富士詣り | ご機嫌菊龍気楽な毎日

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 オイラが噺家になろうと思った時、相談したのが柳家せん八(当時せん松)兄さんでした。田端の『小勇・さん弥二人会』の手伝いをしている時に、前座で来ていた兄さんと知り合い、大学の方へも太鼓を教えに来ていただいたりして、あっ、麻雀も良くやりました。それで親しくしていただいて、相談にのっていただきました。
 ウチの師匠の処へ弟子入りする前に、兄さんからオイラの事を紹介していただいてたので、師匠に会ったその時から弟子になれちゃったンです。又、酒を飲む事も麻雀をする事も、みィ~ンな話してくれていたので、酒席では師匠の代わりに酒を飲んだり、先輩方と麻雀をしたり(前座なのに馬風師や先代柳朝師とよく打ちました)も許されちゃってました。
 『富士詣り』はそのせん八兄さんから教わりました。『大山詣り』という噺は知っていましたが、それまで『富士詣り』は知りませんでした。高座で聞いた事があるのは、兄さんと小三治師だけでしたね。他にもなさる方がおられるのでしょうが、オイラは聞いた事がありませんね。
 この噺は、まァ、『長屋の花見』の様なもンですかねぇ。十五分程度の軽い噺で、『垂乳根』にも似た処がありますかねぇ。
 この噺の稽古は、オイラの部屋でやりました。寄席で兄さんに頼んで、いつ何処で稽古しますかと伺ったら、
『菊次(オイラ)ンとこでいいよ。これから行こう』
ってンで、昼席がハネてから押上のオイラのアパートへ。師匠からいただいた二段ベッドが場所を取ってる六畳で稽古をし、
『銭湯行って、ビールでも飲もうか』
と、銭湯へ。湯上がりにビールってンで飲み屋に入ったンだけど、近所にあんな店があるって、ちっとも知らなかった。
 間口は一間半、入ると前にカウンター席。まるでひさご通りの『正直ビアホール』の様。
『こういう店がいいンだよ』
と言うが、お品書きは、枝豆、冷奴、お新香、柿の種だけ。初めビールを二本注文して、又二本。三度目に二本注文したら、
『ちょっと待ってて下さい』
って、裏から何っ処行っちゃった。店にはオイラ達二人だけ。逃げちゃおか…。7、8分して
『お待ち遠様~』
って、ビニール袋にビール瓶が6本。買いに行ってたのかよゥ。ちっとも良い店じゃないじゃん。枝豆もお新香もスーパーで買って来たもの。冷奴も豆腐切って出すだけ。あとは柿の種ぇ~。
で、このあと酒とつまみ買って、オイラのトコで飲んで、せん八兄が泊ってったンだけど、エライ迷惑かけられたンだが、そのお話は別の話題ですンで…
(  2011年11月21日  )

2013年6月30日  横浜『菊龍の会』収録