2021年10月のテーマ
「イベントを楽しむコージーミステリー」
第二回は、
「お茶と探偵9 ホワイト・ティーは映画のあとで」
ローラ・チャイルズ 作、東野さやか 訳、
武田ランダムハウスジャパン、2010年発行
です。
ローラ・チャイルズさんのコージーミステリーはとにかく作中でイベントが満載なんですが、お茶と探偵シリーズはティーショップでの様々なテーマのお茶会から地元のボランティア団体主催のお祭りのようなもの、地元の名士が多数の寄付を寄せる歴史保護団体ヘリテッジ協会主催の優雅でフォーマルなイベントと、その種類も多様です。
今回は、そのお茶と探偵シリーズの中から、一週間にわたる映画祭が舞台の作品をおすすめしたいと思います。
復元されたベルヴェデーレ劇場で第一回のイベントとして映画祭が開催され、大勢の有名人がチャールストンの街に招かれます。
そのオープニングセレモニーの最中、ハリウッドの映画監督が殺されてしまい、犯人の手がかりを目撃したティーショップオーナーのセオドシアは事件を調べることになります。
映画祭のイベントの一端として、ティーショップではお茶会を主宰し、夜は映画祭で短編・ドキュメンタリー部門の審査をするため劇場で映画鑑賞。華やかなドレスでレッドカーペットを歩いて授賞式にも参加・・・と事件以外でも主人公は大忙しです。
イベントのことを少し詳しく書きますと、映画祭には様々な部門があり、それぞれの部門に審査員がいます。彼らは映画を観て採点するわけですが、地元のお店から寄付を募って審査員用のお土産袋を用意してあったり、採点グッズとして採点用紙とペンだけではなくポップコーンをつけてくれたりと主催者側の気配りがみえます。ちなみに審査員は地元の人たち。映画マニアや芸術愛好家だけでなく、地元テレビ局の人や映像に携わる仕事をしている人、広告業界の人などです。セオドシアはかつて広告業界で働いていたので資格ありと判断されたようです。
採点は集計されて、最終日に授賞式が華々しく行われるというわけです。
セオドシアのティーショップでは、シネマ・ビストロ・カフェと銘打って、映画祭関係者を招いたディナーパーティーを開きます。普段のティーショップからうんと模様替えして、ビストロ形式の立食パーティー。歩道にもテーブルを出し、パリのカフェのようにビロードのロープが付いたセンターポールを並べて道路との仕切りを作ります。壁にはフランス映画のポスターを飾り、料理はティーショップで作ったもの以外に知り合いのビストロからも応援を頼んで豪華に並べ、まるでフランスのビストロのような雰囲気。
また別の日にはティー・フランセと銘打って昼間にフランス風のお茶会を開きます。
こちらは先ほどのディナーパーティーとは違って着席形式の落ち着いたお茶会で、フランス風のクッションを置いたりポスターを飾ったりとお店の雰囲気はフランス風にまとめ、使用する食器やメニューに至るまでフランス風が徹底されています。
余談ですが、私はこのシリーズに登場するお茶会の描写が大好きで、中でもお気に入りは「アリスのお茶会」です。
残念ながら「ホワイトティーは映画のあとで」に登場するお茶会ではないので、この作品を読んでいただいても出会えないのですが、とにかくかわいい。
子供たちを対象にしたお茶会で、白うさぎの形のケーキ、"僕を飲んで"とメモが張られた瓶入りのジュース、小さなティーサンドイッチにスコーン、不思議の国のアリスのモチーフをふんだんにあしらった飾り付け。
毎回毎回、テーマに合わせて徹底した雰囲気づくりをしている様子が細かく描写されていて、憧れが募ります。メニューもこれまたおいしそうなんですよね。
というわけで、今回は一冊まるまる映画祭が舞台になっている作品です。上に挙げた以外にも、授賞式前夜祭のディナーパーティーやら、おしゃれしてレッドカーペットを歩いたりと非日常的なビッグイベントの様子がうかがえるシーンがたくさんあります。
映画祭という非日常的なイベントを本で追体験してみてはいかがでしょうか。おすすめします。(*^▽^*)