今年は日米地位協定を改定する好機 | 徹通塾・芝田晴彦のブログ

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先日、岸田・バイデンによる日米首脳会談が行われた。メディアは「日米同盟がさらなる深化」「関係がますます強化」などと報じている。が、それは前任の安倍や菅が米大統領と会った際も全く同じ。そのうちボジョレーヌーボーのキャッチコピーよろしく「今世紀最高の同盟に」「究極の関係へ」などと言い出すのでは?

ただ、米国側にも、ウクライナ戦争や中国の動向も踏まえ、民主主義という価値観を共有する各国との結び付きを今まで以上に強めたい事情もあるのだろう。リベラルのバイデンなら尚更だ。既に米国は、特に軍事面に於いて抜きんでる存在では無くなりつつある。ウクライナへの軍事支援は続けるが、派兵は見合しているのがその証拠だ。一国で『世界の警察官』を気取る能力は既に失った。そこで「同盟国にも…」ということになる。

一方のわが国。以前は完全な対米従属であった。日米両国に関わる重要な政策ですら米が一方的に決め、わが国は従うしかないという様な事が繰り返されてきた。安倍政権になってようやく、安全保障上で独自の政策を展開する。日米豪印による『クアッド』の枠組みの構築だ。それまで中立的な立場を維持して来たインドを含めた多国間の連携を主導し、これに米国を引き込んだのはわが国の戦後外交の転換点と言える。

更に。クアッドのみならず、わが政府は英国との連携強化に進みだし、昨年にはオーストラリアと、今年初めには英国と『円滑化協定(RAA)』を署名するに至る。

円滑化協定とは地位協定の一種で、双方の国の軍隊(わが国のそれは『自衛隊』と称しているが)が訓練や災害救助などで相手の国に滞在する場合の法的地位や出入国手続きに関する取り決めだ。日豪あるいは日英の円滑化協定の中身は一言で表せば「郷に入れば郷に従え」であり、協定によって制約される事項はそれぞれの国の軍隊に平等に課される。

この様な地位協定をわが政府が他国と結ぶのは日米地位協定以来。然し大きな違いがある。それは日米間の協定は不平等かつ一方的な内容であるという点だ。日米地位協定には在日米軍に対する様々な『特権』が付与されているが、例えば訓練の為に米国に駐留するわが自衛隊員に何ら特別な地位は与えられていない。

勿論、日米安保条約により対日防衛義務を負う米軍が駐留する前提である日米地位協定と、今回の日豪あるいは日英の円滑化協定を同次元で比較することは出来ない。然し、現在の地位協定が米国との間で締結されて63年が経つ。その間に一度でも対日防衛義務が生じ、在日米軍が動いたことがあったであろうか?

過去、沖縄を始めとするわが国の在日米軍基地からは幾度となく米兵達は出撃した。然しその多くは米国の都合による戦争の為だ。そして日米地位協定の矛盾や不条理による負担の多くを基地が集中する沖縄の県民が強いられた。

日米安保条約がわが国の安全保障政策の根幹である以上、急迫不正の侵害を受ける事態となってしまったら、在日米軍の行動が最優先とされるのは筋が通っている。然し戦後一貫してわが国は『平時』だった。そして今回の日豪・日英円滑化協定は平時であることが前提。

戦勝国であるオーストラリアや英国と「平等な」地位協定を結べるのだから今回、『世界の警察官』では無くなった米国との協定も見直したらどうだろうか?

とりあえずは「平時」と「有事」を分けた想定をし日米地位協定を改定、平時に於いて適用される新たなる日米円滑化協定を締結するのは不可能では無いと考える。それこそがわが国の自主独立・戦後体制からの脱却の第一歩だ。


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