「源氏物語の世界―王朝の恋物語―」のⅢ期の報告② | 死ぬまでにすべての国宝を肉眼で見る

死ぬまでにすべての国宝を肉眼で見る

2023年12月現在の国宝の総数1,137件。そのうち、美術工芸品906件。これをすべて肉眼で見ようという計画です。関西中心の情報をお届けします。

前回の続きです。

徳川美術館の中庭。

「蓬生(よもぎう)」

話は、光源氏の世代。
3年ほど京を離れていた源氏が、京に戻ってきます。
雨がやみそうなある日の夜、妻の1人である花散里の元に行く途中、源氏はふと見覚えのある庭を目にします。
3年前に付き合っていた末摘花の邸宅でした。
ところが庭は荒れ放題、生活もままならぬ様子が伺えます。
邸にいた老女房に話を聞くと、源氏が京を離れてから3年間、源氏からの援助も途絶え、生活を切り詰め暮らしていたそう。実家から再三戻ってくるよう請われても、源氏の帰りを待ち続けると固辞していたとのこと。

源氏「しまった!忘れてた~」

という事で、援助再開。2年後には自邸に招き入れました。
光源氏ったら、忘れんぼさん。というお話し。

末摘花を描かずに、庭の様子等で末摘花の心情を表す、という手法を取っているのですが、全体的に剥落がひどく、ほぼ画面全体を占める庭の様子がわかりません。

徳川美術館の中庭。

次の場面は、
横笛

源氏の子、夕霧のお話し。(薫と違って本当の子です。)
赤ちゃんが夜泣きするので、夕霧の奥さんがお乳をあげている場面です。

夕霧「どうしたの?」

奥さん「あんたが夜中に帰ってくるから、もののけでも連れて来たんちゃうか?子どもが泣き止まへん!」(どうせ、あの未亡人のどこでも行っとったんやろ?)

夕霧「はぁ…結婚して子育てしてると、そんなイヤミを言うようになるんだね…」

奥さん(お恥ずかし…)

というお話し。

実は夕霧、ここのところ亡くなった柏木(薫の本当のお父さん)の未亡人のところに入り浸っていたので、奥さんの指摘はあながち間違いではありません。
ただでさえ「うちの奥さん最近所帯染みてきたなぁ」と思っていたので、さらに追い討ちをかける形になってしまいました。奥さんはその事に「ハッ」と気づき恥ずかしくなっちゃった(*^o^*)
という場面でした。



さて、Ⅰ~Ⅲ期の源氏物語絵巻を通して見ての感想です。

源氏物語絵巻と他の絵巻物との決定的な違いは、登場人物がすべてアイコン化されている点でしょう。
キャラクターの顔が、全員ひき目かぎ鼻で違いがまったくありません。
現代のマンガなどですと、髪型や髪の色が違ったり、顔の造形を変えたりして、キャラクターごとに違いを出すようにして、明確に差異化を図ります。(そうしないと誰が誰だかわからなくなって、読者が混乱するから)
ところが源氏物語絵巻では、このキャラの違いを、服装や、立ち位置、髪型などで暗示的に表します。
例えば、髪をくくっている女性なら「老婆」とか、ここに座っているからこの女性が◯◯とか。
形はキャラを判断する材料、まさにアイコンといえます。

その延長で、女性の後ろから見た頭部は、前から見た大きさの1/3程度しかありません。違和感ありありなんですけど、
この小さな頭=女性の後ろ姿
なんですね。

あと、おちょぼ口なのに、手はパンダ並みの大きさだったりします。(なんだか可愛いね)(*≧з≦)

源氏物語は、一夫多妻が当たり前の時代なので、現代人には想像もできない世界です。だから内容的には共感できない部分がおおいのですが、それが絵巻物になると、芸術性が加わり、楽しめるようになりました。
国宝の源氏物語はありませんが、国宝の源氏物語"絵巻"はある。
それが理由なのかもしれません。

これで3期とも拝見しましたが、徳川美術館には、まだ未見の場面があります。

柏木Ⅱ、宿木Ⅰ です。

来年は出展されるかな?

また、見に行きます。

五島美術館の源氏物語絵巻も見たいな。

初音の調度も全部見たいな。