40年以上の闘病生活で感じた〝人間という奇跡〟(柳澤桂子×永田勝太郎)~2015年12月号~ | 致知出版社公式アメーバブログ

 

 

 

 

 

 

人生の半分以上を病と共に生きてきた生命科学者の柳澤桂子さん。長い闘病生活の中で自らの死と生命に向き合い続け、『生きて死ぬ智慧』など数々のベストセラーを世に送り出してこられた柳澤さんに、これまで歩んできた道程で得た“人間としてもっとも大切な教え”について語っていただきました。対談のお相手は、医師の永田勝太郎さんです。

 

 

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■突然の病、闘病の苦しみ

〈柳澤〉
私が38歳で子宮内膜症を発症したのは、ちょうど実験でいろいろな結果も出るようになって仕事が面白くなってきた矢先でした。

 

手術をするほかないと言われてお腹を切ったのですが、この病気はメスと相性が悪いんですね。メスを入れたために他の病気が誘発されて、体がガタガタガタガタと崩れてしまったんです。

 

 

〈永田〉
その頃はどういう症状でしたか。

 

 

〈柳澤〉
手術後、3週間休んで出勤し、子育てをしながら仕事を始めたのですが、3か月目から嘔吐や下痢が激しくなって、みるみるうちに衰弱していきました。

 

発作は1か月に1度起きました。めまい、嘔吐(おうと)、頭痛があり、しかも脱力感で起きていられない。ご飯も喉を通らない。それが毎日続きます。次の1週間は床の中で起きられる。次の1週間は起きて近くを歩ける。次の1週間は無理をすれば何とか会社に行ける。そして次の1週間はまた発作です。あまりにも気分が悪くて、車での出勤もできませんでした。

 

ところが、病院の先生はそのことをなかなか分かってくださいませんでした。言いたい放題おっしゃる方もいて、それはもう聞いていられないような……。

 

 

〈永田〉
要するに「気のせいだ」というようなことを言うわけですか。

 

 

〈柳澤〉
そうなんです。「子宮を摘出したことによる女性喪失感が引き金となって勤務が辛くなり、そのストレスから腹痛を起こして……」といったように、どんどん話をおつくりになる。

 

私は研究をしたいからやっているのであって、お腹が痛くなったふりなんかしません。その辺のことが男性の先生にはお分かりにならない。中には「甘やかすな」と上司にわざわざ電話をくださったご親切な先生もいたんです。

 

 

■人間という奇跡を生きていく

〈永田〉
お話を伺いながら感じたことをお伝えしますと、柳澤さんはものすごく大きなストレスを抱えながら生きてこられたわけですね。

 

ストレスによって打ちひしがれることはやむを得ないことだと思います。でも大事なのは、打ちひしがれた中でいかに立ち上がるかなんです。これはレジリエンス(回復力)と呼ばれて、NHKテレビの特集で話題になって何冊も本が出ていますが、残念ながら本質を突いたものはなかなかありません。

 

このレジリエンスという言葉がどこから出てきたかというと、フランクル先生なんですね。先生は強制収容所の中でこうおっしゃっています。「1つの挑戦を持っていることは、どんなことよりも強いことだ。それがストレスを乗り越える力になる」と。

 

 

〈柳澤〉
そうなのですね。

 

 

〈永田〉
人間のストレスの対処の仕方には4つあると言われています。

 

ストレスの原因であるストレッサーから逃げる、ストレッサーと闘う、ストレッサーに諂(へつら)う(過剰反応する)、それからもう一つはストレッサーに従ったふりをしながら従えてしまうというしたたかな生き方で、柳澤さんはまさにそれなんですね。

 

僕の周りにもそういう患者さんがいっぱいいます。20年間白血病を患(わずら)いながら県のシニアの卓球大会で優勝した方、太極拳の師範として人生を謳歌(おうか)している筋ジストロフィーの患者さん。こういう人たちは皆人間という奇跡を生きた人たちだと思います。

 

 

〈柳澤〉
おっしゃるとおりですね。これを少し生命科学という視点で申し上げれば、海の中に漂っていたDNAから、それこそ奇跡的としか言いようがないことですが、細胞というものが生まれるんです。

 

さらに紀元前22億年前と601億年前には地球は全球凍結を体験し、その他に全球炎上というのも起きている。人類は数え切れないほどの困難を乗り越えて、したたかに生き残ってきた存在なんです。こういうことは他の星では二度と起こらないと思います。

 

そのように考えると、私たちが命をいただいて、ここにこうして存在しているということは、本当に奇跡としか言いようがありません。だとしたら、自分の命が大切であるように、他の人の命もまた大切にしなくてはいけない。人間のDNAをいじって人種改良しようなどというようなことは人としての正義に反するし、ましてや戦争などとんでもないことです。

 

私自身、40年以上闘病生活を続けてきて、様々な困難を乗り越える中で奇跡的なこの命の大切さを感じてきました。またそれは病気が私に示してくれた大切な教えなのだとも思っています。

 

 

 


(本記事は月刊『致知』2015年12月号 対談「人生はあなたに絶望していない」より一部を抜粋・編集したものです)

 

 

 

永田勝太郎さんには、創刊43周年記念号『致知』10月号にて、作家の五木寛之さんと対談していただいています

 

 

 

 

◇柳澤桂子(やなぎさわ・けいこ)
昭和13年東京府生まれ。お茶の水女子大学卒業後、コロンビア大学大学院博士課程修了。三菱化成生命科学研究所の主任研究員として活躍中に原因不明の病に倒れ、退職。以来、病床にて執筆を続ける。著書にベストセラーとなった『生きて死ぬ智慧』『いのちの日記』(ともに小学館)など多数。お茶の水女子大学名誉博士。

 

◇永田勝太郎(ながた・かつたろう)
昭和23年千葉県生まれ。慶應義塾大学経済学部中退後、福島県立医科大学卒業。千葉大学、北九州市立小倉病院、東邦大学、浜松医科大学医学部附属病院心療内科科長、日本薬科大学統合医療教育センター所長を歴任。平成18年ヴィクトール・フランクル大賞受賞。著書に『人生はあなたに絶望していない』(致知出版社)など多数。

 

 

 

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