大和文華館で国宝「彦根屏風」と「松浦屏風」を見た | 死ぬまでにすべての国宝を肉眼で見る

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2023年12月現在の国宝の総数1,137件。そのうち、美術工芸品906件。これをすべて肉眼で見ようという計画です。関西中心の情報をお届けします。

またしても、展覧会終了後のレポートとなります。スミマセン(>_<)
12/25で終了してしまいましたが、奈良の学園前にあります大和文華館で、特別展 国宝彦根屏風と国宝松浦屏風―遊宴と雅会の美―を、終了間際に見に行ってきました(^-^)/
大和文華館は奈良の高級住宅街 学園前にある、近鉄系の美術館です。
小高い丘の上まで、雑木林の庭園を抜け昇りきると、
ナマコ壁の平屋建ての建物があり、ここが大和文華館です。
さて、今回は展示会のタイトルにもなっているとおり、国宝の2大風俗図屏風「彦根屏風」と「松浦屏風」が揃い踏みという事で行ってまいりました。
↑エントランスです。

では、さっそくレポートします(^o^)

・国宝 彦根屏風

彦根城博物館所蔵の国宝です。正式指定名称は、紙本金地著色風俗図(彦根屏風)。9人の男女の姿+犬が、六曲一隻の金屏風に描かれています。

今回、後で紹介する国宝 松浦屏風と比較してわかったんですが、意外と小さいんですね。高さ1m弱で、松浦屏風の半分程度の大きさでした。

ひとつの屏風の中に、屋外と屋内両方の場面が描かれています。
江戸時代前期に描かれたもので、それは人物の髪型からわかります。今で云うなら、最先端のファッション誌のグラビアですね。
こちらの画像の、犬にリードを付けて散歩させているのも最先端。男性の刀に寄りかかっている奇妙なポーズも、ファッショングラビアならではなんでしょう。
この画像の、小さい女の子の着物の柄なんて、今の時代の目で見てもモダンですよね。
ここまでは、屋外の様子を描いているようです。

男女ともに見慣れない髪型なのは、江戸時代前期の様子を描いているためです。我々が時代劇や浮世絵でよく見る髪型は、江戸時代後期からのものです。(島田結いとかね)
全体的に非常に緻密に描かれています。
髪の毛、うなじの後れ毛などは単眼鏡で見てください。まるで本物、実際の髪の毛のようですよ(^o^)

こちらの画像は、室内の様子。
画面下で遊女が、艶紙(ラブレター)をしたためています。今で云うと、キャバ嬢の営業メール(^o^;)
こちらの画像も緻密です。後ろの屏風絵を見てください。単独でも成立するようなクオリティの山水画ですね。これも単眼鏡必須です(^o^)
屏風の前には座頭がいます。座頭の眼球が白く表現されています。盲(めしい)た目を表しているんですねぇ。細かいです。

次にレポートする国宝 松浦屏風と比較すると、全体的に彦根屏風は黒ずんでいます。その代わり緻密な表現なので、詳細に見てみると細かい発見がいっぱいあって楽しめます。



・国宝 松浦屏風

大和文華館所蔵の国宝です。
指定名称は、紙本金地著色風俗図(六曲屏風)。彦根屏風と同じ名前ですね。

こちらは縦1.5mほどの、左右2隻の大きな屏風です。
彦根屏風と同時代、江戸時代前期の作です。彦根屏風と比べて全体的に鮮やかな色彩が残っており、金箔もきらびやかです。

さながら着物のファッションカタログの様相を呈しています。人物はすべて女性。いずれもモダンな柄の着物を着ています。女性の肩に手を回す、男性風の人物もいますが、それも遊女です。
子供は禿(かむろ)、遊女のために下働きする幼女ですね。

面白いことに、全員二重瞼(まぶた)です。そして、口を開いている人物には、全員 歯が描き込まれています。それも1本ずつ丁寧に、意地になっているかのように(^_^;)
なんでここまで歯にこだわっているのかわかりませんf(^_^;?

左隻から見ていきますね。
7人の遊女と1人の禿です。いずれもモダンな柄の着物を着て、キセル・トランプといった南蛮由来のアイテムを携えています。禿はキセルにタバコの草を積めているようです。
中央の遊女は座って、艶文を書いています。

右隻です。
一番右には、碁盤が描かれていますね。そして、遊女と彼女の髪を結う禿。
二人の上に描いているのは着物。屏風に様々な着物を描く"誰が袖(たがそで)"という様式を取り入れています。
その着物の左側に描かれている遊女に注目。首からネックレスのように数珠をかけているんですが、そこには元々ロザリオが描かれていたのを消したそうで、その跡が残っているとか。多分これだろうな?というのは見つけました。

展示は風俗図屏風・有楽図屏風・誰が袖屏風・美人画など、江戸時代の"ファッション"・"遊び"を描いた絵画作品が多く展示されていました。
屏風絵が多かったので、展示件数は少な目でしたね。


これで、大和文華館の保有する国宝4件は、このブログで紹介できました。
・国宝 雪中帰牧図

次回、大和文華館のお正月の展示では、国宝 寝覚物語絵巻が展示されますが、全場面展示では無いようです。訪問される方は、上記のレポートを参考にしていただけると幸いです(^_^)