七月の閑話休題です。

 

2025年7月のテーマ

「旅を感じる本」

 

でおすすめしてまいりました。

 

今回はあえてミステリーを外してみました。

トラベルミステリーはすごくたくさんあって、書くなら"トラベルミステリー"のテーマでやった方がいいくらいだと思いまして…。

それはさておき、旅がモチーフの作品は"非日常"を感じられるのがやっぱり魅力かなと思います。

ファンタジーや時代劇、SFなんかも非日常だし、なんなら小説の物語自体、自分の生活からすれば非日常なんですけど、そういうものと違って旅は自分でもやろうと思えばできるっていうところが身近というか。(物語の中のような旅ができるという意味ではありません。)さあ出かけよう、と行動すれば新しい体験ができるわけですので、情景描写からイメージも膨らむってもんです。

 

では、タイトルの「最近ネット検索で心配していること」のお話にまいりましょう。

この話題、書こうかどうしようかずっと迷っていて、やっと書く決心がついたので今月書くことにしました。

自分の中で何が引っかかっているのかうまく説明できる自信がないので、要領を得ない話になってしまうかもですが、お許しを…。

 

最近スマホでネット検索(Google)したときに、検索結果の一番先頭に"AI概要"なるものが表示されます。

スマホの機種や契約している通信会社、検索エンジン(Google以外)によって違うのかもしれないので、AI概要なんて見たことないという方もいらっしゃるかもですが…。

要は、検索キーワードに関して大体のことをAIがまとめてくれたもの、ってことのようですが、この内容が信用ならんのです。

 

5月に下の記事を書こうとした時に、タペンスの父親の正しい役職名が知りたくて検索したんですが、その際に、AI概要に書いてあることが間違いだらけでした。

 


 

今回の閑話休題でこのことを書こうと思って再度同じ検索をしてみたら、やっぱりおかしい。しかも検索回数を重ねるごとに出す答えが変化していってる!

 

 

「言及されていません」(=記述がない)って、でたのに、その次には、

 

 

「具体的な情報は、作中では詳しく描かれていません」(=記述はあるかもだけど具体的には不明。)になって、(ちょっとごまかした感出てきたぞ。)

 

 

 

タペンスの名前もおかしい。英語読みじゃないでしょ、絶対。

それに「終わりなき夜に生まれつく」はトミーとタペンスシリーズじゃないです。

 

 

 

 

↑これは完全にタペンスの名前間違ってます。

 

↑極めつけがこれ!

 

実際は、カウリイ大執事がタペンスの父親です。

大執事というのは教会の役職らしいです。

("神と教会員に使える者という意味の信徒職"とウィキペディアにはありました。)

いわゆる執事ではない。

しかも、この文脈だと、AIは"父親"の意味をちゃんと理解していないとしか思えません。

そのくせ、情報をそれらしく文にまとめている。

 

そう、AIってそういうもんですよね。今のところ。

(いろんな種類のAIがあると思いますが、ここではネット検索時に情報をまとめて表示するAIのことです。)

 

ネット上の情報を学習して、総合的に情報を文章にまとめて出力しているだけ。

人間にはできない膨大な情報の取り込みをやってのけている点はすごいですが、真偽不明の書き込みや、フェイクニュース、個人の想いや感想が多く占めるネット空間での情報収集って実は全然信用に足るものではないんじゃない?と思ったわけです。

 

今回の私の場合はたまたま、知っている情報の補強情報(しかもすごく細かいこと)を検索しようとしたので、間違いっぷりがすぐに分かったわけですが(そして憤慨したわけですが)、知らない情報について検索して、いっぱいリストが出てきたら、どれから見ればいいかわからない。

そんな時に一番トップにAIが概要を載せてくれてたら、疑わずにその情報を受け入れてしまいそうな気がします。

だからこそ、怖い。

多くの人が私と同じように、疑わずに情報を受け入れてしまう状況に陥るだろうと予想できるからです。

それが心配です。

いっそのことAI概要なんて出さないでくれませんかね。それが一番いいと思いますけど…。

 

多分、「タペンスの父」で誤った情報ばかり出てきたのは、AIの学習範囲がネットの情報であり、クリスティーの書籍の中身を学習できなかったためではないかと思います。

デジタル書籍はたくさん出ていますけど、無料で読めるものは限られているし、果たしてAIの学習に無料で読めるデジタル書籍の内容を取り込んでいるかは分かりません。

また、世界規模で考えてみても、デジタル化されている書籍よりまだされていない書籍の方が多いんじゃないでしょうか。

つまり、本を読むことができないAIとクリスティーの本を何度も読んでいる私とでは、この検索ワードに限っては私の情報量の方が圧倒的に多かったわけです。(えっへん。)

 

ちなみに、AI概要以外に検索で引っかかったページもいくつか読みましたが、タペンスの父の正式な役職名は出てこず(そもそもタペンスの父に関する記述すらなく)、仕舞い込んであったクリスティー文庫「秘密機関」を出してきて書いてあるページを探して見つけました。

と、いうわけで、最後に貼り付けた"カウリイ大執事"に言及しているAIの回答は、ひょっとしたら私の記事から学習した情報かもしれません。(確証もないのに再度えっへん。)

(なんでだろう…AIよりよく知ってたぞってちょっと自慢したくなってしまう。AIにマウントとってどうする!冷静になれ、自分!)

 

皆さんはネットの検索エンジンやAI(チャットGPTみたいなものも含めて)を私よりも上手に活用されていると思いますが、昭和生まれのアナログ大好き人間としては昨今の技術に未だ懐疑的…。

・・・うまく使えてないからブーブー言ってるだけかもしれません。

あと、私が書いているこのブログだって、間違えたことを書いてしまって訂正を入れたことがありますので、AIの間違いをつべこべ言える立場じゃないだろと思わなくもないですが、人間とAIとでは処理能力や記憶量が桁違いなので、社会においてAIの方が信頼度が高くなっちゃうこともあり得ると思うんですよね。(今のところどうなってるのか私にはわかりませんが。)

その分(信頼性が高いと思われているものが)間違った情報を流すのは罪…と考えてしまうのは私が狭量なんでしょうか。

ああ、思考がおかしな方向に行き始めて収拾がつかなくなってきましたので、ここら辺にしておきます。


まとめると、

 

ネット検索のAI概要はテキトーだから信用しない!と私は思っています。

でもうっかり信用しちゃうかもしれないと心配しているので、AI概要が出ないようにしてほしい!

 

というお話でした。長くなってすみません。

 

さて、来月のテーマにまいりましょう。

 

2025年8月のテーマ

「夏×ミステリー」

 

でおすすめしたいと思います。

以前に、「冬×ミステリー」というのをやったことがあって、いつか夏もやってみようと思っていたのと、7月のテーマからトラベルミステリーを外したので、ミステリー欲が高まってしまって…。

夏らしい、とまではいかないかもしれませんが、夏が舞台のミステリーをおすすめしたいと思います。

気が向いたら覗いていただけると幸いです。(*^▽^*)

----------------------------------------------------------------------------------------------
2025.7.25 訂正
教会の大執事という職を勘違いして"聖職者"と記載していました。
正しくは神と教会員に使える者を意味する信徒職だそうで、聖職者ではありませんでした。(ウィキペディア調べ)
謹んで訂正いたします。申し訳ありませんでした。
----------------------------------------------------------------------------------------------
 

2025年7月のテーマ

「旅を感じる本」

 

第三回は、

「深夜特急」(全6巻)

沢木耕太郎 作、

新潮文庫、 1994年発行

 

 

 

 

 

 

 

です。

 

作家・沢木耕太郎さんによる紀行小説で、途中まで新聞に掲載されたのち、1986年に新潮社から本として刊行されました。

1992年に最終巻(第3巻)が出版され、その後文庫で6冊に分けられました。(ここら辺の経緯はウィキペディアで調べました。)

私が持っているのはこの文庫版。

表紙のデザインもかっこいい。

超有名な作品なので、読んだことある方も多いと思います。

大沢たかおさん主演でドラマにもなっていたので、そちらでご存じの方もいらっしゃるでしょう。

 

あらすじ…というか作品説明をば…。

作者自身の旅行体験をもとにした小説で、主人公の<私>インドのデリーからイギリスのロンドンまでバスを乗り継いで行くという旅の模様を描いた作品です。

当初は日本からデリーまで直行便で行く予定でしたが、途中2か所のストップオーバーが認められる航空券を手にしたことをきっかけに、香港とタイのバンコクにも立ち寄ることになります。

"立ち寄る"って書いてるけど、香港からインドのデリーに行くまでの道中にかなりの時間を費やしていて、ここだけで文庫本で2冊分(…単行本だと1冊分かな?)になります。

道中で出会う人々との交流、その土地の文化、食べ物など、たくさんのエピソードが、旅の臨場感たっぷりに語られています。

 

私がこの作品を初めて手に取ったのは90年代。

文庫版が出版されて本屋さんで平積みされていた頃だったと思います。

当時学生だったせいか、周囲にこの作品を読んだという人は割と居ましたし、この作品の主人公のような旅をしてみたいと口にする人もちらほらいました。

作品の刊行された年が1986年なので、小説の元になった作者の旅は80年代前半か70年代後半辺りに行かれたものだと思われます。私が読んだ時点で少なくとも10年は前の旅でしたが、これから香港やインドに行ってもこの本に書かれているような情景が広がっているのだろうと錯覚していました。

 

この小説で描かれている旅は、「バスを乗り継いで陸路で大陸を移動しロンドンまで行く」というものです。

ルートやなんかの計画を細かく決めているわけではなく、成り行き任せともとれる自由な旅。

放浪の旅ではないけれど、バックパッカーの旅と言っていいと思います。

それゆえに、訪れた土地でちょっと立ち止まってみたり、地元の人と交流したり、観光旅行とは違う経験がたくさん書かれています。

 

私自身はこの小説のように外国を一人旅するような勇気はありません。

女一人で外国旅行、しかも観光地とかではないルートをとっていくなんて、怖くて行きたいと思えません。

だけど、いやだからこそ、「深夜特急」で知らない土地のあれこれを読んでほんの少しその経験を分けてもらえたような気分がして、夢中で読みました。

今でも覚えているエピソードが、

"お茶"をアジア圏では"Cha"と発音し、ヨーロッパ圏では"tea"または"te"と発音する。

この発音が変化したときに、ここからはアジアではなくヨーロッパなんだと感じた…というようなお話。

地図上に引かれた線などではなく、体感として文化の境目を感じられるというのは貴重だと思ったのを覚えています。

小説の中では重要でも何でもないエピソードなんだけど、そういった小さな気づきやら主人公の考えたことなんかを読むのがとても面白くて、日常生活では感じられない"異邦人としての自分"というものを作品を通して感じられていたのかなと思います。

 

私が読んでいた頃からはさらに時間が経って、今この小説を読んだ人は、この旅路が昔の風景なんだなとどこかで意識して読み進めることになると思います。

それこそ、時空を超えた旅です。

80年代のアジアからヨーロッパまでの道のりは、今とは違うもののはず。

それでも、文章から伝わる臨場感は変わらないと思うので、80年代の世界を旅する感覚を味わえるんじゃないかと思います。

 

最後に、今回記事を書くにあたって調べていたら、2023年にTBSラジオで斎藤工さんがこの「深夜特急」を半年にわたって全編朗読されたというのを知りました。

なぬー、私が書くまでもなく「深夜特急」が再び注目を浴びていたとは…。

ある程度の年齢以上の方には多分懐かしいこの作品。

読んだことない方にはぜひ読んでいただきたい。おすすめいたします。(*^▽^*)

2025年7月のテーマ

「旅を感じる本」

 

第二回は、

「台湾漫遊鉄道のふたり」

楊双子 作、三浦裕子 訳、

中央公論新社、 2023年発行

 

 

です。

 

台湾の作家、楊双子(ようふたご)さんの小説です。

本の帯には、

台湾グルメ × 百合 × 鉄道旅

とあります。

 

まずはあらすじから。

1938年、女流作家・青山千鶴子は結婚から逃げて台湾に行きます。

千鶴子の小説を原作とした映画が台湾でも上映され、かの地から公演などしてもらえないかと招待されたのです。

食いしん坊の千鶴子は、台湾まで来たからには長期滞在して現地のものをたくさん食べてみたいと台中に腰を据えて台湾各地へと公演に赴きます。

現地ガイドの王千鶴は日本語が堪能で旅行の手配も手際よく、千鶴子の食に対する興味も理解して現地の食べ物を用意してくれる有能な女性です。

この二人で台湾鉄道に乗って各地の現地グルメを食べ、友情を深めていく物語です。

 

この本はもらったものなのですが、正直、帯にある"百合"という言葉から、恋愛小説だとあんまり興味ないんだけどなあ…とはじめは思ってました。

ところが読んでみると、文体はライトノベルのようで読みやすく、確かに恋愛もの…だけども、これを単純に恋愛小説とは呼べないなという、内容になっていてびっくりしました。

(ちなみに、訳者あとがきで楊双子さんの言葉として紹介されている言葉に、"女性同士の友情から恋愛までに及ぶ広範な情感が含まれる『百合小説』"というのがあり、なるほどなあ…と思いました。)

 

上手く説明できるか分かりませんが、そもそもこの小説は戦前の台湾植民地に本土からの旅行者としてやってきた主人公の千鶴子が、現地人の千鶴と仲良くなっていく…という歴史小説なのです。

戦前の台湾の様子、そこで暮らす日本人たちのコミュニティ、現地の台湾人の中にも身分格差があったり、もちろん時代的に男尊女卑が当たり前。

こういった社会背景の中で、千鶴子は男性に頼らない自立した女性と言える立場にあり、一方の千鶴は聡明で日本語も堪能、どこから見ても有能な女性なのに、差別的な扱いを受けています。

千鶴子は千鶴と主従ではなく友達になりたいと思っていますが、千鶴はなかなか心を開きません。

台湾社会の構造や千鶴の生い立ちなどを理解していく中で、少しずつ距離が縮まって、友達らしくなっていくわけですが、この時代の社会情勢や日本人と台湾人の立場の差など、歴史の授業では出てこない内容がたくさん盛り込まれています。

 

また、作者は台湾人ですが、主人公を日本人にして、日本人の側から見た台湾を描いています。

それはすなわち、持っている側(立場が上の人間)から見た世界を描いているのであり、千鶴子は千鶴のことを正しく理解していないばかりか、自分の理解不足に気づかないまま自分が思う気遣いに基づいた行動をしていたりするわけです。

善意からくる行動でも、受ける側からすれば傲慢に見えることもある。

ジェンダーバイアスとはちょっと違いますが、それに近いバイアスを感じることができます。

女性同士の友情(または恋愛)のお話だけれども、差別問題だとか、男尊女卑の問題なんかが背景に色濃くあって、現代の日本でも同じような問題と向き合わなければならないと感じました。

 

また、この時代の女性は親の決めた相手と結婚するのが一般的で、恋愛結婚は少ないわけです。

お相手の男性が自分と合う人かどうかは嫁いでみないと分からない。それまではどんな人なのかほとんどわかってないわけなので、そりゃあ気心の知れた女友達の方が見ず知らずの男性よりも心許せる場合が多いでしょうね、と女性の立場からは思います。

(男性の側も同じことがいえるでしょうが、この時代では立場的に男性の方が強いので、弱い立場の女性の方が連帯感が増す傾向があるのではないかと思っています。)

そういう時代背景が、この小説を『百合小説』たらしめているのだと思います。

私の感想としては、千鶴子はやや恋愛感情に近いように見えるけれど、千鶴はあつい友情といった印象を持ちました。

多分読んだ人によってこの辺りの印象は差が出ると思います。

 

それから、台湾グルメと鉄道旅の描写が、私の好きなコージーミステリーを彷彿とさせました。

当時の資料から再構成された鉄道の旅は、今では行くことのできない場所や見ることのできない景色も描かれていて、時空を超えた旅の情景が味わえます。

台湾グルメも知らない食べ物だらけで、材料や作り方、日本の料理の何々に似ている…などの説明を読んで想像するしかない…。

千鶴子ではないですが、よだれが出そうになります。

 

この本は、グルメ探訪記であり、鉄道旅行記であり、歴史小説であり、立場の違う二人の女性が互いを理解して真の友情に漕ぎ着けるまでのお話です。

様々な要素がこの一冊にギュッと詰まっています。それでいて読みやすい。おすすめいたします。(*^▽^*)

2025年7月のテーマ

「旅を感じる本」

 

第一回は、

「グランマ・ゲイトウッドのロングトレイル」

ベン・モンゴメリ 作、浜本マヤ 訳、

山と渓谷社、 2021年発行

 

 

です。

 

アメリカ南部のジョージア州から北部のメイン州までつながるアパラチアン・トレイル(約3300キロメートル)を146日間かけてたった一人で歩き通したおばあちゃん、エマ・ゲイトウッドの人物評伝です。

いつもならあらすじを書くとこなんですが、この本は小説ではないので本の説明として表紙に書いてある文を以下に載せます。

 

女性初のアパラチアントレイル

スルーハイカーは、67歳の

おばあちゃんだった。

DV夫、11人の子ども、

23人の孫と離れ、

テントも寝袋も持たずに

歩き通した女性の感動の物語。

 

エマ・ゲイトウッドは実在の人物で、全長3300キロメートルのアパラチアン・トレイル(山歩きのための道)を1955年に67歳でスルーハイク(一度のハイキングで全行程を歩き通すこと。)しました。

足には山歩き用のがんじょうな靴ではなくスニーカー、食べ物と最低限の衣類やレインコートなどの装備を詰めた袋を担いで、たった一人で146日かけて歩き通したのです。

彼女がこのスルーハイクを達成した年には、アパラチアン・トレイルの山道は目印こそ設置してあるものの、整備が不十分で寝泊まりするための休憩所・シェルターのいくつかはさびれてあばら家の様だったり、トレイルの途上には高い岩山がいくつも立ちはだかっていて、険しい道のりでした。エマより以前にスルーハイクを達成したのは男性ばかりで人数もわずかでした。

 

彼女がなぜ67歳にして、過酷な山道を何千キロも歩き通してやろうと考えたのか。

どこからそんな力がわいてきたのか。

 

この本を手に取るまではエマ・ゲイトウッドという人物を全く知らなかった私でも、興味は尽きません。

 

作者はエマの存命の子どもたちに会い、日記や手紙を読ませてもらったり、彼らが覚えている母の話を語ってもらったり、トレイルの最中に出会った人からも話を聞いて、彼女が出演したテレビ番組の映像、新聞や雑誌の記事などの資料を集めてかなりの調査をしているようです。

それらの資料に基づいて、エマのロングトレイルの行程を再現するとともに、それまでの彼女の人生や当時アメリカで起きていた出来事、アパラチアン・トレイルの成り立ち、ハイキングの流行なども合わせて語られています。

 

実は、私はこの本を読んでいる途中で、一回止まってしまったんです。一か月くらい間をあけて続きを読み始め、その後は最後まで一気でした。

止まってしまった理由は、DV夫。家父長制の濃い時代と言えばそうかもしれませんが、例えそうであってもはっきりとDV。

スーパーおばあちゃんからやる気を分けてもらおうという気持ちがあったため、若い頃の半端ない苦労につらくなってしまって読めなくなってしまったのです。

エマのすごさを感じたいとミーハーな気持ちで読み始めたことになんとなく後ろめたさを感じてしまったこともありました。

でもこのまま読むのをやめてしまったら、エマのロングトレイルは永遠に終わらないまま私の中に記憶されてしまう…。

それで読書再開に至ったわけです。

やめてしまわないで本当に良かった。

エマがグランマ・ゲイトウッドと呼ばれて尊敬されるようになったのは偉業を成し遂げたからだけど、この本はその偉業のことだけを書こうとしたのではなく、エマ・ゲイトウッドという一人の人間のことを書こうとしているんだなってわかったからです。

 

最後に、エマはロングトレイルを成功させる一年前に、一度失敗しています。

その時のエピソードが、私にはすごく印象に残っています。

成功したトレイルとは逆に、北部のメイン州から出発して南を目指したけれど、一週間でリタイア。

食べ物もなく、眼鏡が壊れて前も見えず、迷子になってレンジャーに助けられますが、その際に、「おうちに帰んな、おばあちゃん。」と言われてしまいます。

この時のエマの心中はいかばかりだったでしょうか。

失敗にめげず、再挑戦した。そして成功させた。

そのことが、自分にも勇気を与えてくれるような気持になるのです。

 

この本は、67歳のおばあちゃんが3300キロの山道を歩き通した孤独な旅の物語であり、彼女の人生の物語でもあり、アウトドア好きな人達がぐんと増えた現在へとつながっているお話でもあります。

アウトドアが好きな方もそうでない方も、エマと共にアパラチアントレイルを旅して、自然の中で心解き放たれる気分を感じてみませんか。おすすめいたします。(*^▽^*)

六月の閑話休題です。

 

2025年6月のテーマ

「かっこいいヒロインが登場する本」

 

でおすすめしてまいりました。

 

ファンタジーや時代小説から選んだというのもありますが、どうしても"戦う女性"が中心になってしまいましたね。

男女平等とはいっても、生物的な肉体の構造からして、一般的に男性よりも女性の方が体格や筋肉量で劣ってしまうというのは変え難い事実です。個別にみれば必ずしもそうでないことはもちろんですが、相対的にみるとやはり認めざるを得ない事実だと私は思っています。

 

また、私個人の話になってしまいますが、正直なところ体格には恵まれていません。

そのため子供の頃から体の大きな相手に対しては力で負けてしまうことを自覚していましたし、ただ大きな人たちに囲まれているというだけで生存本能から恐怖する場合もありました。(満員電車みたいに込み合っている場所では息ができない、つぶされてしまうような気がして…。)

そういったことから、男性に負けないくらい強い、男社会で堂々と生きている女性をかっこいいと思ってしまうのかもしれません。

 

もちろん、"男性に負けない"という表現をすること自体、女性の方が下だと無意識に考えてしまっている…ある種のバイアスがかかっているので良くない、という意見があるということは承知しています。

ここで私が言いたいのは、ファンタジーや時代小説の世界では今私たちが生きている世界よりもずっと原始的(肉体のハンディを克服しうる道具や、便利な機械がない。)であることが多く、暴力によって他者から奪うことが現代日本よりもずっと容易にまかり通ってしまう…肉体的な力があるということがとても有利な世界において、生物的に不利と言わざるを得ない女性が男性を凌駕するには血のにじむような鍛錬と努力が背景にあるはずで、そこにかっこよさを感じるということです。

(説明長くてごめんなさい。あと、SFではテクノロジーがもっと進んでいる場合が多いのでまた違うと思います。)

男性より女性が弱い(あらゆる面において、または男性が認める範囲内において)とは思っていませんが、生物的な肉体の構造をもとにした筋力に関しては、女性が不利だと思っています。

いつの間にかセンシティブな話題になってしまいましたが、「意見には個人差があります。」(by.さだまさし)ということで、そろそろタイトルの話題とまいりましょう。

 

「本が供給過多になっている話」なんですけど、読書家の方々は皆さん必ずと言っていいほど"積読(つんどく)"をお持ちのことと思います。

ここ最近、私の積読が膨れ上がってきていて、ちょっとまずいなと思っているというお話です。

というのも、以前に記事にも書いたんですけれど、昨年末から4か月程の間、もう何度読み返したかもわからないクリスティー文庫を再び読み返しておりまして、その間積読はほぼ放置されていました。

 

 

 

 

で、クリスティー沼を抜け出し、積読の本にとりかかった…はずでしたが、今月また「ダイエット・クラブ シリーズ」を再読してしまいまして、すでにもう4冊目。

こりゃあ、6冊全部読み終わるまでいっちゃうな…と。

そのくせ、普段は本を買うのをセーブしているのに、欲しい本を立て続けに買ってしまい、明らかに供給過多に陥ってしまっています。

私は複数の本を並行して読み進めるのを割とやっているので、再読本の他に初読本も読んではいるのですが、如何せん、「ダイエット・クラブ シリーズ」の引力が強いのです。

買った本の方ももちろん読みたいから買ったんですが、読むなら集中してガーっと読みたい。

でも、「ダイエット・クラブ シリーズ」を一旦置いておいて、そちらに全集中…ってのがなぜかできないんだなあ…。

おかしいなあ…。

こうなったらもう、先に「ダイエット・クラブ シリーズ」を読み終えてしまうのがいいのかなと思っていますが、こんな事ばっかりやっていたら、積読本の山が領土を拡大してしまう。(山自体はなくならないので、我が家の一角に領土として存在…いや点在しております。)

というわけで、積読本との付き合い方に悩む、2025年6月でした。

相変わらずしょうもない一人語りにお付き合いいただきありがとうございました。m(_ _)m

 

それでは、来月のテーマとまいりましょう。

 

2025年7月のテーマ

「旅を感じる本」

 

でまいりたいと思います。

 

以前にもちょっと書いたことあるテーマです。物語の舞台が旅の小説や、旅行記など…。何かの目的のために旅をする途上の物語だったり、旅そのものの楽しさや苦労を語ったり、旅(=日常から離れること)で新たな発見をするお話だったり、"旅"が感じられる本は意外と多いです。

ミステリーでもトラベルミステリーが一昔前には大人気で、ジャンルとして確立されていた感ありますよね。

というわけで、唐突ですが、来月は"旅"をテーマにしてみたいと思います。

積読になっている初読本の世界に旅立ちたい願望の表れなんでしょうか…。

気が向いたら来月ものぞいていただけると幸いです。(*^▽^*)