火焔太鼓 | ご機嫌菊龍気楽な毎日

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 今から15年くらい前になりますかねぇ。師匠円菊の家に、弟子が5、6人集まってました。何で集まってたのか、誰がいたのかは、記憶が曖昧です。
 で、菊寿さんが師匠に
『師匠、火焔太鼓を稽古して下さい』
って言ったンです。みんな『えっ!』って一瞬思いました。誰もが口に出せなかったネタでした。志ん生師の代名詞ですからね、何となく大ネタだと思っていて、みんな遠慮していたンです。とても師匠に稽古をお願い出来る様な感じでは無かったンです。
 それに対して師匠は
『ああ、いいよ。じゃァこっちの部屋で。テープはあるのか』
と、あっさり言うじゃないですか。ええ~!稽古してくれるンだ。
『あのォ、じゃァ私も一緒にお願い出来ますかァ』
『えっ、じゃァ、私も…』
と、その場にいた弟子がみんな、この際だからと申し出ると
『ああ、いいよ』
ってンで稽古が始まりました。
 菊寿さんのお陰ですね。もし、菊寿さんが言いだしてなかったら、未だに稽古して貰ってなかったかも。
 噺を喋り終えてから師匠が、
『この噺は志ん生の十八番だからってみんな遠慮して来たし、志ん朝師にも遠慮して演らないけれども、それ程の噺じゃァないンだ。前座噺みたいなもンだから、それ程難しくはないよ』
と、言うンですよ。
 ええ~、と思いましたが、師匠は、前座噺というものは、誰が演ってもそれなりにウケるように出来てる。そういう意味で、この噺は噺自体が良く出来ているから、誰でも出来るンだと言うのです。
 成る程ナァ~、と思います。よく、本を素読みにしたって…なんてぇ事をいいますが、この噺は当にそんな感じかな。サラッと演っても笑えるンですよね。
 オイラがこの噺をネタ下ろししたのは、志ん朝師の亡くなられた年でした。何かいつもと違った緊張感もあって高座を務めました。
 変な緊張感は、台詞を被せたり、チョットした間が出来たりして、それが気持好く嵌り、自分としてはとても良い出来でした。
 次に演ったのは藤沢の方で、その後が練馬の勉強会、世田谷の方の勉強会、昨年の酒屋寄席、と演って来ましたが、ネタおろしの時の出来を越える事はありませんでした。噺自体に力があるので、演るのは易しくても、自分のモノにするのは難しいですね。良い噺にはそれなりの技巧を持って臨まなければ駄目なンですね。もっともっと稽古しなくちゃァ。
(  2012年02月12日  )