三月の閑話休題です。
2026年3月のテーマ
「人物伝」
でおすすめしてまいりました。
最近は児童書コーナーの伝記まんがのバラエティが豊富で、今月はそこからも書きたい作品がいくつかあったんですが、ちょうど図書館で借りられてしまっていて悩んだ末に方向転換しました。
今の伝記まんがは本当にいいです。
私が子供のころには伝記まんがの対象は"偉人"で、歴史上の偉大な人物というのが基本でした。近現代の人物になってくると、発明家のエジソン、奇跡の人ヘレン・ケラー、白衣の天使ナイチンゲール…日本人なら野口英世。有名な文豪でもそんなに入ってはいませんでした。(通っていた学校や地域の図書館の品ぞろえの問題もあるので一概には言えないと思いますが。)
それが、与謝野晶子や樋口一葉、夏目漱石ら文豪もラインナップに入っていますし、点字を発明したルイ・ブライユ、女性初の医師エリザベス・ブラックウェル、"命のビザ"を発行した外交官・杉原千畝、アップルの創業者スティーブ・ジョブズ、ポケモンの生みの親・田尻智(たじりさとし)などなど…様々なジャンルで足跡を残した人物の伝記が読めます。
現在も存命で活躍されている方のものもあるのが、子供のころに雑誌の"小学〇年生"(1~6年生まであって毎月読んでました。)に時々掲載されていたその時々の有名人の歩みを描いた漫画を思い出します。
(私が覚えているのはムツゴロウさんこと畑正憲さん、マラソン選手の瀬古利彦さん(にからめて裸足の超人アベベもあったような…)、プロ野球選手もチラホラ…。)
子供向けの本ですが、興味を持つ入り口になってくれるので侮れません。
あ、あと、以前に書いたこの記事も「人物伝」のくくりになるので、再度おすすめしたいです。
自分とは違う人物の足跡をたどり、その人物像を想像するのはとても面白いです。
さて、タイトルの件にまいりましょう。先月の閑話休題の後日譚です。
↑ご存じない方はこちらをご覧ください。
運命的な出会い(笑)をした本「ティンブクトゥ」とはどんな本だったのかというお話です。
・「ティンブクトゥ」
ポール・オースター 著、柴田元幸 訳、
新潮社、2006年発行
です。
文庫もあったみたい。(最下段のPick)
飼い主ウィリーに先立たれる老犬のミスター・ボーンズが、二人の生活を振り返りつつその後の「犬生」を模索する物語です。
主人公であるミスター・ボーンズは犬。人間と暮らす中で人間の言葉(英語)を学び、聞き取りは完璧にできるけど発語は肉体構造の壁に阻まれて不可能です。聞き取りができるので、人間社会の約束事や物の名前などはちゃんとわかります。飼い主と一緒に経験した範囲においては。
つまり犬目線で飼い主との絆や彼亡き後の身の振り方について描かれた小説です。
このお話の中で"ティンブクトゥ"という場所は、ミスター・ボーンズには死後の楽園みたいに解釈されています。
「犬生」の大半を一緒に過ごしたウィリーが語っていた場所です。
だけど、私の予想に反して"ティンブクトゥ"は実在する地名でした。
ティンブクトゥ(またはトンブクトゥ)はアフリカのマリ共和国にある地方都市の名前です。
かつては「黄金の都」とたたえられた砂漠の都で、ヨーロッパでは伝説になるほどの栄華を誇っていた街であったため、"ものすごく遠くにある伝説の都"の例えとして"ティンブクトゥ"が使われることがあるのだとか。
この小説の中で、ウィリーは"ティンブクトゥ"のことを砂漠の中にある美しい場所というようにミスター・ボーンズに語るので、今現在の場所としてではなく、"ものすごく遠くにある伝説の都"として語ったのだと思われます。
ウィリーは放浪癖のある詩人なので、文学には詳しいのです。
私が"ティンブクトゥ"という地名を初めて知った、アメリカのコージーミステリー・お茶と探偵シリーズの主人公セオドシアは愛犬家なので、最初は犬が主人公の「ティンブクトゥ」という小説からこの地名を持ち出したのかと考えましたが、そうではなくて文学上の慣例として"ものすごく遠くにある伝説の都"の例えにこの地名を使ってあったのだとわかりました。
("死後の楽園"というニュアンスではなかったですから。)
あー、謎が解けるまで長かった。
それはさておき、「ティンブクトゥ」という小説自体とても面白かったです。
犬目線で見る人間の世界。その中で起きる喜劇や悲劇をミスター・ボーンズは観察しています。
彼が関与して大好きな飼い主の運命を変えられるかというと、それはできません。だけどいつもそばにいて、彼にだって感情がある。ただ見ているだけというわけでもないのです。それに、飼い主のウィリーとミスター・ボーンズは運命共同体です。ウィリーがいなくなってしまった後、ミスター・ボーンズは老齢で自分の運命を切り開かなくてはならなくなるのです。
ミスター・ボーンズがみて知ることができる世界というのはとても小さな世界ですが、その中で学び、感じることを作者は繊細に描き出していると思います。
かつてとある小説で目にした"ティンブクトゥ"という言葉から「ティンブクトゥ」という小説に出会い、読んでみてその言葉の意味も知った。小さなきっかけがつながってこういう本との出会いもあるんだなあ…というわけで、記憶の中に保存してあった"?(はてな)"の種が一つ消えてちょっとすっきりした気分になっております。
そんな自己満足のお話をここまで読んでくださりありがとうございました。
では、来月のテーマの話とまいりましょう。
2026年4月のテーマ
「私の忘れ難きヒーロー」
でおすすめしてまいりたいと思います。
憧れのヒロインについては昨年書きましたが、そういやヒーローは書いてない…と気づいたわけです。
でもヒーローは憧れじゃないのよね。それに数多のヒーローの中でも「私にとってヒーローといえば!」の文脈で出てくるキャラクターって、意外と長年変動がないんです。その辺りも掘り下げつつ書いてみたいと思います。
よろしければ覗いていただけると幸いです。(*^▽^*)




