唐招提寺で答え合わせ(その2) | 死ぬまでにすべての国宝を肉眼で見る

死ぬまでにすべての国宝を肉眼で見る

2023年12月現在の国宝の総数1,137件。そのうち、美術工芸品906件。これをすべて肉眼で見ようという計画です。関西中心の情報をお届けします。

唐招提寺、前回 


の「答え合わせ」の続きです(^_^)



次は、宝蔵の脇の小道を進んで、新宝蔵へ向かいます。
新宝蔵は、唐招提寺の宝物館のような、寺宝の展示施設です。
開館期間が限られていて、毎年3月1日~6月30日、9月1日~11月30日、12月31日~1月3日(8月10日頃に数日間の臨時開館がある)とのことです。


をチェックのうえ、ご訪問ください。
訪問時の展示目録を上げておきます。
↑ご覧の通り、2019年に新指定された、国宝 木造薬師如来立像 、木造伝衆宝王菩薩立像 、木造伝獅子吼菩薩立像 、木造伝大自在王菩薩立像 、木造二天王立像のうち、木造二天王立像以外の4点が出ています。
では、レポートします。

館内は撮影禁止。

・国宝 木造薬師如来立像 、木造伝衆宝王菩薩立像 、木造伝獅子吼菩薩立像 、木造伝大自在王菩薩立像 、木造二天王立像

奈良時代後期の作。

鑑真が唐から来日した際に、共にやってきた仏師の手によるものと考えられています。
この渡来技術が入ってきたことにより、それまで仏像は、鋳造製であったり、脱活乾漆技法だったりの手の込んだ方法でしか作られていなかったのが、日本で容易に手に入る"木"で作ることができるようになりました。

まずは、作風が同じ薬師如来伝衆宝王菩薩伝獅子吼菩薩が並んで展示されています

3体とも、カヤの一木造りです。
現代では、このような大型仏像を一木造りできるような樹齢の大木はほぼ存在しませんが、奈良時代後期では、そんな木も沢山あったようです。
一木造りのためには、仏像が彫りやすいように、木の節を避けたりする必要があります。一方で割れを避けるため、木の中心は使われません。
節は木の表面に近いところにあるため、樹齢の若い木ではどうしても節にあたる確率が高くなります。
木の中心から遠く、表面からも遠くなるような太さの木を選ぶとなると、当然樹齢の高い木になります。




この3体の中で、一番大きくて良い木を使っているそうです。
年輪より、木の芯から遠いところを使って作られていることが判明しています。
ガッシリとした厚みのある体躯です。
見どころは何といっても、大谷翔平なみの太っといフトモモっ!
蹴っても倒れそうにないくらい、安定感抜群です。



・国宝 伝衆宝王菩薩立像

腕が欠損していますが、元は三目六臂のお像です。
↑額に第三の目があるの、わかりますか?
↑胸前で、ちょうちょ結びされているのは、鹿皮。
↑もう少し、横から覗き込めたら、6本手が生えてた痕跡が見られたんだけどなぁ〜
前からしか見ることのできない展示方法だったので、見えませんでした。





伝獅子吼菩薩立像は木の芯から近いところを使用しています。
つまり薬師如来立像より低い樹齢の木を使って作られているというこという事です。

体の前面に腕の差し込み口が2つ、体の横にも2つあることから、腕が4本の、元は"虚空像菩薩"だったことがわかるそうです。
しかし、展示の角度ではそれはわからないですねぇ〜(^_^;)惜しい!
昨年4月に京都国立博物館で開催された「鑑真和上と戒律のあゆみ 


」展では、像の向かって左側から覗き込めるような展示方法だったので、そこが惜しまれます。
額に第三の目があり、体の前でリボン結びしているのは鹿の皮。こういったところから"虚空像菩薩"だと推察されるようです。



・国宝 木造伝大自在王菩薩立像

作風が共通していて見栄えの良い、薬師伝衆宝王伝獅子吼のトリオとは、少し離れたところに展示されています。
この伝大自在王菩薩はいつも仲間外れ、薄幸な感じ満載です(^_^;)

先の3像よりスリムで、しかも、右肩と左肘より先を欠損しているんです。
それがまた、なんだか悲哀を誘います……
あと、このお像は目の瞳が彫られているのに対し、先の3像は絵の具で瞳を描いているところも違います。
かなり剥落して見にくいですが、左右に動いて見比べてみてください(^_^)/

これらのことから、セットで国宝指定されてはいますが、製作者・製作時期は異なっていると見て良いでしょう。


では、残りの木造二天王立像はというと、講堂に安置されています。後で見に行きます(^_^)

その他、金堂の屋根にあった、国宝附指定の旧鴟尾(しび)も展示されています。


・国宝附 旧鴟尾

西側が奈良時代(8世紀)/東側が鎌倉時代 元亨3年(1323年)の作。

平成の修理の際(平成13年)、降ろされた、東西2つの鴟尾が残っています。

特に西側の鴟尾は、唐招提寺創建時のもの。ついこの間まで、現役で頑張ってたんですね〜\(^o^)立派です。

新宝蔵を出て、元の場所に戻ります。




金堂の奥にあるのが、講堂です。

・国宝 講堂

奈良時代(8世紀後半)の建立。

桁行(けたゆき/正面)9間、梁間(はりま/側面)4間の建物。入母屋造、本瓦葺きの屋根を持ちます。
横から見ると、屋根の△が見えて、入母屋造りだということが、よく分かります。
もともと平城宮にあったものを、天平宝字4年(760年)頃、この地に移築・改修したのだとか。その後、鎌倉時代にも大きく改修を行い、入母屋造りになっています。

そして、内部に安置されているのが、
新宝蔵で見られなかった、「国宝 木造薬師如来立像 、木造伝衆宝王菩薩立像 、木造伝獅子吼菩薩立像 、木造伝大自在王菩薩立像 、木造二天王立像」のうちの、木造二天王立像です。



・国宝 木造二天王立像

奈良時代(8世紀)の作。

講堂中央の、重文 弥勒如来坐像の脇侍として、左右に安置されています。
右に持国天、左に増長天です。

右手を振り上げ、左手にも何か持っていたようです。足は邪鬼を踏んでいます。


おそらく、左右の手には何か持っていたと、思われます。右手を上げ、邪鬼を踏んでいます。


両像とも、木造素地で、カヤの一木造り。手足が短く、ずんぐりしていますが、鎧の彫刻は細かくハッキリとしています。



ハイ〜!


長々と書きましたが、以上で終了です。


公開時期が限定される、

・国宝 乾漆鑑真和上坐像

・国宝 舎利容器(金亀舎利塔)

の2件は、過去のレボート 


を参照ください(^_^)


東大寺や法隆寺、興福寺といった"観光寺院"のような派手さはありませんが、唐招提寺は天平の雰囲気を残す、非常に良いお寺です\(^o^)/


8月には新宝蔵が開くタイミングがあるので、ホームページ をチェックのうえ、観光客で混み合う前に、ぜひ訪問してみてください。