初訪。

浜松で、陳建民直伝の店といえば、
私が知っているのは入野の“四○”であるが、
最近になって、浜北のこの店もそーらしいと知る。
そーだったのかぁ!と、早速車を走らせた。

「総合中国料理店」である。
宴会が出来・個室も完備という大きな店だ。
なかなかの高級店のようで、
黒服のウエイター・ウェイトレスが往き来する。
メニューを開けば、驚くほど豊富な品揃え。
麺類は、全体のほんの一部である。

『担々麺』 をデフォで。

“四○” のそれと、基本的に同様のビジュアル。
鮮烈なオレンジの発色である。
胡麻の仕立て具合は、さすがに見事なもの。
上質な風味のみで構成する技術は、
陳建民直伝の、最も正しい調理法なのだろう。
やはり、さすがと言うほかはない。

残念なのは、胡麻の層が思いのほか薄いこと。
意外なほどすぐ、下の清湯が顔を出す。

たぶん、老若男女全てに受け入れられるように、
ライト感との両立を意図しているのだろうが、
私の場合、「坦々麺を食したい」 イコール
「濃厚な胡麻世界にまみれたい」ということなので
スッキリ要素の混入などは不要なのである。

麺は、加水率高めの中細・ちぢれ。
柔らかめの茹で加減で、弱い印象が否めない。
残念だが、これは期待していたものではない。

“鬼気迫る緊張感”とか“鋭利な美意識”という
アートを求めるには、ちょっと違うイーブンな相手。
まー店が大きくなるほど従業員の数も増え、
どーしたって、レベルの平均化は避けられない。
そもそも、この店のスタンス自体が、
専門的追求者ではなく、大きな総合者寄りだ。

私が求めるのは “総合”ではなく “突出”である。
精神の全てを、一極に集中させた、
研ぎ澄まされた “アート” に出会いたいのである。
やはり、私には個人店の方が良いようだ。



(総合者的スタンスの功罪)



海老蔵 6訪目。

海老蔵の [温麺] は一巡した。
さて、長いこと棚上げにしていた “つけめん” だ。

私は “つけめん” という方法論に
正直、あまり共感するところのない体質である。
冷水でシメた麺 ⇒ 水っぽい麺
熱いつけダレ+冷たい麺 ⇒ ヌルいラー ・・・
むむぅ。。理解出来ん。

でも、“響○屋” のはやっぱ旨いと思うし、
“ヌルい” ことなんかスッカリ忘れちまうくらいの、
他の強力な説得力があれば良いのだ。
海老蔵ほどの店なら、その辺心得てると思うが、
さて、どうであろう。

『味玉つけめん(赤)』 をデフォで。

お~、さすがに美しい。
重厚且つ鮮烈な発色の、つけダレの赤。
山盛り麺の、ワッ!と衝撃的なほどのインパクト。
それぞれに器の色との対比が凄く良い。
質感と量感、申し分のないビジュアルである。

つけダレを、ひとくち。
分厚くて重くて豊潤、海老蔵世界が凝縮。
“赤”ならではの、攻撃的な緊張感のある美しさ。
強く効かせた酸味も大正解である。

タレにを麺を絡めて、ひとくち。
温麺とは全く別趣の、新鮮な感触がひろがる。
香り立ち、ギュッと締まった強力なコシの
カネジン麺の実力が、スゴいほどにダイレクトだ。
タレの中には、相性抜群の具材連。
麺と一体で食せば、その満足度は倍加する。

さて、これほどのクオリティではあるが、
正直、無心になれる境地までは至っていない。
ホンモノであることはわかっているが、
未だ、ヌルく水っぽい “原罪”の呪縛の中にある。

思うに、この原罪を克服するには、
全てを捨て去った、裸の決断が必要であろう。
海老蔵世界の “別Ver.”ではダメだ。
全く新たなものとして一から再構築すべきだろう。

“温麺”と “つけめん”は、根底からの別物である。



(未だ“原罪”の呪縛の中)