが、しばらくガマンの日が続いた療養中、ひとり紙に書きながら何を思ったのだろうか。

形あるもの、手で触れてわかるもの。
小さなピカチュウのぬいぐるみは、いつも娘の近くにいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピカチュウは色褪せもせず、大学に入る時東京に連れて行かれ、卒業後一緒に戻ってきた。嫁に行く気は全くないそうだが、どこかに行くときは絶対連れていくんだろうなと思う。