2023年2月のテーマ
「冬×ミステリー」
第三回は、
「卵料理のカフェ4 あったかスープと雪の森の罠」
ローラ・チャイルズ 著、東野さやか 訳、
原書房 2014年発行
です。
このブログで以前おすすめした、ローラ・チャイルズさんの"卵料理のカフェ"シリーズの一冊です。
ローラ・チャイルズさんの本としては、"お茶と探偵"シリーズもたくさん取り上げていまして、私としては大好きな作家さんです。
さて、あらすじは…アメリカ中西部の田舎町キンドレッドでカックルベリー・クラブというカフェを経営するスザンヌが、猛吹雪の日に店の裏手で銀行頭取の死体を発見します。発見された場所と、被害者がスザンヌに会いに来るところだったということから、カックルベリー・クラブは否応なく事件の渦中に置かれることになります。
折しも町では"氷と炎の祭典"と銘打った、町を挙げての冬の一大イベントが始まったばかり。
パレードや氷の彫刻コンテストなどの催しが目白押しです。
カフェ経営者として町のイベントにも関わりながら、スザンヌ、トニ、ペトラの三人が事件解決のため保安官に協力しようとします。
このお話を選んだのは、冒頭の殺人事件がショッキングで深く印象に残っていたからです。
被害者は店の裏手の雑木林の中をスノーモービルで移動しながら店にやってくるところでした。
新雪を楽しんでいたはずの彼は、木の間に張ってあったワイヤーで首を切断されてしまいます。
ローラ・チャイルズさんの小説の中では、かなり残忍な描写だと思います。
スノーモービルに乗って移動する人がいるというのも、中西部の冬の厳しさを思わせます。
今月のテーマの第一回、第二回でおすすめした本は、トリックの妙だとか、読者の盲点をつくようなミステリーとしての面白さが際立つ作品だったのですが、この作品はあまりそういう部分で際立つとは言い難いです。
被害者は銀行の頭取で厳しい取り立てと貸し渋りで不人気な人物ということもあり、容疑者は定まらず手がかりも集まりません。最後には思いもかけない犯人というのはミステリーの定番ですが、正直、作中の手がかりでそこにたどり着くのは難しいと言わざるを得ないでしょう。
この作品の楽しみは、殺人犯が潜んでいる町という不安が付きまといながらも、冬の一大イベントが行われ、楽しみと危険が隣り合わせているドキドキ感にあるのではないかと思います。
氷上魚釣り大会に参加したり、氷の彫刻を作ったり、宝探しゲームの謎を解いたり、ファッションショーまであります。
そのうえ、カックルベリー・クラブで出される、ペトラのあったかメニューは読んでいるだけで食べたくなること請け合いです。
トニの別居中の夫、ジュニアのとんちきな発明品も笑いを誘います。
吹雪に大雪、冬の厳しい寒さと、ほっこりする食べ物やくすりと笑っちゃう登場人物たちの掛け合いが好対照で、残忍な殺人事件の話なのに、心地よい一冊となっています。
私にとっては冬の寒い日に読みたい作品です。おすすめいたします。(*^▽^*)