三の丸尚蔵館 で開催中の、『皇室のみやび ー受け継ぐ美ー
』 のレポートの続きです。
現在展示中の、第1期 『三の丸尚蔵館の国宝』。
これまでに、国宝 春日権現験記絵 巻第十二のレポート
しました。
今回は、
・国宝 屏風土代 小野道風筆(前半部分)【通期 巻替あり】
を、レポートしましょう(^_^)/
・国宝 屏風土代 小野道風筆(前半部分)【通期 巻替あり】
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20231129/14/osapon-ok/18/52/j/o1080081015370668723.jpg?caw=800)
平安時代 延長6年(928年)の作。
平安の"三跡(さんせき)"のひとりで、世尊寺流の祖 小野道風の筆です。
"三跡"とは、平安時代の字の上手い人トップ3のこと。藤原佐理・藤原行成そして小野道風です。
"小野道風"を語るには、柳にカエルの話しを抜きにはできません。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20231129/14/osapon-ok/cf/e6/j/o0800080015370672267.jpg?caw=800)
↑京都大石天狗堂HP より
花札の絵札にもなっている、有名な逸話です。
それは、こんなお話し……
◇
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字がなかなか上達しないことに悩んでいた小野道風が、ある日の帰り道、垂れ下がる柳の葉に飛びつこうとしているカエルに目をとめました。
「その高さじゃ、いくら頑張っても飛びつけないよカエルさん。とっとと諦めな。」と眺めていたところ、
急に風が吹き、カエルはタイミング良く柳の葉に飛びつく事ができたのです!
それを見た道風は、急に自分が恥ずかしくなりました。
「俺は、あのカエルのように努力を続けていない。努力を続けていれば、さっきのように、いつか風が吹くかもしれない。諦めてしまっては、チャンスをつかめないではないか!俺ってバカバカっ。よしっ、帰って練習だぁー!」
って話です。
◇
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こうして、字が上手くなった道風は、醍醐天皇から宮中の屏風の作成を依頼されるまでになります。その屏風の下書きが"屏風土代"。"土代"は下書きって意味だそうです。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20231129/14/osapon-ok/0a/e0/j/o0810108015370680715.jpg?caw=800)
醍醐天皇の命により作成されることになった屏風。そこに貼り付ける"色紙形"に、漢詩を書くよう大江朝綱が仰せつかります。
大江朝綱は、七言律詩と呼ばれる漢詩を8首と、七言絶句3首の合計11首を書き上げました。
その漢詩を清書したのが、小野道風です。"色紙形"そのものではなくて、屏風に書く前の"下書き"なので、巻き物形式です。
展示は巻頭から2m弱を展示しています。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20231129/14/osapon-ok/f5/32/j/o1080081015370680717.jpg?caw=800)
↑見返しには、輪宝と宝相華がデザインされています。
漢詩は、5首目の途中までの展示です。
訳は、Google翻訳をベースに、私がさらに意訳した、ポンコツ翻訳です(^_^;)
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20231129/14/osapon-ok/97/ef/j/o1080081015370680722.jpg?caw=800)
①春日山居
古洞春来対碧湾 茶煙日暮与雲閑
山成向背斜陽裏 水似廻流迅瀬間
草色雪晴初布護 鳥声露暖漸綿巒
誰知圯上独遊客 疑是留侯授履還
(春日山にて
古い洞窟と美しい湾に、春が来たようです。茶色い煙と、夕暮れのゆったりとした雲、向こうに見える山に太陽が沈み、水は小川のように流れています。芝生はきれいな雪で覆われ、鳥の声が山を徐々に暖かくします。おや、誰かが村に訪れたようだ。一人の訪問者、彼はお坊さんかな?)
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20231129/14/osapon-ok/21/6f/j/o1080081015370680729.jpg?caw=800)
②尋春花
見説林花処処開 晨興並馬共尋来
青糸縿出陶門柳 白玉装成庾嶺梅
香迸宜張双袖受 花勾偸折一廻
翻嫌春鳥欺遊客 空勧提壺不勧盃
(春の訪れ
森には、花がそこかしこに咲いています。朝になると馬たちが集まってくるようです。緑の柳は絹の布地のように美しく、梅の花は白い宝玉のようです。梅の花が開くと良い香りが漂います。春の鳥の声を聞くと、桃源郷にいるかのようです。でも、現実は、盃も空だし、鍋も空なんだけど……)
傍無朋友室無妻 不奈生涯与世暌
暁峡蘿深猿一叫 暮林花落鳥先啼
五湖売薬随雲去 三径横琴待月携
枕上心閑………
(山中で考える
友達もいないし妻もいない。なんて、この世界はツマラナイんだ!
霞がかった谷底から、猿の鳴き声が聞こえてきます。夕暮れとなった森では花が散り、巣に帰る鳥のさえずりも聞こえてきました。湖の水面は日が暮れると静かになり、横琴が月夜を待っているかのようです。あぁ、日が暮れてきた、ツマラナイ。もう寝よう……)
までを展示していました。
主に行書で書かれていて、たまに草書を交ぜているという感じです。
書かれている漢詩は、大江朝綱のもの。小野道風が考えたんじゃなくて、大江朝綱の詩を清書しただけなんです。それでも、国宝にまでなっているんだから、凄いですねー。
でも、全巻まるまる展示して欲しかったなぁ(^_^;)
さぁ、次回ラストは、伊藤若冲の動植綵絵で締めようと思います(^_^)/~~