初訪。

浜松市最北の天竜区。
区都、二俣の町から、25㎞ほど車で北上すると、
南アルプス南端の山間の集落、春野町がある。

話題になるラー屋としては、
おそらく、静岡で最奥のロケーションであろう。
道は、時に完全に人家が途絶えてしまい、
この先に本当にそんなラー屋があるのか?と、
不思議な気分になる。

店名通りの、小さな町食堂だ。
壁に並ぶメニュー札は、丼物や定食が中心。
肩肘を張らず、取り立てた気負いもなく、
店頭にレモン・ラーの幟が一本翻るのみである。

その、『レモンラーメン』 をデフォで。

すっきりと穏やかな、優しい質感。
スライス・レモンが一枚、シンボリックに載る。

鶏ベースの、極あっさりの醤油スープに、
件(くだん)のレモンは仕込まれる。
酸味のエッジを立たせることなく、
旨味変化のみを享受する為の、繊細なバランス。
刻みタマネギの個性的な風味と清涼感が、
たったひとつだけの主張をしている。

自家製という、中細麺・やや縮れ。
かつて製麺所であったという、この店の麺は、
どこかに 和麺(うどん) の感覚も残した、
本当の意味での “昔麺” だ。

具材は、“煮豚”というべきチャーが2枚。
しっかりとしたガタイで、歯触りの良いメンマ。
それに、海苔が一枚。
本体の方向性に、見事に適った面々である。

直接的で、主張の強い現代ラーとは、
全てが、まさに 「対極」 にあって、
そのギャップには、一寸戸惑いを覚えるほどだ。

しかしながら、
この、奥床しくて繊細なバランス世界を、
すがすがしい南アルプスの風の中で、
心静かに、じっくりと味わうもまた一興であろう。



(レモン・ラーの幟が一本だけ)



初訪。

夏休みの帰省で、千葉(九十九里)へ。
久しぶりの九十九里のラーだ、さてどこにしよう。
携帯サイトで検索すると、
この地区の上位に、見慣れぬ店の名が-。

情報によれば、
富里の人気店 <麺屋青山>出身の店主が、
昨年4月に独立開業した店らしい。
正月にはその存在に気付かなかったから、
きっと最近になってサイトに掲載されたのだろう。

この店のスープは2本立て。
鶏ガラ+豚骨+魚介の、清湯 《淡麗》 と、
鶏ガラ+豚骨+牛骨+魚介の、濃厚白湯 《豊潤》。
とりわけ 《豊潤》 の濃厚さは、
ちょっと類を見ないほどのものらしい。
目の前に 「濃すぎたら薄めます」の文字。

『《豊潤》 味玉らーめん』 を 大盛・麺固めで。

やがて到着。
なるほど、こいつぁ凄い。。
スープは、まさに“液体”と“固体”の中間。
しずくが 「ボトボトッ」 という音である。
脂分は、意外な位にひかえめだ。
多種多様なエッセンス(鶏豚牛魚)が、
見事にひとつに上品に纏めあげられたスープ。

麺は、低加水・ストレートの中太麺。
箸が持ち上がらないほどの、驚くべき重量感。
これほど存在感のある麺もそうそうない。
麺もまた、特筆に値する。

具材も、青山流の逸品揃い。
中まで褐色になるほど、深く漬けられた味玉。
半熟の黄身の鮮やかな黄色がひときわ映える。
肉厚でジューシーな炭焼きのチャー。
思い切って長~いメンマ 等々。

隅々に至るまでの、あらゆるパーツが、
筋の通った高い技術に裏付けられている。
さすが青山系!
見事というほかはない。

思いがけずに、GOODな店を知ることが出来た。



(筋の通った高い技術)



桃山ラー2訪目。湖西店は初訪。

多米峠という、静岡県と愛知県の県境。
その静岡側の麓にポツンと建つこの建物に、
桃山グループの2つの店舗が並ぶ。
まるで、戦国の三河勢力が 「次は遠江」 と睨み、
その第一歩として設けた“砦”の如き様相だ。
別名 「湖西ラーメンセンター」ともいうらしい。

2つ並んだ、向かって右側の店。
去年、ここには <チキンスター> という
実験的(?)店舗が入っていたのだが、
少し前に、本流の桃山支店に変わったと聞いた。
ならば、山を越えずにあのラーに会える!

『桃山ラーメン+味玉』 をデフォで。

他のメニューに心惹かれながらも、
本店と比べてみたく、敢えて同じものをオーダー。

さて、現れたそれは、
本店と比して遜色のない充実のビジュアル。
各素材のクオリティは、本店と全く同じのようだ。
期待の初口!

...あれ?何かが違う。
どこが違うのだろう。 少し探ってみる。

①ひとつは、表面をコーティングするラード層。
熱し方がやや不足なのだろう、
あの、痛いほどの熱々感がなくて残念!
量も少々少なめのようだ。
②次に、麺の湯切りの甘さ。
麺の周囲がやや “水っぽい”
折角の良い麺なのに、これでは勿体無い!
③あとひとつは、背脂の効き具合。
あの絶妙なバランス感がない。。

でもまぁ、これらは、
本店と比べた場合の話であって、
このラーだけ単体で見れば、
結構良い感じの出来であるにはあるのだが。

いや、でもしかーしっ!
この店が、隣国進出への “砦” であるならば、
あと少しの “詰め” を期待してやまない。



(遠州を睨む最前線の砦)