みなさん、こんばんは。
こころとからだを癒す
茂原(もばら)の医師
先日、ふとこの言葉が浮かんできまし
た。
「俺の質、量、スピードについてこら
れるか?」
20年前、ある先輩医師から届いた年賀
状です。「あけましておめでとう」も
「本年もよろしく」もなく、ただこれ
だけが書かれていました。
その先生は心臓血管外科の10年目の医
師でした。
僕はその当時、医師4年目の脳神経外科
医でしたが、その1年間は4月から9月ま
で麻酔科で研修を受けて、10月から翌
年3月までは外科で研修を受けるカリキ
ュラムの最中でした(今では初期研修
医制度がありますので、このような研
修はありません)。
その理由としては、当時の病院では夜
間や休日の緊急手術の際は麻酔科医が
不在の時もあり、自分たち(脳神経外
科医たち)で全身麻酔の管理をしなが
ら開頭術を行う必要があったからです
ね(今ではそのようなことはありませ
んのでご安心を)。
さらに、脳神経外科の手術で脳室―腹
腔シャント術という水頭症に対する手
術があり、この手術が頻回に行われる
ものでしたので、腹部外科で開腹術の
経験もあった方が良いだろうとの理由
でした(脳室―腹腔シャント術では、
下腹部に1カ所だけ3-4㎝の小さな傷を
作って、そこから腹腔内に細いチュー
ブを挿入するだけですので、腹腔内の
臓器を直に見るようなことはできない
ものですのでね)。
そして、その外科の研修先が腹部外
科、胸部外科、心臓血管外科すべての
手術を行っていた総合病院だったので
す。
僕はこのうちの腹部外科、心臓血管外
科のチームに属して、半年間で約300件
の手術に関わったように覚えていま
す。その中でも心臓血管外科の手術は
とても印象的で、以前のブログにも登
場しています。
「自分の生命力を感じてみる」
https://ameblo.jp/osamu3150/entry-12408235093.html
そして、その時に心臓血管外科でご指
導頂いた先生が、冒頭のような年賀状
をくださったのです。
「俺の質、量、スピードについてこら
れるか?」
確かに同じ外科医として圧倒されてし
まう技術で手術をしていました。例え
ば、心臓の冠動脈のバイパス手術であ
れば直径数ミリの血管を正確無比な技
術で縫合していく。丸い血管を時計と
みなすと0時から10時までを利き手の右
手で縫い、残りの11時から12時までを
左手で縫う。聞けば、3年間、国内留学
をして、その1年目は、ひたすら毎日、
人工血管を使って血管吻合の練習をし
ていたとのこと。しかも仕事の合間
に。それを100件繋げたところで上級医
に確認してもらい、それに合格した
ら、次はラットの大腿動脈を使って血
管吻合の練習をする。それを100件繋げ
てみて合格をもらって、ようやく執刀
医になれる。ただし、手術中の手さば
きによっては、2回目の執刀医にはなれ
なかったりもする。
そんな厳しい世界を勝ち抜いて執刀医
になり続け、国内留学を終えて戻って
きているわけなのだから、それは、そ
れは、圧倒されるものでした。しかも
手術だけではなく、術後のICUでの管理
も抜群でした。
一緒に夜遅くまでICUに残って患者さん
の管理をしていると、その先生は、ふ
と、他の医師が担当している患者さん
の容態を見て、看護師さんに点滴のア
ドバイスをしたり、僕には複数人の医
師の指示内容を比べさせて、その違い
を教えてくれたり、これほどまでの知
識、経験、技術を医師10年目で備えて
いた先生には、それ以前もそれ以降も
出逢ったことはありませんでした。
だからこそ、その先生の年賀状が当時
から20年経っていても鮮明に思い出せ
るのでしょうね。
続きは次回に書きますね。
あなたの明日が
素晴らしい一日になりますように。
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